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居候  作者: 椋原紺
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 夕飯は宅配ピザを取ることにした。意外と割高で億劫になったのだが、麺類は飽きたとセナが言って聞かないので、仕方なしに了承した。

 その間、私達は何をする訳でもなく、居間で時間を過ごしていた。別々の部屋にいても良かったのだが、家の中ではこの部屋しかクーラーがなかった。

 セナはずっとテレビの前のソファを陣取って、再放送のドラマを見ながら私の宿題を終わらせていた。一方私はというと、ソファから少し離れた食卓に腰掛け、先ほどの奇妙な出来事についてあれこれと考えを張り巡らせていた。

 あの店員さんもセナと同じ宇宙人なのか。いや、だとしても贔屓にしていたという事実は避けられない。私とあの店員さん、喫茶店は昔から深い縁を持っているのだ。

 じゃあ、他にどう説明すればいいのだろう。全てが曖昧模糊で、決定打が見つかりそうで見つからない。まるで、霧に包まれた森林を彷徨っているみたいだ。






「この写真ってさ」

 突然、セナがテレビの下手に飾られていた写真立てを掴んで私に示した。私はふと顔を上げ、懐かしいと思った。

「私の家族だよ。四年前くらいに、北海道へ旅行いった時の写真だな」

「この二人が」

「そう、私のお父さんとお母さん。今は二人旅で不在中だけど」

「これは・・・・・・?」

「それ私。なんか、恥ずかしいな」

 セナから写真立てを奪いとり、改めて手元で見てみる。三人共、今とは違う。父も母も、私も。どこか古臭く見えるのは、写真の解像度の技術が今より劣っているからではない。普段はずっと一緒にいるから何も思わないんだろうけど、こうして昔の写真を見ると、人は日々変化しているのだと気付かされる。そうやって、皆歳をとっていくんだろうか。







「じゃあ、この人は?」

 セナが私の肩越しから手を伸ばし、指し示す。指先にいたのは、私達三人と並び立つ女の子だった。長い髪をツインテールに束ね、にっと歯を見せて笑っている。中学生前後といった年頃だった。

 ―――――誰だろう。全く分からなかった。どこかで見覚えがあるといえば本当にも思えるし、嘘のようにも思える。

「よく、覚えてないな」

「そっか」

 セナは写真立てを元に戻し、また宿題と向かい合った。続いてインターホーンがピザ配達員の到来を告げ、慌てて私は玄関へ駆けていった。


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