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真っ赤っか

本作品は、「ホラー」であり、いわゆる「妖怪物」かもしれません。

例えるなら、より怖い「ぬ~○~」とジャンルを位置づけますが、未だ完結していないのでわかりません。


あの当時、妖怪や闇の恐怖に憧れた人に届けたい、ありうる伝奇小説を目指して頑張ります。





いやぁ、暗いとこって、怖いですよね。あ、怖くない?

でも真っ暗にして読まないでね?

あ、窓とドア締めました?

後ろに誰も居ない?

ホラ、今鏡で誰か手を振らなかった?

ほんとに誰も居ない?

明かりはついてる?

今なんか言った?











ま、いっか。














じゃあ、どうぞ。

アナウンサー

「------それでは以前からお伝えしている、連続通り魔の事件についてです。今日は犯罪心理を専門に研究されている、東京大学の村瀬教授にお越し頂きました。よろしくお願いします。」


村瀬

「よろしくお願いします。」


アナウンサー

「それではさっそく、犯人の人間性についてご意見承りたいと思います。

 村瀬さん、犯人の動機、そしてそこから見える人間性とは、一体なんだとお考えですか?」


村瀬

「先ず動機について端的に申し上げますと、確固たるものは無い、と思います。こちらの切り口、このパネルでわかりますでしょうか、躊躇うことなく、そして軽やかに刃が通り抜けていますね。ここから察するに、恐らく犯人にとって、これは特別なことではなく、自分の、自分のですよ?、そのライフスタイルに組み込まれたある種の日課と申しましょうか、そういったものの類ではないかという考え方が出来ます。」


アナウンサー

「なるほど。確かにここまで動機が見えてこない、かつやりなれた手口となりますと、そういった線も考えられるという訳ですね?」


村瀬

「そう。そして先ほどの例から推察した犯人像とは、つまり」




ブツゥン----




木村が後ろを見ると、そこには上司の倉島が、テレビのリモコンを持って立っていた。その目は咎めるような鈍色の光をたゆたわせている。


倉島

「・・・刑事がワイドショーに聞き込みか?」


木村は取り繕うように笑うが、倉島は鈍色を消さない。


倉島

「捜査が難航して課長は胃痛でダウン、警察庁からはウチにクレームが来てる。悠長に大学のセンセなんかの意見を当てにしている場合じゃないぞ」


木村

「すみません。ただ、捜査資料の整理をしていたら目に入ったものですから・・・」


倉島は木村の座る黒い長イスの後ろから背もたれに寄りかかり、声を落として囁いた。


倉島

「被害者がまた増えた。」


えっ、と大声を出した木村の口に手を当て、倉島は続ける。


倉島

「鑑識から、どうも同一犯ではないか、という話が流れてきた。多分間違いない。4人目だ。」


木村

「初犯から1ヶ月で4人ですって?早すぎやしません?マスコミへの発表はまだですか?」

と、声を落とす。


倉島

「その判断は慎重だろう。なんせ同じ所轄内で、4件も殺傷事件が起きている。こんな事発表すれば、住民はパニックだ。」


木村

「でもそれじゃ被害者は増える一方じゃないですかッ・・・」


倉島

「なら一刻も早く犯人を捕まえられるよう努力するとしようじゃないか木村君。マスコミへの発表云々は、病院の課長が決める事だ」


そう区切ると、これ以上は何も無い、と言わんばかりに倉島は資料部屋を出ていく。続けて木村も資料をグチャグチャにまとめながら、後を追う。資料室を右に曲がると、交通安全課で、それをさらに20メートルも進むと出口だ。木村は交通安全課の同期に「今日は帰れそうにないや・・・」とアイコンタクトをし、豊島警察署を出た。同期は木村の背中を同情の目で送り、事故書類の作成に戻った。



豊島区某所某高校通学路



多くの学生が池袋東口でひしめいている。事件の前まではサンシャイン等へ寄り道する者も居たが、今は部活も休止、暗黙の集団下校が行われていた。藤堂と吉村も、その口だった。


藤堂

「多すぎんだよコイツら・・・。駅でダベってないで、早く帰りやがれ」


吉村

「という俺達も、まぁカフェでお茶してる訳だが。生徒指導に見つかったらドヤされるぞ俺達」

そう言うと、キシシ、と笑った。


二人は多すぎる人の波が有る程度捌けてから帰るつもりだった。と言っても、電車通学は吉村だけなので、藤堂は付き合っただけである。


いつもなら大型家電量販店で時間でも潰すのが二人の通例だったが、最近の事件を考慮して、先週から店内に学生が居ると、店員が学校に電話するという対応を取り始めたと聞いたため、手持ちぶさたを解消しにカフェへと足を運んでいる。カフェは駅構内にある、という理由で二人は「ここなら襲われることもあるまい」とタカをくくっている。実際事件現場は住宅街やビル街の裏路地で行われており、駅のような見通しの良い場所では可能性は低いと考えて良かった。



