プロローグ
朱色の斜陽が社殿の屋根を鮮やかに染め上げ、社殿の奥へとひそやかに差し込んでいた。木造の鳥居は長い影を砂利道の上に落とし、風に揺れる御幣がかすかに音を立てる。
社殿の中には、朱色の光に照らされながら一人の巫女が目を閉じ静かに跪いていた。浄めの水で清められた掌を合わせて、澄んだ息遣いが赤く染まる境内にこだまし、祈りの言葉は彼女の唇から語りかけるように弱々しくささやき零れ落ちる。
「ねぇ…「 」、輪廻ってあると思う?
生命が尽きた死後も時が廻りまた別の生命として生まれ変わるの、
もしも…そんな事が本当にあるのだとすれば
次の生では普通に生きられて
そして叶うのなら来世では………………」
その声に応えるかのように、蝋燭の炎が微かに揺れた。そして、巫女の心の中に潜む影がその言葉を聞き届ける。彼は何も言わずただじっと、静かに彼女の横顔を見つめていた。
朱い光はやがて朱雀の紋様を描く木彫りの扉を通り抜け、社殿の奥深くへと消えていく。巫女は祈りを終えると、ゆっくりと視線を上げた。優しい温もりを感じさせる綺麗な琥珀色のその瞳には祈りの重みと哀しみが混じっていた。