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旅路の徒然 ~おい、相生。その程度で旅人を気取るたぁ、てめぇはまだまだ、蒼い!~  作者: 相生蒼尉


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とりあえず、乗りに行く。それが鉄魂だと思う。

かつて訪れた長崎でのこと。そこでの思い出に、私が思ったこと。旅路にて相生が思ったことを徒然に。鉄旅。歴史旅、島旅。西九州新幹線、長崎、トルコライス、軍艦島、世界遺産、路面電車、中華街、ふるーつ大福。相生の旅エッセイです。




 去年(2022年)の秋に、西九州新幹線が開業した。


 もちろん、乗りたい。だから、行く。それが基本だ。

 残念ながら、長崎~武雄温泉間だけで、まだ博多と直通ではないが、だからこそ、重要だったりする。なぜなら、「リレー」があるから。

 九州新幹線も全線開通前には「リレー」があった。それを逃した記憶がある。全線開通すると「リレー」はなくなってしまうから。


 だから、「リレー」も含めて乗れるのは今しかない。


 しかし、せっかく久しぶりに長崎まで行くのだから、新幹線の往復だけだともったいない。


 ということで、まず、軍艦島クルーズを予約した。前に行った時よりも風化しているかもしれない。見応えがあるのは既に知ってる。

 あとは、トルコライスか。『忘却のサチコ』で、高校時代を思い出した。私はとある大学附属の出身なのだが、高校時代、大学側の校舎にあった学食にトルコライスがあったのだ。そんな懐かしさもあって、トルコライスを食べるつもりだ。

 残り時間は……市電かな。路面電車のある街はとりあえず乗っておきたい。初めてではないので、いつもの中華街は確実に行こう。


 とりあえず博多へ。

 そこで一泊とかはせずに、そのままリレーかもめに乗車する。このリレーかもめの正体は特急「みどり」だ。白ソニックタイプではなく、783系の、ハウステンボスとかと併結する方だ。

 普通は乗る機会もない車両なので、いろいろと楽しい。


 切符もおもしろい。博多→長崎の「新幹線特急券」という表記だが、左側にみどり51号で右側にかもめ51号になっている。リレーかもめという設定だが、あくまでも在来線を走る特急のみどりが「新幹線特急券」になるのも、全線開通前のこの期間だけなんだろう。チケットレスの時代だが、やっぱり切符っていいよね……。


 ただ、座席にある充電用のコンセントが、デザインの関係で差し込めなかった……。こんなこともあるんだ。そういう部分はまっ平にしておいてほしいかもしれない。


 武雄温泉駅では対面乗換が設定されている。向かい側のホームには、西九州新幹線「かもめ」が待ってくれているのだ。

 短時間だが、タブレットで撮影しまくってから、乗り換える。

 乗車口に縦書きで「かもめ」とあった。しかも達筆。座席もおしゃれだ。さすがはJR九州。やるな。和洋折衷なんだろうが、そもそも現代的な部分は「洋」であることが当たり前なのだから、「和」の要素をうまく調「和」させたデザインなんではなかろうか。

 でも、やっぱり、新幹線は新幹線。車内前方、扉の上の文字表示で流れるニュースが気になるところは変わらない。ただ、山陽新幹線だとよく見るハードロック工業の宣伝が流れなかったのはたまたまだろうか。九州だと違うのかもしれない。


 しかし、考えてみると、武雄温泉の乗り換えが便利だからこそ、山陽新幹線からの博多駅での乗り換えがとても気になった。仕方ないんだが、新幹線から在来線ホーム発のリレーかもめまで行くのはかなり遠い。全線開通すればリレーはなくなって新幹線のホームになるんだろうが……。


 そして、あっという間に長崎駅に到着した。流石は新幹線。速い。

 長崎駅。ここも、果ての駅だ。この先は行き止まり。ここからは折り返しだ。

 前に来たのは何年前だろうか。寝台特急「なは・あかつき」に乗るためだけにやってきた記憶がある。駅の近くで角煮まんっぽい何かを食べた。当時は新幹線などなかったので、果ての駅の雰囲気は今よりもずっと味わえた気がする。

