表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/37

課金プレイによる聖地観光で知った、地元の方に今も愛される素敵な女優

かつて訪れた岩手でのこと。三陸鉄道、久慈、小袖海岸、盛岡。そこでの思い出に、私が思ったこと。旅路にて相生が思ったことを徒然に。鉄旅。聖地巡礼。岩手、久慈。三陸海岸。相生の旅エッセイです。



 さて、ひとりの鉄ちゃんとして乗っておきたかったのが、岩手県の太平洋岸を走る三陸鉄道である。あの、白をベースに青と赤のラインが入るガンダムカラーがたまらない。


 ただし。

 三鉄さんは、JRではない。繰り返す。三鉄さんは、JRではないのだ。


 つまり、青春18きっぷだろうが、JR北海道&東日本パスだろうが、それで三陸鉄道には乗れない、ということになる。


 要するに、別料金が必要になるのだ。乗り放題切符での鉄旅において、別料金が必要になる路線を利用することを、私は『課金プレイ』と呼んでいる。

 そう。

 課金してでも乗りたい鉄道。それが三陸鉄道だ。


 三陸鉄道そのものの、リアス海岸沿いを走る海チカ路線も魅力的だが、この路線は聖地でもある。アニメではない。朝ドラだ。


 あまロス、という言葉をご存知だろうか。NHKの朝の連ドラ『あまちゃん』の最終回を見終えて、明日から『あまちゃん』のない日々が始まるなんて耐えられない……という、アレだ。


 私にとって『あまちゃん』は、生まれてから今までで唯一、最初から最後まで見たNHKの朝ドラなのである。他の朝ドラは、申し訳ないが、どこかで見るのを止めている。

 そもそも『マンハッタンラブストーリー』に出ていた人たちがたくさん登場している時点で、見るに決まっているのだが。


 岩手の三陸海岸は『あまちゃん』の舞台だったのだ。


 という訳で、聖地を目指す。

 水沢から花巻までは東北本線だ。途中、大きなバッグを持った高校球児が車内に乗ってきた。かばんに書いてある花巻東といえば、野球の名門ではないか。ちょっと感動。その高校生が誰なのかは知らない。

 花巻では釜石線に乗り換えて、釜石を目指す。愛称は銀河ドリームライン。まあ、岩手県だし、賢治ですね、はい。


 ところが、途中で事故が発生。なんと、熊とぶつかって約20分の遅れ!


 三鉄に間に合わない!?


 動揺した私は車掌さんに三鉄への乗り継ぎがどうなるのか、早口で質問した。


「三陸鉄道はこちらの到着を待って発車するとのことです」


 女性の車掌さんがにこやかにそう教えてくれた。


 ……ありがとう、三鉄。あなたは神か?


 安心したら、ふと、仙台でバスガイドさんが、「東北の旅は熊に気をつけて」と忠告してくれたことを思い出した。予言か? 予言なのか?


 その後、何分か遅れで釜石に入線すると、向かいのホームで三鉄のガンダムカラーが待ってくれているではないか。


 遅れた者の礼儀として小走りでホームを移動して、憧れの三陸鉄道へと乗り込む。今から、久慈まで、海チカ路線で景色を堪能するのだ。


 リアス海岸を走る路線は、トンネルと海を繰り返すように走る。

 綺麗な海が見えるところもあるが、それ以上に目立つのは、巨大な堤防だ。それも、新しい堤防。


 あの震災の、あの津波に対抗できなければならないのだ。堤防を見る度に、思わず背筋が伸びた。


 そんな気を引き締める瞬間もあったが、基本的には聖地がいっぱいだ。ユイちゃんちの最寄り駅、夏ばっぱが旗を振った海岸、アキちゃんの最寄り駅……そして、ゴールの久慈駅はあまちゃんでは「北三陸駅」だった。


 久慈駅はいたるところにあまちゃんが! とにかく写真を撮りまくる。


 ちょうどお昼頃だったので、駅チカの喫茶店へ。ここにはアキちゃん役の彼女がよく来るらしい。実際、店内には写真が飾られていた。たまごサンドが人気ということで、それを美味しく頂いた。


 本当に、彼女はこの街で愛されているようだ。あのドラマが、とも言える。街を歩けば歩くほどに『あまちゃん』がそこかしこに残されているのだ。


 アニメやドラマでの地域おこしはどこでもやってることだろう。境港のゲゲゲの鬼太郎とか、大洗のガルパンとか、いろいろとある。地域おこしをしている訳ではないが、スラダンで有名な江ノ電の踏切とか、行ってみたいと思うし。


 でも、久慈は、私の個人の感想ではあるが、どこか熱量が違う気がする。


 年齢層の幅が広いから、というのもあるのかもしれない。NHKの朝ドラの影響力は、特定層に訴えかけるアニメとは質が違うとも考えられる。


 夕方まで久慈の街を歩いて、ロケ地を巡って、ホテルに入り、夕食はお寿司。回らないヤツだ。というか、大将が握って、カウンターの目の前に、とん、と、にぎりを置いてくれるスタイル。

 こんな寿司屋さんって、新人の頃に上司が連れてってくれたお店以来、何年ぶりか!?

