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檸檬色に羽ばたく夜は

作者: 昼月キオリ


小学三年の春。

カナリアを一匹飼っていた。

名前は檸檬。


ある日の午後。

母と父は仕事で家にいなかった。


いつもは大人しい檸檬が鳥籠の中で暴れている。


「どうした?」


「ピーピーピー」(ここから出たい、出たい)


動物の言葉が分かるとは時に厄介なものだ。

余計な感情が入りまくる。


俺は檸檬を逃がした。

その日の夜、親からこっぴどく怒られた。


あれから20年が経ち、俺は29歳になった。

親が決めた学校に通い、就職先も親父が決めた会社に入った。

見合いの話が出てる。

もうじき、俺はその人と結婚するだろう。


楽だったんだ。

俺自身に意思などないと思っていた。


いつも通り出勤し、仕事が終わって帰ろうとした時。

不意にいつもと違う帰り道を歩いてみたくなった。

歩いていくと細い路地が見えた。

向こうの方から鳴き声がする。気になった俺は奥へと進んだ。


開けた場所にたどり着くと、野良猫たちが塀の上に座って会話をしていた。

野良猫たちは和樹を見て「にゃあにゃあ」鳴いている。


「にゃあ?」(いつもと違う道に入ってきたな?)

「にゃあにゃあ」(お前、いつも同じ道しか歩かないのにな)


和樹は野良猫たちが自分を見て笑っているように見えた。

悲しくなり、振り返って駆け足で家に帰ろうとした。


「ピッ」(久しぶり)


道にカナリアが一匹止まっているのが見えた。


「え、檸檬?いや、まさか・・・」


「ピーピーピー」(残念ながら僕はもう死んでるよ。あの後、遠くまで飛んでいたけど休んでいるところをヘビに食べられちゃった!)


「そんな・・・ごめん、俺余計なことした・・・」


「ピーピーピー」(そんなことない。君は僕を逃してくれた。感謝してる。君のおかげで僕は自由に空を羽ばたけた。いい人生だったよ。)


「檸檬・・・」


「ピーピーピー」(かずき、君が自由になりたいなら僕が手を貸すよ。あの時のお返しがしたくてここまで来たんだ。)


「手を貸すって言ったってどうやって・・・」


「ピッ!」(僕が君の体に少しの間入る。)


「え、そんなことできるの?」


「ピッ!」(できる!ただし、チャンスは一度だけだ。そしたら僕は君の体で自由に遊ぶ。君は自分の意思ではできないだろう?

だから僕が遊んだ後、体をまた交換する。

周りからは君が自由に遊びまくったことになる。

後に引けなくなるわけさ。)


「な、なるほど・・・」


「ピー?」(どう?僕みたいにヘビに食べられちゃうかもしれないけど)


「・・・するよ、交換」


そして檸檬の霊体が一時的に俺の体に入った。

檸檬は言った通り、俺の体で自由に行動し始めた。


俺は檸檬が言う遊びとは休日に旅行に行くとか、

カラオケとか、そんなものだろうと思っていた。


次の日。

しかし、あろうことか檸檬は俺の体を使ってその日のうちに仕事を辞めた。

有給で1か月分休みを入れた為、退職日まで行かなくて良くなったらしい。

何で鳥のくせにそんなことまで知ってるんだ。

挙げ句の果てには見合い相手の彼女を口説き、駆け落ち同然に家を出た。


色白で髪が長くておっとり系な彼女をひと目見て気に入ってしまったらしい。

何で鳥のくせに人間に対してそんな風に思えるんだ。


まぁ、確かに可愛いけどさ。

実を言うと俺も一目見ていいなって思ってたけど!


「檸檬・・・お前、やってくれたな・・・」


「ピー?」


檸檬は何がー?みたいな顔でこちらを見ている。


チラッと和樹は腕にしがみついている彼女に目をやる。

彼女も彼女だ。

よく仕事辞めた俺について行こうなんて考えたな。


まぁ、可愛いからいいけど。


その日、俺は貯金と彼女と自由を手に入れた。


夜景が見える海に建物の光が反射して伸びている。


「綺麗ね」


「うん」


その中にひとつだけ檸檬色の光が見えたのだった。







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