いつも、特に喋るわけでもなく、ただ居心地が良いという理由で二人はいつも連んでいるが、今日は、いやに沈黙が続いていた。



藤堂

「さて、と。」


吉村

「お、帰る?」


沈黙に、いつもは感じない些かの心地悪さを抱えていたのか、吉村はむしろ嬉しそうに聞いた。


藤堂

「そうだな。空になったマグカップだけでこれ以上粘るのは無理そうだ」 


吉村

「あらららら、店員さんもコッチを見ているよ。潮時ってヤツですね」


二人は荷物を持って店を出た。


吉村は西武線で埼玉方面へ。藤堂は豊島区内にある家へと自転車で向かった。


時刻は5時を回り、あたりも薄暗くなってきた。遠くビルの向こうに、強いオレンジ色の太陽が名残惜しさを残しているが、明るさは提供してくれない。感受性のある人間であれば、その光景に感動を覚えるであろう日没直前の夕焼けだったが、藤堂はさして気にも止めなかった。


いつもの通りを夕焼けに向かって真っ直ぐ走っていると「パスンッ」という乾いた音と共に、自転車のハンドルがグラついた。緩くブレーキを掛けながら止まり、自転車を点検すると、前輪のタイヤがスッパリ切れ、空気入れのキャップも取れていた。ガラスのビンでも踏んだだろうか、やはりライトを修理して点くようにしたほうが良さそうだ、と夕焼けを背にキャップを探そうとした。


音がしたあたりまで戻り、薄暗い中を携帯電話のライトで探すと、幸運にもキャップはすぐに見つかった。これじゃあツいているのかツいていないのかわからないな、と自嘲気味に笑うと、未だ点灯しているライトに何かが反射した。藤堂は近寄ると、薄汚れた鏡の破片を見つけた。


藤堂

「・・・これで切ったのか?」


藤堂は近づくと、それが鏡のガラス片ではないことに気付く。


藤堂

「・・・!?これ、ナイフか!?」


藤堂は驚きながら、曇った刃物をしゃがんで見つめる。

これは警察に連絡した方が良いのだろうか。

急に背筋が寒くなった藤堂は、道路を見渡すが、人影はない。


藤堂

「誰のだよ全く・・・」


発見物が発見物だけに、独りで居る事に対して恐怖を感じた。せめて他にオトナの人でも居れば、と思いながらも、手にした携帯電話で110番通報を試みる。


藤堂

(最近起こっている事件の関係物じゃないだろうな・・・)


そう、ひとり呟くと、オペレーターに繋がった。


オペレーター

「110番です。事件ですか?救急ですか?」


藤堂

「あの、事件というか、なんて言うんだろう・・・。豊島区内の道を今下校しているんですが、刃物っぽい物を見つけてしまって・・・。」


オペレーター

「場所と、貴方の名前と学校を教えてくれますか?」


藤堂

「あ、はい。藤堂桐栄と言います。タンスの桐に、栄える、です。場所は・・・」


ふと、顔を上げると、藤堂の影と重なって、人の影が近づいてくる。


誰かが居ることに安堵した藤堂は、思わず後ろを見ると、誰も居ない。小道にそれたのか。と思うも、しかし誰かが居る安心感から、もう一度夕日に背を向けナイフを見ると、ナイフがない。


藤堂

「あれ?」


オペレーター

「どうしましたか?」


藤堂

「いや、目の前にあったナイフが無くなって・・・。いや、嘘とかじゃないですよ!とりあえずきてください。場所は××公園近くの裏路地なんですけど・・・なんなら公園に来て貰えませんか?僕、待ってます。」


オペレーター

「わかりました。今捜査員が向かっていますので、しばらくお待ち下さい」


藤堂は礼を言って切ると、また目の前に影が自分のを含めて二つあるのに気付いた。


さしたる恐怖もなく後ろを見やると、コートを着た人が、太陽の方へ歩いて行く。


藤堂

「あの、すいません!さっきココにナイフ落ちてませんでしたか?」


声を掛けてみて、しかし妙だと思う。自分の後ろで太陽に向かって歩いているということは、少なくとも電話をしている自分とすれ違っていることになる。だが、藤堂は誰ともすれ違わなかった。


その疑問を解消するために頭を集中させつつ、油断した体でコートの人に近寄ると、その手に先ほどのナイフが見えた。


藤堂は、なんでこの人はさっきのナイフを持っているのだろうと、ボーッと考えながら質問の答えを待った。警戒心は緩みきっていた。


コートの男は横顔だけ振り向いたが、逆光で顔がよくわからない。すると声だけが聞こえてくる。段々大きくなってきて、4メートルほど離れた藤堂にも聞こえた。


コートの男

「ト、ウドウ、キリ、エ」


藤堂の警戒心が働くまでの一瞬の隙に、コートの人は身を翻して詰め寄ってきた。

藤堂はムチに打たれた駄馬のように翻り、逃げようと試みたが、肩を掴まれた。






頭だけ振り返るとそこにはコートではなく、逆光にもそれとわかる真っ赤な真っ赤な真っ赤なマントを纏った人間が肩を掴んでいた。



藤堂は薄れゆきたい意識を必死で繋ぎながら、真っ赤な真っ赤な真っ赤なマントとナイフから逃げる手段を考えようとした。























藤堂

「・・・誰?」と呟く。




























































「アカ、マント」


しゃがれた声でぼそりと言われた。

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