自意識過剰なthursday
ご覧いただきありがとうございます。播磨麻耶です。
雨の木曜日、静かなカフェのカウンターで繰り広げられる、密かな片思いと切ないすれ違いを描いた小さな物語をお届けします。
雨音の響く空間で、主人公の揺れる気持ちにそっと寄り添っていただけたら幸いです。どうぞ最後までお楽しみください。
来週木曜日がやって来るるたびに憂鬱になる。木曜日には、決まって雨が降る。何故かはわからない。
そして、自転車に乗る彼は、雨の日は面倒くさいから何処にも出掛けないとでも言うように必ずやって来ない。
小さなカフェで働くわたしの唯一無二の愉しみであり趣味でもあると言っていい彼との遭遇は、必ず木曜日には達成されない。
神様は木曜日に何らかの恨みでもあるのだろうか?
彼と目を合わすことすらできないわたしは、もっと接近したかった。カウンターの内側とテーブル席との距離は、絶望的に遠かった。
それでも彼が来ると心臓が高鳴るのだ。出来るなら、彼の向かいの席に座りたい。そして他愛もないお喋りで時間を感じずにいたい。
でもそれは無理。彼にはカノジョがもう居るから。
わたしでは遠く及ばない美貌のカノジョが。
雨の音がカウンターに響き渡る中、濡れた傘を開いて現れたのは、彼と、その隣で小さく微笑む彼女だった。
ふたりが並んで座るテーブルへ注がれることのない視線を投げかけ、わたしは冷めきったカップの縁をなぞりながら、決して届かない恋心をまたひとつ、雨の雫とともに飲み込んだ。木曜日にはやって来ないのではないのか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
絶対にやって来ないはずの木曜日に、雨傘を差して現れた彼と彼女。遠くから見つめることしかできない主人公の切ない驚きと、届かない恋心を描いた掌編です。
雨の日の静かなカフェの空気感とともに、少しでも心に残るものがあれば嬉しく思います。
また次の作品でお会いしましょう!
播磨麻耶




