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Eggキット  作者: 逆春
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彼の者の願い

 人々は動いた。


 警備の薄さは、まるで彼等を迎え入れるようであり、不気味でもあった。


 それでも、人々は進んだ。


 目指すのは、ただ一つ。


 奥に進むにつれ、だんだんと豪華になっていく廊下。


 そう、目指すのは……







 さぁ、いくわよ。


 姉の言葉に妹が頷き、即座に主従関係が結ばれる。


 魔女の歌にあわせて、使い魔が踊る。


 魔方陣も媒体も生け贄も必要ない。


 二人だけの魔法。


 血の絆を利用し、全ての根源へ訴えかける。


 歌は呪であり、踊りはそれ自体が陣の代わり。


 立ちはだかる者は、全て薙ぎ倒す。


 仮初めの魔術師など、遠く及ばない。


 彼女らは、真の魔術を識っているから。


 圧縮された空気を、白い装束を纏った王宮魔術師達に解き放つ。


 悲鳴があがる。


 魔女が笑う。


 使い魔が空気弾の軌道修正をする。


 それは、一瞬だった。


 命を受けて、この部屋で高度な魔術を繰りだしていた百人近くの魔術師が、つい先程乱入してきた幼い二人の少女に壊滅させられた。


 爆弾とも呼べる空気弾は、凄まじい音と衝撃を生み出し、一瞬で少女達以外を瓦礫の山で包んでしまった。


 あぁ、つまらない。


 魔女がぼやいた。


 この程度の力で、私達に楯突こうなんて、思い上がりも甚だしいわ。


 怒りというより、呆れ。


 あの人達、行ったね。


 えぇ。


 そして、二人揃って彼等が向かうであろう場所を見上げる。


 てっきり怖気付いて帰るのかと思ったわ。


 まさか、行方不明の犯人が自分達の王様だった、なんて、思いもしなかったでしょうしね。


 見上げたのは、王の間。


 彼等が向かう、玉座。


 人って、弱いだけじゃないんだね、お姉ちゃん。


 そうかもしれないわ。






 まぁ、何にせよ彼等に幸があらんことを、ってね?


 人々は駆け上がる。


 初めて見た王宮の豪華絢爛な装飾品に、感動するどころか見向きもせずに。


 王の間に、護衛に護られた、一人の男がいた。


 無礼者め!何者だ。


 護衛の一人が声を張る。


 あなた方に誘拐された者だ。


 王、貴方なんですね?

 私達を村から攫い、あの部屋に閉じ込めさせたのは。


 問い詰める村人達に対し、気の弱そうな王は悲鳴をあげるばかり。


 話など、できる状態ではない。


 いったいどうして?


 なんのために?


 どうやって?


 彼等の聞きたいことに、ただ脅えをみせるだけ。


 やがて、怒ったかのように話しだした。


 まるで、緊張の糸が切れたかのように。


 そうさ、私がやったのだ。

 特殊な魔術をかけ、座標を固定し、ある一定の時間に固定した場所を訪れた者を、空間の歪みから移動させた。


 なんのために!?


 知れたこと。


 王は笑う。


 神への生け贄だ。今年はお前達の村からだったのだ。


 まさか、毎年やっていたの?


 誰かが、悲痛な叫びを上げた。


 なんてことを。


 必要なことだったのだ。


 王の返答に、村人達は怒り狂った。


 そして、彼等は王を倒し、国中に王の所業を公開した。



 …そしてその後、村人達は新たな王を選び、平和な国造りのために、大いに役にたったそうじゃ。」


 老婆は話し終わると、ふうと息をついた。


「さぁ、もうお帰り、子供達。

 母さんが家で待ってるよ。」


 促すと、おとなしく話を聞いていた子供達が慌ただしく帰りだした。


 小さな小屋に一杯に入っていた、小さな聞き手が疎らに帰っていくのを見送り、老婆は誰も居なくなった家で、にっこりと笑った。


「子供はかわいいね。お姉ちゃん。」


 すると、どこからともなく魔女の少女が現れた。


「そうね。あなたの話し方も様になっていたわよ?

 私のかわいい使い魔。」


 からかうように笑って、老婆の肩に触れる。


 一瞬で、老婆から少女へ変貌した。


「からかわないで、これでも頑張ったんだから。」


「最後は話を変えたでしょう?

 優しい子ね。」


「子供に聞かせられる話じゃなかったからね。

 王様が自白する辺りから、変えちゃった。」


「ふふ、そうね。

 あんな醜く下劣で哀れな話、聞かされたらたまったものじゃぁないわね。」



 そして、二人は顔を見合わせて、くすくすと笑った。











 歴史にも記されなかった、真実。


 知るのは、当人達と、傍観者であった双子の姉妹のみ。


 ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。


 この話は私が中学生の頃に書いた短い話を伸ばして、まとめあげたものです。


 未熟な面が目立ったこととは思いますが、読んでくださる方がいらっしゃることに大喜びしています。


 ありがとうございました。

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