全ての終わりに向けて
ここは…?
あの魔女が創った歪みから、人々は乗り込んだ。
着いた場所は、村人には見覚えのない豪華な建物の一角。
魔女がその言葉に応えた。
王宮よ。
さらりと告げられたその言葉に、一同は硬直した。
何だって!?
わかったのなら、私達はあの魔術を行った者達の所へ行くわ。
どうするの?戻るの?
魔女が揶揄するように言う。
行方不明の犯人は、皆わかっていた。
怖じ気づいたなら帰れと、魔女は言うのだ。
しかし
帰らない。戻らない。
私達は、彼らを取り戻したい。
魔女は笑った。
なら、さっさと行きなさい。
そう言って、魔女と使い魔は身を翻した。
村人達は呟いた。
……ありがとう。
駆けていく村人達を横目で見送り、双子はある建物に向き直った。
それは、造りこそ普通ではあったが、何重にも厳重に魔術防御が布かれ、わかる者には驚くほどの強力で堅固な要塞と化していた。
お姉ちゃん。優しいね。
あの人達が危険に合わないように、遠ざけたんでしょ。
違うわよ。これは、私の仕事。
彼等は関係ないわ。
ツンと少女らしく照れてみせ、魔女は建物を見据えた。
違うよ、お姉ちゃん。
使い魔が魔女の手を取った。
私達の仕事だよ。
さぁ、教えてあげよ?お姉ちゃん。
えぇ、身のほど知らずな愚か者どもに、古より彼の地を守りし我等のちからを。
そう言って、二人は同時に笑った。
魔女と別れた村人達は、王宮中を片っ端から調べていった。
広く、入り組んでいて、捜すのは容易な事ではなかったが、村人達は諦めなかった。
必ずどこかに居るはずだ。
そう信じて、探し続けた。
途中で幾人かの衛兵に出会った。
しかし、大切な人を探す彼等に迷いはなかった。
力仕事で鍛えられた筋力に適うはずもなく、立ちはだかる衛兵は、剣を構える隙もなく、ことごとく打ち破られた。
その事に罪悪感を感じた者も居たが、覚悟は変わらなかった。
王の住まう宮殿に襲い入る彼等に気付き、捕らえようとする兵達が、集まっていく音がする。
村人達は焦った。
ここで捕まっては、何もできない。
しかしその時、背後で爆音が轟いた。
兵達は、一瞬の驚きの後、そちらに向かった。
村人達は何が何だかわからなかったが、一人が呟いた。
魔女だ。きっとあの二人だ。
おそらく、彼女らの言っていた仕事とやらだろう。
何にせよ、助かった。
警備が薄くなった場所を縫うように進んでいった。
探すうちに、おかしな扉を見つけた。
見張りが立てられ、鍵をつけられた部屋。
まるで捕虜を閉じ込めているような。
此処に違いない。
彼等は見張りを倒し、鍵を壊して中に入った。
勝手な決め付けではあったが、かれらの考えた通りであった。
中には多くの見知った顔があった。
村人達は喜び合い、再会を噛み締めるように、抱き合った。
やがて、興奮が落ち着いてくると、誰からともなく立ち上がった。
さぁ、行こう。
全てを始めた者の所へ。