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居候  作者: 椋原紺
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会計を払う前、セナに先に出てるよう伝えた。セナが扉を開けて出て行くのを確認してから、私は席を立ってカウンターに赴く。レジを打ちに来たのはさっきの店員さんだ。この時間帯は混雑しないのだろうか、他に白髭を生やしたマスターらしきおじさんが一人、店の奥で佇んでいるだけだった。

 上手く間合いを見計らって、「あの、とても変な事だと思うんですけど」と切り出した。

「私、この店に来た事があるんですか?」






 店員は手を止め、ぽかんとした顔付きで言った。

「米田さん・・・・・・ですよね?」

 私の名前だ。どうして、この人・・・・・・。

「そ、そうですけど」

「なら、いつも贔屓にしてらしてるじゃないですか。最近お顔を拝見しないもので、心配していました」と、またあの上品そうな笑顔を見せる。

「それは・・・・・・どうもすいませんでした」

 一瞬にして背中が凍り付いた。軽く頭を下げ、私は逃げるように店を出た。





「どうしたの、そんな青い顔して」

 外で待っていたセナが尋ねてきた。そうだ。そういえば、セナも初対面なのに私の名前を言い当てた。

「――――宇宙人ってさ、セナ以外にいるの」

「はぁ? どうしたの。頭でも打った」

「そうかもしれない。ううん、そうであってほしい」

「変な莉奈」

 セナはくるりと一転し、先を歩いていく。しかし、私は一歩も動けずにいた。目眩がしそうだ。誰か、この苦しみを分かち合える人間がいればいいのに。こんな時に限って両親は旅行に出かけている。さっき連絡があって、二人旅を満喫しているようだった。

 メールで相談を持ちかけてもいいのだが、心配性の両親のことだ。きっと、旅行を中断してでも帰ってくるだろう。迷惑をかけたくない。明後日には帰ってくるんだから。それまでの辛抱だ。

 そう自分に言い聞かせ、セナの後を追った。


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