 やはり新幹線と在来線が両方あると、駅の雰囲気は大きく変化する。在来線のホームは、かつての行き止まりの雰囲気を残せているのだろうか。

 あの頃はタブレットなんかなくて、デジカメで写真を撮りまくった。寝台特急が消えゆくものだと理解していたから。暗い中、うまく牽引車とヘッドマークを撮影できて、ずっとノパソのデスクトップにしていた。今はそのノパソも沈黙してしまい、廃棄処分になった。


 駅ビルの中にあるお店で、たくさんの種類があるトルコライスの中から、ドライカレー+ナポリタン+サラダの上にオムレツ+トンカツで、どばっとドミグラスソースがかかってる、スタンダードなトルコライスを注文した。

 探せば市内に有名店もあるんだろうが、今はもう遅い時間だ。これで十分、楽しめる。

 意味不明なくらいありえない味のハーモニー。流石はトルコライス。謎だ。

 高校時代の学食のトルコライスは……思い出せないが、確か500円くらいだったと思う。よく考えたら格安なんじゃなかろうか。当時、新校舎に建て替えられたが、新校舎の方の学食にはトルコライスはなかった……と記憶している。もっと安いメニューがあるから、めったにトルコライスは食べなかった。食べておけばよかった。


 ホテルへと歩き、チェックイン。明日に備える。


 翌日は朝から港へと向かう。軍艦島クルーズだ。

 え? これ、全員あの船に乗れるの? というくらい、乗船待ちの行列ができていた。人気のツアーであることは間違いない。


 出港すると、湾内を出て、まずは高島へと向かう。途中、イージス艦なんかも見えて楽しい。

 高島で資料館へ寄り、模型を見た。屋上に弓道場とかあったらしい。なんかすごい。軍艦島へ行くのは2回目なのに初めて知った。


 高島を出港したら次は軍艦島だ。

 他にも軍艦島へ行く観光クルーズはあるので、1隻ずつしか船を寄せられないため、まずはぐるっと軍艦島を一周する。タブレットの充電がかなり急速に減っていく。動画と静止画をどっちも大量に撮影した。

 確かに、軍艦のように見えると思う。

 軍艦島と呼ばれるが、島名は「端島」だ。名前からも推測できるが、本当はすごく小さい島だ。いろいろと埋め立ててこうなったらしい。


 この巨大な廃墟、かつて日本一の人口密度を誇ったという。石炭産業、おそるべし。それと同時に、大きな変革が起きると、こういう風になる、ということも教えてくれる。石炭から石油へと変化したことで、日本一の人口密度から廃墟へ。さらには世界遺産へ。


 ふと、映画の『フラガール』を思い出した。あれも炭鉱の町が変化していく姿を描いていたはずだ。メインで魅せたフラダンスに「再生」のイメージを重ねたのではなかったか。


 波高によっては上陸できない日もある、とアナウンスが流れつつ、接岸作業は進み、無事に上陸した。私はこれまでに二回、乗船して、二回とも上陸した。本当に上陸できない日もあるんだろうか。


 上陸しても移動できる範囲は限られている。解説を聞きながら歩く。以前、ここに来た時と、変わったところと言えば、補強工事か何かが行われていることだろうか。


 ……廃墟を補強。うん。何も言うまい。何もしなければ崩れ去ってしまうんだろうし。


 写真集なんかだと立ち入りできない部分を撮影したものも多い。だからといって、そこに踏み込もうとは思わないが、残された家具なんかもあるはずだ。


 ここに住んでいた訳でもないのに強烈なノスタルジーを感じる。圧倒的な存在感がある廃墟、というどこか矛盾した存在。ただ見ているだけで心のどこかが震える。


 あの、アニメの温泉旅館のモデルになった廃墟にも行ってみるべきだった。きっと、強烈な何かが自分の中に刻まれたに違いない。


 次の船がもうそこまでやってきていた。1隻しか接岸できないので、乗って来た船に戻り、出港する。


 後ろに見える軍艦島がどんどん小さくなっていくが、それでも目をそらすことができない。ずっと、見続けてしまう。ひょっとしたらもう二度とここに来ることはないのかもしれないと感じているからだろうか。

