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番外編その1 恋のお邪魔虫!? 

番外編です。

この話は龍二が大学一年の頃のお話です。

 俺の名前は石川透。大学一年だ。今、大学のカフェテリアにいる。

 俺の隣にいるのは砂原真知子。俺の大好きな彼女だ。かわいくて人気のある彼女に一目惚れしてアタックを重ねた結果、付き合うことになった。


 今日は前期の試験の最終日。俺と真知子はすでにすべての試験を終えている。それなのに帰らないのは親友を待っているから。

 その親友の名は松永龍二。つい最近立て続けに彼女と別れた、かわいそうな奴。多分俺のせいでもあるから、罪滅ぼしに飯でも奢って慰めようと思ったのだ。


 龍二とは高校からの付き合い。男子校だったから大学に入ったらお互い彼女を作ろうなと話していた。入学して俺より先にかわいい彼女が出来た龍二だったのだが、夏休み前に振られてしまった。とてもいい彼女だったのに…。俺は罪悪感でいっぱいになった。

 勿論、二人を別れさせるつもりはなかったが、結果的にそうなってしまったのだ。


 それは龍二の幼馴染にとあることを話したせいだった。

 その子は龍二の隣の家に住む女の子だった。よく龍二の家に来ていたので仲良くなった。ある日その少女から電話がかかってきたのだ。


『もしもし、石川君? ちょっと聞きたいことがあるの。龍ちゃんの彼女って、どんな人?』


 そう聞かれて俺は知っていることを話した。教育学部で将来数学の先生を目指していることを。まさかその情報だけであの二人の仲を引き裂いてしまえるのか。俺は少し怖かった。


 しばらくすると向こうから見知った少女がこちらに向かって歩いてきた。俺を見つけて手を振りながら駆け寄ってきた。


「あっ、石川く~ん!」


 その少女こそ、龍二の失恋の原因である井上美衣子だった。







 美衣子ちゃんに席をすすめ、俺は思わず尋ねた。


「美衣子ちゃん、どうしてここに?」

「暇だから龍ちゃんの大学を見学に来たの」


 俺はとりあえず真知子に彼女を紹介した。真知子はニコニコしながら言った。


「松永君にこんなかわいい幼馴染がいたのね」


 しかし真知子、気をつけろ! この娘は恐ろしいぞ!


「いえいえ。真知子さんこそ、凄く綺麗。石川君もやるね」


 彼女は真知子をべた褒め。真知子は気をよくして、とんでもないことを言い出した。


「そうだ! この後松永君とご飯食べるんだけど、美衣子ちゃんも一緒にどう?」

「いいんですか? やったぁ!」


 おいおい。金を出すのは俺だぞ。まぁ学食だからそんなに高くないからいいけど。


「ところで石川君。最近、龍ちゃんの周りに女の影ってある?」


 すかさず尋ねるところはしっかりしていた。


「いや。最近はぱったりなくなったよ。……誰かさんのおかげかな」


 軽い厭味を含めたのだが笑顔を返された。


「嫌だなぁ。二人目は何もしてないよ? あの人が勝手に脱落していったんだから」


 俺と美衣子ちゃんのやり取りを聞いて、真知子は尋ねた。


「美衣子ちゃんは松永君のことが好きなの?」


 美衣子ちゃんは否定することなく頷く。


「はい、好きですよ」

「そうなの。じゃあ心配ね。松永君、結構モテるから」


 真知子の言葉に美衣子ちゃんがピクッと反応した。また何かしそうな雰囲気…。


 そんなことを話していると龍二がやって来た。美衣子ちゃんはすっと立ち上がって龍二に駆け寄り、抱きついた。


「龍ちゃーん!」

「美衣子? お前何でここにいるんだよ」

「暇だから」

「中坊が来るところじゃないだろ」

「子ども扱いするな」

「全く…」


 呆れながらも龍二は美衣子ちゃんの頭を撫でた。結局許してしまうところが龍二も彼女に甘いと思う。

 二人の様子を見て真知子が呟いた。


「美衣子ちゃん、中学生なの…?」


 そこかい!


