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遅い、遅すぎる。
私は居間の時計を確認した。もう既に日が過ぎている。ふわっと欠伸が一つ出た。
あれからセナは帰ってきてない。
あんな奴、放っておこう。自分から言ってたじゃないか、ただの居候だって・・・・・・そう、確かにそうだけど。私にはどうしてもセナを見捨てることができなかった。
せめて、居場所のヒントでもあれば良かったのに。振り返ってみれば、私はセナのことを思っている以上に何も知らない。セナも同様、私の事なんて何も知らないんじゃないか。
それなのに、なぜ私はセナを待っているんだろう。セナが宇宙人で、特異な存在だから? 居候だし、面倒を見ておかないといけないから?
ううん、多分そんな簡単な理由じゃない。
かちゃ、っと玄関の扉がゆっくり開く音がした。反射的に体がソファから離れ、足は自然と玄関を目指していた。
廊下の電気を付けると、驚いた顔のセナと目が合った。セナはやがて肩をすくめ、卑屈そうに笑った。
「私ってば、本当に駄目なヤツだよね。迷惑かけっぱなしでさ。もう追い出すなり、何なりやってくれちゃってもいいよ」
帰ってきたら一発ガツンと言ってやろうと思っていたけど、目の前にいるセナの姿があまりにも脆く見えて言葉に詰まった。目は虚ろで、下を向いたまま唇を噛んで何も語らない。
可哀想だ。まるで、親を亡くした子猫のように、孤独と寂しさに打ちひしがれているようだった。何がセナをこんなにも苦しめたのだろう。私は、助けてあげられないのだろうか。急に態度の変わった事情も、セナの自身の事も。全然といって良いほど知らない私だけど、セナの苦しみを和らげる事はできないのかな・・・・・・。
自然と、私はセナの肩を抱き寄せていた。彼女の温もりを感じる。肌と肌が合わさって、初めて彼女の事を知った気がした。セナは私に比べ、ほんの少し背が低くて肩幅も華奢だった。
セナは大して反発しなかった。むしろ、すんなり私の胸に顔を埋め、押し黙っていた。
「セナの事、正直今でもよく分かんない。宇宙人が本当に存在するとも思えないし・・・・・・でもね、一つ分かる事がある。セナは私と他人じゃないって思うの。もし、もしね・・・・・・もし前世があるとするなら、私達は家族だったような気がする」
セナが顔を上げ、私を見た。
「家族?」
「うん。要はね、セナは大切な人なんだって思うの。出会って昨日の今日だけどさ、初めて会った気がしないというか・・・・・・おかしいよね私」
「ううん」
セナは頭を振り、私を見据えた。そこにはいつもの茶化すような素振りはなかった。瞳の奥には純粋な光が宿っていて、私をその中心へと閉じ込めている。
「私も、そう思うから」
途端に、胸が高鳴った。抑えられそうにない。きっとこの鼓動は、密着したセナの身体にも響いているだろう。私は彼女の髪を解かすように撫でて、触れるように唇へキスをした。柔らかい感触。セナは特に拒まなかった。その合図に、私の腰に回されていたセナの腕が、より一段と強く絡んだ。