 それでいて、特上にぎりが3000円もしないとか、何ソレ? なんでそんなに安いの? あ、海、近いですもんね。そうでした。三陸海岸といえば、寒流と暖流がぶつかる好漁場として教科書で教えられるところですもんね……。


 美味しいお寿司で幸せな夢を見て眠り、翌朝は県北バスを利用して、袖ヶ浜……ではなく、小袖海岸を目指す。

 バスの車窓もこれまた、海が美しい。

 そして、バスの中で突然流れ出す、あまちゃんのオープニングテーマソング♪


 いや、ホント、どこまで行ってもあまちゃんですよ。


 辿り着いた小袖海岸。なんと、この年、初の「北限の海女素潜り実演」の日だったとは! なんという幸運か! いや、違う。驚いたら、こうだ。じぇじぇじぇ!


 ふたりの海女さんが、朝ドラで見たのと同じ場所で、海に入って、潜って、ウニさとってくるワケですよ。最高ですよ。


 あまちゃんロケ地もいろいろと見学。ストーブさんのバイト先だった監視小屋とか、飛び込みの灯台とか、海女さんたちが歌いながら下りてくる坂道とか……。


 そんな時、監視小屋へ向かう坂道の、足元に。


 ふと、「津波ここまで」という文字を発見した。


 どうしても、切り離すことができない、震災の記憶。もちろん、忘れてはならないだろうし、もし、次があったらどうすべきか、常に考えていなければならないことだ。


 観光を楽しみながらも、頭のどこかで震災のことを考える。私は、阪神・淡路の時も、東日本の時も被災した訳ではない。だから、自分自身の中には実感が足りていない。だからこそ、考えなければならないのだろうと思う。


 帰りバスの時間まで小袖海岸で過ごして、バスに揺られて久慈へと戻る。


 今度は三鉄ではなく、JRの久慈駅から、一度、青森県の八戸まで出て、そこから青い森鉄道とIGRいわて銀河鉄道で盛岡へと向かう。


 久慈駅で列車に乗り込み、発車を待っていると、向かいのホームに『TOHOKU EMOTION』が入線してきた。いわゆるレストラン系観光列車だ。JR八戸線は海チカ路線で、車窓の景色は最高なのだ。

 ただ、『TOHOKU EMOTION』を降りたお客の中で、そのまま、私と同じ列車へと乗り込んできた人がいたのは少し残念な気がした。ちょっとくらい、久慈も楽しめばいいのに。お寿司とか、めっちゃ美味しいですよ? あ、レストラン列車で食べたばっかりか……。


 久慈を出発して車窓からあまちゃんロケ地の高校を見て満足し、八戸で乗り換えて盛岡へ。今度は両サイドが山景色という路線だ。新幹線が開通すると、並行在来線をJRが切り離して、その地域で運営するのだが、盛岡まではそういう路線なのだ。でも、今回の切符は、そこも乗れるので安心。18きっぷだと途中下車ができないとか、そういう感じなので。


 盛岡駅に到着して、ついつい、駅ビルの中の本屋に寄り道。ラノベのコーナーで『がんばれ農強聖女』がイチオシされてて、ポップを読んでみると、なんと地元の作家さんだとか。地元愛があふれてていい感じでした。


 ホテルに荷物を預けて、これも一度は経験したいと思っていた「わんこそば」へ。


 気合で100杯ぴったりまで食べてのギブアップ。もうちょっとイケたかもしれないが、無理はダメだ。


 腹ごなしに盛岡の街を歩き、盛岡城址を散策する。でも、心の中では、なんで久慈の特上にぎりよりそばの方が高いんだ!? という叫びでいっぱいでした……。もちろん、おそばでおなかもいっぱいですよ……。




三陸鉄道は今、朝ドラの10周年であまちゃんラッピング車両を運行している……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] わんこそばっていまだに食べたことないです。 拝読して食べなければと強く思いました。 ちょっと行ってきますね。
[良い点] 祝、三陸鉄道初体験。 作者様と「あまちゃん」の結びつきが意外でしたが、それだけに熱のこもりかたがよかったです。 [一言] 更新ありがとうございます。 JRって、国鉄として成立する過程で中…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