 確かに彼女は中学生に見えない。今日は以前見た時より大人っぽい。化粧でもしているのだろうか。女子大生に引けを取らないほど大人に見えて、かわいらしかった。


 龍二が来たから四人でご飯を食べた。真知子の言葉の通り、龍二はそこそこモテる。本人は気づいていないが整った顔立ちにがっしりしたスポーツマン体型。憧れている女も多い。

 今も龍二に視線を向けている女子が大勢いた。美衣子ちゃんに鋭い視線を送る女子も。それを知っているのか、美衣子ちゃんは龍二にべったりくっついていた。


「それ、おいしそう。一口ちょうだい」

「ったく、しょうがねぇな。ほれ」


 龍二は美衣子ちゃんの口にコロッケを入れた。「うまーっ」と美衣子ちゃんは笑顔だ。お返しにと美衣子ちゃんは唐揚げを龍二に差し出した。すると「ん」と龍二も何のためらいもなく唐揚げを口に頬張る。傍から見たらただいちゃついているように見えた。


 午後も試験のある龍二は美衣子ちゃんに「さっさと帰れ」と言い残して去っていった。







「で、美衣子ちゃん。本当は何しに来たの?」


 龍二が居なくなってから俺は尋ねた。しばらく黙っていた彼女はニコリと笑った。


「暇だからっていうのも嘘じゃないんだけどなぁ。まぁいいや。もちろん、龍ちゃんに気がある女に対する牽制、かな?」


 やっぱり、とようやく納得できた。普段化粧っ気がない彼女がこんな格好でわざわざやって来たのだから、恐らくそうだとは思った。


「でもその必要がないように見えたわよ?」


 真知子がそう言った。確かに龍二も美衣子ちゃんを憎からず思っているようだ。しかし美衣子ちゃんは首を横に振る。


「ダメダメ。念には念を入れないと。わたしがいる限り、龍ちゃんに女なんて作らせないんだから。それにわたしができるのはここまでなんだよね。あとは本人次第っていうか…」


 この時彼女の言っていることの意味がわからなかった。それがわかったのは数か月後の学園祭の時だった。







 十一月の下旬に学園祭があった。俺たちはサークルでたこ焼き屋をすることになった。そこに美衣子ちゃんが姉である美奈子ちゃんとやって来た。

 美奈子ちゃんの姿を見つけ、龍二は眉をひそめた。


「もうすぐテストだろ? 勉強はいいのか?」


 龍二は今、美奈子ちゃんの家庭教師をしているらしい。


「固いなぁ、龍ちゃんは。息抜き、息抜き」


 美衣子ちゃんがすかさずフォローした。美奈子ちゃんのことは顔見知り程度だが、おとなしい女の子に見える。龍二曰く気が強いらしいが、とてもそんな風には思えなかった。


 龍二が休憩になったので二人を案内すると言ったのに、美衣子ちゃんは断った。


「石川君や真知子さんと話したいから二人で行ってきなよ」


 そう言って二人を送り出した。


「いいの? 二人きりにしちゃって」


 俺は不思議で仕方なかった。あれだけ龍二の周りの女を排除してきた彼女の行動とは思えなかった。

 美衣子ちゃんはきょとんとして首をかしげた。


「これが狙いなのに。わたしがいたら邪魔でしょ?」


 よくよく話を聞けば、美奈子ちゃんが龍二を好きらしい。しかし奥手のためなかなか告白できない。そんな姉を見かねて、美衣子ちゃんが龍二の周りの女を排除したとのことだ。


「でも美衣子ちゃん、前に松永君のこと好きって言わなかった?」


 真知子が問う。


「好きですよ? でもあくまでお兄ちゃんとして。どちらかといえばわたしは恭ちゃん派」


 恭ちゃんとは龍二の年の離れた兄だ。


「いくらお膳立てしても、ここから先はわたしでは何もできないし。あとはじっくり待つのみ」


 美衣子ちゃんはたこ焼きを頬張りながら笑った。


「じゃあ美衣子ちゃんは好きな人、いないの?」


 真知子もたこ焼きをつつきながら尋ねる。


「いるといえばいるけど…。でも今は自分のことよりお姉ちゃんと龍ちゃんがうまくいく方が優先!」


 学園祭が終わり、帰り道に俺は美衣子ちゃんを思い出した。


「姉の恋のためにあれだけできるなら、自分の恋では一体どんなことするのだろうな」

「あら、意外に自分の恋には不器用かもね。そんな気がするわ」


 真知子はそんな風に言うが、俺には信じられない。女って何するかわからない。もしかしたら隣にいる真知子だって…。気を付けなければ、とこっそり誓う俺だった。





名前だけ出てきた石川君でした。


次回も番外編で、それで完結となります。

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