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Eggキット  作者: 逆春
4/5

全ての終わりに向けて

 ここは…?


 あの魔女が創った歪みから、人々は乗り込んだ。


 着いた場所は、村人には見覚えのない豪華な建物の一角。


 魔女がその言葉に応えた。


 王宮よ。


 さらりと告げられたその言葉に、一同は硬直した。


 何だって!?


 わかったのなら、私達はあの魔術を行った者達の所へ行くわ。

 どうするの?戻るの?


 魔女が揶揄するように言う。


 行方不明の犯人は、皆わかっていた。


 怖じ気づいたなら帰れと、魔女は言うのだ。


 しかし


 帰らない。戻らない。

 私達は、彼らを取り戻したい。


 魔女は笑った。


 なら、さっさと行きなさい。


 そう言って、魔女と使い魔は身を翻した。


 村人達は呟いた。


 ……ありがとう。



 駆けていく村人達を横目で見送り、双子はある建物に向き直った。


 それは、造りこそ普通ではあったが、何重にも厳重に魔術防御が布かれ、わかる者には驚くほどの強力で堅固な要塞と化していた。


 お姉ちゃん。優しいね。

 あの人達が危険に合わないように、遠ざけたんでしょ。


 違うわよ。これは、私の仕事。

 彼等は関係ないわ。


 ツンと少女らしく照れてみせ、魔女は建物を見据えた。


 違うよ、お姉ちゃん。


 使い魔が魔女の手を取った。


 私達の仕事だよ。

 さぁ、教えてあげよ?お姉ちゃん。


 えぇ、身のほど知らずな愚か者どもに、古より彼の地を守りし我等のちからを。


 そう言って、二人は同時に笑った。



 魔女と別れた村人達は、王宮中を片っ端から調べていった。


 広く、入り組んでいて、捜すのは容易な事ではなかったが、村人達は諦めなかった。


 必ずどこかに居るはずだ。


 そう信じて、探し続けた。


 途中で幾人かの衛兵に出会った。


 しかし、大切な人を探す彼等に迷いはなかった。


 力仕事で鍛えられた筋力に適うはずもなく、立ちはだかる衛兵は、剣を構える隙もなく、ことごとく打ち破られた。


 その事に罪悪感を感じた者も居たが、覚悟は変わらなかった。


 王の住まう宮殿に襲い入る彼等に気付き、捕らえようとする兵達が、集まっていく音がする。


 村人達は焦った。


 ここで捕まっては、何もできない。


 しかしその時、背後で爆音が轟いた。


 兵達は、一瞬の驚きの後、そちらに向かった。


 村人達は何が何だかわからなかったが、一人が呟いた。


 魔女だ。きっとあの二人だ。


 おそらく、彼女らの言っていた仕事とやらだろう。


 何にせよ、助かった。


 警備が薄くなった場所を縫うように進んでいった。


 探すうちに、おかしな扉を見つけた。


 見張りが立てられ、鍵をつけられた部屋。

 まるで捕虜を閉じ込めているような。


 此処に違いない。


 彼等は見張りを倒し、鍵を壊して中に入った。


 勝手な決め付けではあったが、かれらの考えた通りであった。


 中には多くの見知った顔があった。


 村人達は喜び合い、再会を噛み締めるように、抱き合った。


 やがて、興奮が落ち着いてくると、誰からともなく立ち上がった。


 さぁ、行こう。


 全てを始めた者の所へ。


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