 今は誰一人として住んでいない廃墟に、かつて溢れるように人が住んでいたという。

 本当に人の世は儚い。


 長崎市街へと戻って、市電に乗る。路面電車も楽しいものだ。赤迫とか、崇福寺とか、終着駅を目指した。特に、崇福寺はすごかった。川の上に駅があるのだ。なにそれ、かっこいい。もちろん、写真を撮りまくった。


 長崎駅へ戻る前に、新地中華街へ立ち寄る。ここではいつも、フルーツ大福を食べてしまう。もちろん、今回もお目当てはフルーツ大福だ。たくさん種類があるので選び切れず、3つも食べてしまったではないか。なんということだ。


 長崎駅に戻ってお土産を購入し、またしてもトルコライスを食べた。いや、食べすぎだろ。いい加減にしろよ……。


 もちろん帰りも西九州新幹線だ。じっくりと写真撮影をしてから、かもめに乗った。


 しかし、発車前にトラブル発生。


「あの……ここ、わしの席なんだが?」


 そう言って、おじさんが話しかけてきた。


「はい?」

「いや、ここ、指定席だから、勝手に座られたら困る」

「え? いや、指定席だから座ってるんですけどね?」


 意味が分からない。指定された指定席に座ってお叱りを受けることなど生まれて初めてだ。指定席特急券で自由席に座っても叱られないというのに。混雑時だと恨まれるかもしれないが。指定席が右側で見たい車窓が左側、などという時に、入線前から先頭に並んで乗車し、そうやって自由席に座ることがある。検札する車掌さんに怪訝な顔されるところまでがセットだ。


 閑話休題。


 いや、なんだろう、このおじさんは?


「どいてくれ」

「? いや、なんで?」

「わしの席だ」


 あまりにもしつこいので指定席特急券を見せた。3号車5番D席。禁煙。うん。間違いなく、この座席だ。


「……同じ席だな? JRのミスか?」


 自分の切符を確認したおじさんがそんなことをつぶやいた。


「ちょっと、それ、見せてもらえます?」


 おじさんがすごく嫌そうな顔をしてから、切符を差し出した。そんなに嫌なのか?


 座席指定は3号車5番D席なので確かに同じ。ただし、出発時刻が違う。JRの間違いとかじゃなくて、おじさんの勘違いでしかない。しかも、1本、早いヤツだ。向こうのホームにまだ停車中。あと、1分くらいで発車するだろう。向かいのホームではなく、向こうのホームだ。一度、下に降りて、移動しないと向こうのホームには行けない。間に合わないんじゃない?


「これ、発車時刻が違いますね。あっちに停まってるヤツじゃないですか?」


 A席の方の窓の向こうを指差してあげた。別のところに停まってたら知らない。私のせいじゃないと思う。そもそも間違ってここに来た時点で自業自得だろう。


 慌てたおじさんがキャリーバッグをごろごろ言わせて出て行った。乗り遅れればいいのに、と思った私はやはり性格が悪いんだろう。おじさんが間に合ったかどうかはわからない。自由席も空いてるはずだから乗り遅れても大した問題じゃない。全席指定とか、ないよな? どうだろ? あのおじさんのために調べるつもりとかないが。


 長崎駅を出発し、すぐに武雄温泉で乗り換えだ。帰りのリレーかもめは885系。白ボディに黒い革張りシート。大分方面ではソニックになってることもある。贅沢感は新しい西九州新幹線よりも上かもしれない。


 博多駅で山陽新幹線に乗り換える。やっぱり、在来からの乗り換えは不便だな、と感じた。ただ、新幹線特急券が使用済み乗車記念スタンプなしで手に残ったのはヨシとする。行きの切符はさくらのマークのスタンプ付きなので対比できて二度美味しい。さて、今回の旅はここまで。


 長崎駅で会ったクレームおじさんの運命や、いかに。別に心配はしてない。







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― 新着の感想 ―
[良い点] 懐かしい特急のペットネームぞくぞく! 「みどり」超懐かしい……私の中で九州の特急と言えば「にちりん」「みどり」が2大ビッグネームですよ。 [一言] 更新ありがとうございます。 関東ではリ…
[一言] こ、怖い人だったのか 相生氏? ((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル
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