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知ってしまった

 あれは何日目だっただろう。

 透明人間の悪事は、町の人の間では幽霊の仕業ってことになっていて、商店街に、心霊番組のロケが来た。

 面白そうだからあたしは見学したけれど、月乃は先に帰ってしまった。

 あたし達は、前みたいにいつも一緒ではなくなっていた。

 町の人へのインタビューを横で聞いてて、町の人達があたしや月乃がやってることをどう思っているのかわかって……

 あたしは、レポーター役のアイドルをからかってやるつもりだったけど、やめにした。

 早目におじいちゃんの家に戻ると、リビングの床に新聞が広がっていた。

 新聞紙の上の方には手で押さえたシワ、下の方には両膝で乗っかったシワができてて、月乃がどんなポーズで新聞を読んでいるのかうかがえた。

 チャンスだって思ったら、イタズラ心がわいてきた。

 だっていつもはお互いに呼びかけ合わないと相手の居場所がわからないから。

 あたしだけが相手の居場所に気づいてるなんて初めてだった。

 あたしは月乃を脅かしてやろうと思ってこっそり近づいた。

 あたしと同い年なのに新聞なんて読んで、大人だなぁと思った。

 何が書いてあるんだろうと思った。

 月乃の背中がある場所を透かして、新聞の見出しが見えた。



《人気子役、未だに行方不明!!》



 あたしは思わず「えっ!?」って声を出した。

 そこには月乃の写真が載っていた。

 月乃の慌てぶりは異様だった。

 ガサガサと大きな音を立てて新聞にシワが広がって、月乃が新聞紙の上に覆い被さったのがわかった。

 でも、そんなことでは、ただの一文字も隠せない。



《映画の主演は母親の枕営業の成果!?》



《子役界のライバルが証言!!“あの役はワタシがやるはずだった”!!》



《〇〇映画賞受賞の裏にも!! わずか10歳の少女にまつわる黒いウワサ!!》



 新聞は、あたしの目の前でクシャクシャに丸められて、部屋から出ていった。

 かけられる言葉なんてなかった。

 二人で暮らしたあの家に、月乃が一度でも帰ってきたのかどうか、あたしは確かめられていない。

「ただいま」って言ってドアが開くことはなかった。

 あたしの名前が呼ばれることもなかった。

 誰かがいるような気配だけは何度も感じていた。

 物音がしたこともあった。

 だけど呼びかけても返事はなくて……

 だからただの気のせいじゃなかったとは言い切れないわけで……

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