聴覚障害者の日常 電車が不通になったら…編
聴覚障害を持つ親友のAさんと一緒に、共通の友人BさんCさん二人に会いにいくことになった。各地転居しているアタシはBさんCさんには15年ぶりの再会になる。
友人Bさんの自宅マンションで鍋でもつつきながら同窓会をやろうということになった。
Aさんは埼玉、アタシは千葉、Bさん自宅は都心から離れた都内。
JRから私鉄沿線に乗り換え、急行から鈍行に乗り換えたりしていくのだ。
Aさんは何度かBさんの家へ遊びに行っているので、Aさんと都内の某駅で合流していくことになった。
行きはスムーズで、十数年ぶりの再会を喜び合い、心配していたコミュニケーションも昔のように理解できて安堵した。
お昼に始まったミニ同窓会は夜の7時半まで続いた。
さすがにもう帰らないとBさんにも家族にも申し訳ないだろうと、別れを惜しみつつ3人で家を出た。
Cさんはアタシ達とは逆方向なので駅で別れた。
プラットホームに降りてしばらく待っていたが、電車が来ない。やっと来たかと思うと、急行が止まるはずがないのに止まった。しかもドアを閉ざしたままだ。
数十分が過ぎてやっと急行が動き出したが、今度は各駅停車のアタシ達がのる電車が来ない。
Aさんは怪訝に思い、おもむろにスマホをとりだした。
電車情報のツィッターを調べていたのだ。
ほどなくして、Cさんからメールがきた。
「人身事故で上下線不通になったらしい。僕は運よく乗れました。電車が動かないと思うから、いったんBさんちに戻ったほうがいいじゃないか?」
彼は手が不自由なのでかなり遅れてメールが届いたのだが、とても助かった。
耳の聞こえないアタシ達には駅の放送は聞こえない。電光掲示板が出るのはかなり後になった。
それからのAさんの行動は早かった。
まず駅から出た。
不通になるとしばらくは電車が来ないので待っていても無駄なのだそうだ。それより、他の手段を講じたほうがいい、とAさんは言った。これまで都内に出るたびに、よく人身事故による電車不通に遭遇するらしい。だから、慣れたものらしい。
改札口をでて駅員さんを捕まえたが、対応に追われ後手に回されるとわかると、駅の外にでて近くのドラッグストアにはいり、レジにいた店員さんにきいた。近くのJRの駅はどこで、そこへ行くための方法は何か、時間はどのくらいか。そうして聞き出した情報でバスに乗り込み、他のJRの駅に乗り換えて、無事に家に帰りつくことができた。
Aさんと一緒にいくと、必ずなにかしら起こる。
20年前に、アタシの実家に一緒に行くことになって横浜でお昼に待ち合わせをしたのに、台風で新幹線が遅延し、実家に着いたのは日付の変わるころだったっけ。
今回も例にもれずだが、いい経験、勉強をさせてもらったよ。ね、Aさん。