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部活が終わったのは、正午を過ぎた辺りだった。制服に着替えて校門を出ると、自転車で街まで下る。真夏の太陽は今日も元気に爛爛としていて、アスファルトの路面をジリジリ焦がしていた。途中スマイル次郎で素麺を買い、自宅に到着した。
こうしてみると、代わり映えのしない一軒家だ。大きくもなく小さくもなく、これといった特長が無い。鉄筋コンクリート造りの家が建ち並ぶこの住宅街の中に埋もれているようだ。
理佳子を家の前で待たせ、家の中へ入る。鍵は閉まっていた。セナが庭先で待っていなかったって事は、恐らくまだ帰ってきてないのだろう。
「おかえりー」
そんな心持ちでいたから、居間に入ってセナの声を聞いた時は心臓が止まるかと思った。そんな私の事など露知らず、彼女は何食わぬ顔でソファに横たわりながら、棒付きのアイスを舐めていた。一応宿題をやってくれていたのか、目の前にあるテーブルの上にはテキストが数枚重なっていた。
「ど、どうやって中に入ったの?」
「機密事項。宇宙の神秘ってヤツよ」
「だから、最初の時も・・・・・・」
そういえば初めて出会った時も、鍵が掛かっていたのにセナは家の中にいた。宇宙ではセキュリティもあったもんじゃないな。そう不満げに思う一方で、セナがいてくれた事にどこか安心している自分もいた。
今日はデニム生地のワンピースで、網戸越しに差し込む太陽の光に、裾から見え隠れする弾力のありそうな太腿が白く輝いていた。あのワンピースはまごう事なき私の私服だ。恐く勝手にクローゼットから拝借したのだろう。しかし、私の気が咎めないくらい、その服はセナに似合っていた。
「ねーねーお腹減ったんだけど。おーい聞いてる?」
「・・・・・・あ、ああ。素麺買ってきたよ」
「ホントに?」
私がビニール袋から素麺のパックを取りだしていると、ソファから飛び起きて駆け寄ってきたセナが引ったくった。
「んー莉奈使えるー」
「私は便利屋さんじゃないんだから」
「あれ、でも一つしかないよ。莉奈のは?」
これから友達と遊びに行くからいらない、とは言い辛かった。セナがもし悲しそうな顔をしたらどうしよう。余計な心配が積もって、声が出なかった。
「・・・・・・買い、忘れてたみたいだね」
「それなら買いに行こうよ。というか、外で食べない?」
「・・・・・・・・・・・・」
セナの誘いを受け入れたら、理佳子を断らないといけない。理佳子を優先すると、セナを一人にさせてしまう。一番良い解決策は三人で出かける事だけど、宇宙人のいる手前でいろいろ厄介そうだ。それに、理佳子にどう説明すれば良いんだろう・・・・・・。優柔不断な自分の性格が嫌になる。こういう時、すぱっと決断できる人が羨ましい。
居間にある時計が一時を告げた。そうだ。理佳子とはこれからもたくさん居られるけど、セナと一緒に居られる時間は限られている。今もこうしてタイムリミットは近づいているんだ。決意は、もう最初から固まっていたのかもしれない。