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魔物の声  作者: 明深 昊
第一部
3/3

魔物と絆を交わす少年

 街――。



 俺は制服姿の生徒もちらほらと見られる、街のメインストリートにいた。



 まあ、この道で東の方にに進めばすぐ学校なんだから、ここにいるのは当たり前なのだが。



 メインストリートから離れ、お惣菜のにおいがする道に入った。ここに食品を売る店はだいたいそろっている。



 適当なお店に入って、米や肉など、あとこれからよく使うであろう食材や調味料をかごに入れていった。



 それを買って外に出ると、なんだか騒がしかった。



「どうかしたんですか?」



 近くにいたおじさんに事情を聞いてみた。



「あぁ、学園の生徒さんかい?魔物だよ。学園から逃げ出したみたいなんだ」



「えっ!?」



「たまにあるんだよ。知らないってことは、今日入学した子か」



「教えてくれてありがとうございます。場所は?」



 おじさんは北東の方を指して、あっちと言いかけ、やめた。



「ちょっと待て、中級だよ?」



「大丈夫です!」



 走りながらそう言って、魔物の気配を探った。



「もうこりごりだ! どうして人間なんかに従う事におびえながら過ごさなければならない! あんなところ、消えてしまえばいい! ……そうか、消せばいいのか……そうすれば自由に……」



「やめろカイバード。あの森が嫌なら他の森に行けばいい。学園を消すなんて考えはやめるんだ」



「なんだお前……なぜ俺の言葉がわかり、お前の言葉がわかるのだ!」



「わかったら教えてくれよ……! ビータ!」



 襲ってきたカイバードをよけて、ビータ……雷の精霊を呼んだ。水属性には雷属性だ。



「ダン! 学園とやらはどうだ?」



「ビータ、あいつを気絶しない程度に行くぞ」



「楽勝さ!」



「“サンダーベール”」



 雷がカイバードに直撃して……地面に落下した。



「あっ、やりすぎたかも……」



 駆け寄ると、意識はあるようで、辛そうに顔を上げた。



「すまん、大丈夫か?」



「人間に心配される程ではない……俺は行く」



「だめだ、傷が広がる! ファリ」



「はい! どうしましたか?」



「こいつを治してやってくれ」



「わかりました」



 ファリは水の精霊。精霊を一匹ならまだしも、二匹なんてこんな所で呼んだら目立つだろうけど、使い魔の中で治癒が得意で、ここに呼び出せるくらい小柄なのはファリしかいない。



 ファリに治してもらったカイバードは、飛び上がって俺を見つめた。



「……お前、名は?」



「ダンだ」



「ダン……お前はどんな魔物とも話せるのか?」



 うなずくと、ゆっくり降りてきた。



「ならば忠告しよう。この街から北にある森。あそこには近寄るな。危険なにおいがする」



「一番近い森か?」



「そうだ。……すまなかったな」



 それだけ言って、どこかへ飛んでいってしまった。



 北にある一番近い森……ここに来てまだ短いからわからないな……。



「二人はなんて森か知ってるか?」



「知らないな」



「私たちは基本精霊の森から出ないので……すみません。フランならわかると思います」



「そっか、ありがとう。帰っていいぞ」



「ちょっと待ってください」



 だよな……。



「話そうぜ!」



 ただでさえ目立ちまくりの中でビータがそんなことを言い、ますます周囲の人たちの訝しげな視線が増えた。



 二人は本当に話し好きだ。ビータに関しては二時間近く話し込んだことがある。



「また今度な」



「帰らないぜ」



「学園を見せてください!」



「はあ……わかったよ……これ以上目立ちたくないから高く飛んで付いて来てくれ」



「もう十分過ぎるほど目立ってると思うぞ」



 後ろから声がかかって、振り向くと、レオが立っていた。



「もう使い魔がいるなんてよ……どういうことか説明してくれないか?」



 使い魔を持つのは学園に通うようになってから、というのが一般的。そう聞くのは当たり前だ。



「誰だこいつ」



「友達だよ。ビータ、敵意を向けるんじゃない」



 目の前でチラチラ飛び回るビータを捕まえて、落ち着かせた。



「言えない。ごめんな。簡単に言えることじゃなくて……」



「……いつか話せよ」



 そう言って商店街の方に行ってしまった。



「夜にまた呼ぶから、やっぱり今は帰ってくれないか?」



「わかった……絶対呼べよ!」



「待ってますからね!」



 二人も今ので思い直して、素直に帰ってくれた。



「帰るか……フラン心配してるかな……」



「フラン、ただいま」



「遅いぞ! なにやっていたのだ?」



「ごめん、魔物が暴れてて……」



「また首を突っ込んだのか!?」



 フランの言う通り、これは一度や二度の問題ではない。魔物が関わる事件には、どうも首を突っ込まずにはいられない。



「でさ、カイバードだったんだけど、そいつが、ここから北に一番近い森には近づくなって。なんて森か知ってるか?」



「ああ、それならリヨの森ではないか?」



「リヨの森?」



 聞いたことない森だ。精霊の森にあとから来た魔物たちはみんな違う森からだ。



「そこにいたことあるのか?」



「いや。しかし、この街には何度か来たからな」



「警戒しておけば大丈夫だよな」



「そうだな。それより、怪我はないな?」



「ない。今ステーキ作ってやるから、待ってろ」



「……ならいいのだ」



 フランはそう言って、俺にピッタリ寄り添った。

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