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昔ながらの温泉街で見たポスターに全身が震えるほど恐怖した

景色のいい鉄旅と、温泉街。アニメの聖地。そして、現実は厳しいなぁ、と思ったこと。旅路にて相生が思ったことを徒然に。身延旅。鉄旅、絶景、温泉、聖地。相生の旅エッセイです。




 昨夜は夜に到着したので、何も見えなかったが、朝、チェックアウトして駅に向かう前、道路の先に富士山が見えた。両脇にビルがあるので、残念な感じ。

 なら、富士駅の入口は高さがあるから……そう思ってそこから見てみたが、やっぱりビルがどうしても富士山を遮ってしまう。富士駅……その名を冠しているものの、景色は残念賞……。


 今回の旅の目的は、身延線。

 もちろん、聖地も無関係ではないし、そこそこ興味もあるんだが、それよりも、ここに来たかったのは、去年の7月に、悔しい思いをしたから。


 去年の7月は長期旅行をした。半月ほど。その時に利用したのが、JR東日本・北海道パスというお得な切符。1週間、JR東日本とJR北海道が乗り放題になるのだ。ただし、特急とかはダメ。

 私は鈍行で旅をするのが平気なタイプなので、こういう切符は大歓迎。

 それで、この切符を2枚ほど利用して、仙台をスタート地点として、平泉・久慈(三鉄は別料金)・盛岡・角館・横手・弘前・男鹿・秋田・酒田(飛島)・新潟・佐渡島(もちろんフェリーは別料金)・草津・大宮・土合・松本・下田(伊豆急行は別料金)・熱海・宇都宮・日光・水戸・大洗(鹿島臨海鉄道は別料金)・神保町(地下鉄なんかは別料金)などなど、各地を半月ほど旅して回った。


 その旅で、松本~熱海間の移動の時に、JR東海の身延線はJR東日本・北海道パスでは乗れないので利用できなかったのだ。中央線で都心へ戻って、横浜へ出てから東海道本線で熱海へ向かった。


 乗ることができなかった身延線への思いが、残っていた。


 今回、たまたま、青春18きっぷ(知らない方は申し訳ありません。JR全線が基本的に乗り放題な感じの切符です。特急とかはダメ。3セクも、一部を除いてダメで、乗れる3セクも、途中下車はできない感じのやつです)を2日分、利用する予定ができてしまって、残り3日分(青春18きっぷは5日間も使えるのだ!)をどう使うか、考えた結果の、身延線攻略なのです。ぐふふ……。


 もちろん、アニメの聖地、ということもあります。

 それだけでなく、まず、身延線はですね、最高の富士見な路線なのです。富士山がめっちゃ見えます。いい感じなんです。

 さらには富士川に沿って走るので、山と渓谷な感じが最高の車窓なんですよね。


 ということで、前日にほぼまる一日かけて、富士駅までやってきての駅チカホテル宿泊です。


 そして、翌朝の冒頭となる訳なのだ。うん。


 旅行2日目となる本日は身延線。富士から甲府まで。


 さっそく、朝の身延線に乗りました。2両編成です。すごい。ローカル線なのに2両だよ!?

 ただ、4人掛けの向かい合わせシートで、背もたれをがっちゃんできないタイプは、そこに座ると他の乗客が遠慮して座ってくれないので、こっちは気後れしまくりになります。はい。


 申し訳ないと思いつつも、車窓の富士山を眺め続ける訳です。

 スタートは進行方向から見て右の車窓。途中で大きくカーブして一度左サイドに富士山が入るんだが、すぐ右サイドに戻る。サイドチェンジがサッカーみたい。

 写真を撮るタイミングは、民家とかも多いのでなかなか難しいです。

 富士宮、西富士宮を過ぎたら、今度は後方で左の車窓となりますね。まあ、その頃には高校生とかも降りて乗客は少ないので移動もできるんですが。


 ……観光旅行なら浅間神社に行けよ? はいはい。そうかもしれません。それは、明日の予定です。だって、帰りも身延線を使って東海道本線に出て、夕方の羽田を目指しますからね。もちろん飛行機は最終便で、マイルの利用だからお金は300円か400円くらいで済みます。


 とりあえず、沼久保までの間に、いい写真が撮れました。やっぱり富士山ってすげぇ。

 このへんの人は、毎日、あれを見て暮らしてるんですよね……。


 芝川に着く頃にはもう富士山は見えません。

 でも、ご安心を。

 今度は富士川の景色が広がります。

 あの、川と山と、そこに人工物が混ざってる感じが、最高です。

 身延線から見ると、富士川を挟んで道路があるんだが、あの、トンネルのような、トンネルとはちょっと違うアレ、が、すっごくいい感じ。

 崖を掘り進めてるからトンネルっぽいけど、外側は柱っぽいのが何本も連続して、外が途切れ途切れに見える感じの、何ていうのか、知らないんだが、とってもいい感じ。

 あとは、やっぱり、富士川を渡る橋とかね、これも、もう、自然の中の人工物としては、いいんですよね。車が空を飛んでるように思えちゃうんです。


 そんな景色を堪能して、到着したのは身延。もちろん、降りました。


 さて、駅舎内にいろいろなポスターがあるんだけど、いっぱいゆるキャン。防犯ポスターまでゆるキャンだった。

 駅を出たら、まず目に入ったのは、等身大(たぶん等身大ではないが)のリンちゃんののぼり。

 街並みを歩けば、恵那ちゃんの等身大(繰り返すけどたぶん等身大ではない)ののぼりも発見。でも、この二人だけだった。残念。

 みのぶまんじゅうはお店が閉まってたので、買えず。川沿いのベンチは座った。

 それから、一度、橋を渡って、富士川の景色を堪能。うんうん。いいね。

 でも、川の看板、なんで裏側は平仮名なんだ? いくらなんでも富士は読めるだろうに?


 およそ1時間くらいのお散歩で駅に戻って、次の甲府行きに乗車。


 それから、下部温泉で降りた。


 まだ、ホテルの日帰り入浴の時間まではゆとりがある。

 とりあえず、足湯へ。

 まあ、ここも実は聖地。ゆるじゃなくて部屋だけどな!


 それよりも、ここの足湯、ノートがあった。旅人が一言、書き残していく感じのヤツ。

 昔、石垣島のソーキそばのお店にあったノートに、毎年のように何かを書いて、改めて訪れては自分の書き残したメッセージを確認してたなぁ、とか、そんなことを思い出したり。


 足湯を出たら、舗装された山道を登って温泉街を目指す。なかなかいい運動になる。


 よくある政党のポスターが貼ってあった。


『日本を、前へ。』

『決断と実行。暮らしを守る。』


 うん。

 国政には大事なことだよな。


 そういうポスターが温泉街の最初らへんにあったんだけど……。


 温泉街の建物はというと。

 立ち入れないようにロープが張られた前庭が荒れ放題で廃墟同然の建物とか。

 看板を下ろしてしまって、名前がなくなった建物とか。

 入口のドアのガラスに『当面の間、休業致します』という貼紙がある建物とか。

 正面入り口の自動ドアのガラスの向こうに、山積みになった郵便物とか配達物が崩れ落ちてるのが見える建物とか。


 そういう感じ。


 営業してるホテルもあったから、中に入って、日帰り入浴ができるかどうか、聞いてみた。


「今は、そういうの、やってないんですよ。すみませんねぇ」


 とまあ、そうなってました。


 温泉地が温泉で、日帰り入浴をお客にさせるだけ、なのに。それが、利益を出せないレベルになってるんだろうな、と。


 折り返して、坂道を下りながら、ふと、政党のポスターが目に入った。


『日本を、前へ。』

『決断と実行。暮らしを守る。』


 ふと。

 日本は、前に進めるのかな?

 決断と実行。ここの温泉地の人たちは、どんな決断を迫られ、何を実行したのか?


 そんなことが頭を過って、ものすごく怖くなってしまった。


 現実って厳しいな、と。

 昔からの温泉地で、しかもアニメの聖地とか言われても、コロナ禍の前には手も足も出ず、という感じなのかもしれない。


 坂を下りて駅前に戻り、お土産屋さんで「かくし最中」を買って、ベンチにあえて座って食べた。

 お土産屋さんのおかみさんに聞いたら、アニメの影響でお客さんはすごく増えた、とのこと。

 それでも、ここの温泉街の、半分くらいは休業や廃業になってるらしい。


 そういや、そういう場所の声に耳を傾けて、扉に鍵をかけなきゃいけないんだったか?


 なんてことを思いながら、野クルの3人がいる自動販売機の写真を撮ってから、日帰り入浴の営業もやってるホテルで温泉を堪能した。


 ゆるキャンの映画とか、ブルーレイ発売とかのポスター見ると、なんか、平和でほっとするよね。


 お昼にはもう一度、身延線に乗って、甲府へ向かった。


 他の聖地? いや、そこまでガチな聖地観光ではないんで。

 あと、本当は本栖湖には行きたかったが、あそこは鉄旅では難しいし、私にとってはゆるキャンの聖地というより、帯ギュの河合大先生のモンキーターンの聖地ですから! 今は、競艇選手の卵は九州で訓練するらしいけどね……。


 甲府ではほうとうと鳥のもつ煮を食べてお腹がいっぱいになり、ホテルにチェックインしたら、うとうととしてそのまま夕方まで寝てしまったのでした。


 明日も身延線。今度は西富士宮で降りて、富士宮で乗る予定。


 そんな旅の、徒然なお話でした。








※短編で公開したエッセイを長編にまとめています。

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