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ぼくと妖精とときどき悪夢  作者: 和鏥
現状打破!
7/18

「やったー! 夢の世界だ」


 目を開けてぼくは周囲を見てそうさけんだ。

 ピンク色の空。

 地面にささった沢山のお菓子!


「ようこそ。いらっしゃい」


 ピンク色の空の下、出迎えてくれたのはマリだけだった。


「あれ、シャロは?」

「シャロはあっち。やっぱりアナタは、最初の予定通り、夢の世界にいるべきよ」


 マリの言い方がなんだか怖くて、ぼくは思わず後ずさりをする。


「だって、そうでしょう? シャロもやる気を失くしたし……」


 振り返ると、シャロはチョコで出来たベンチに寝転んだまま動かない。

 シャロの顔にかぶさっていた新聞紙を、ぼくは乱暴に取り払う。シャロは浮かない顔で、ぼくを少しだけ見るとすぐに目をそらしてしまった。


「シャロ! どうしたの?」

「君、”どうでもいい”って思っただろ?」


 シャロの答えにぼくは一瞬だけ冷や汗をかいた。

 ちょうど、今日考えたことだ。

 何もかもイヤになって、どうでもいいと思った。


「”本当のことを知らなくてもいい”って思ったのならば、もう私の出番じゃない」


 たしか、シャロは、ぼくの探求心に呼ばれてやって来たんだ。


「シャロ。ねえ、シャロ。しっかりしてよ。ぼく、シャロの言ってた言葉の意味を調べたんだよ」

「ムダなロウリョクだったね」


 シャロは冷たくそう言った。

 昨日とはまるで全然違う、別人になってしまったようだ。


「意味なくないよ。ぼくはシャロとも話をしたかったし。だって、ぼくは……そう。現状打破したいから」


 現状打破。じいちゃんが朝言っていた言葉。今の状況を変えるってことだ。


「本当に?」


 ぼくの言葉にシャロはようやく起き上がった。


「本当の本当! ぼくだけじゃ分からないんだ。だからイヤになっちゃったんだけど、シャロとマリがいたら解決できるんだよね?」

「それでは意味がない。君が主役で、私たちが助手でなければならないのだから」

「ぼくの問題だから?」


 すると、シャロはにっこり笑って頷いた。


「では、事件についてコウサツしよう」

「事件?」


 驚くぼくに助け船を出したのはマリだった。


「アナタを悩ますことだもの。……それにしても、シャロをもう一度やる気にさせるなんて珍しいわ。せっかく、この夢に閉じ込める予定だったのに」


 苦笑するマリにぼくは驚いてしまう。

 マリはぼくを閉じ込めるつもりだったんだ。


「そんなことより、犯人はなぜ友人だった君にイジワルをするのか。その原因を探らなければならないね」


 そんなマリを気にせずシャロは話を続ける。


「まずは情報を集めないといけないよ」


 シャロはそう言ってぼくを指さした。


「大貴のスキキライは分かるよ」

「それも必要だけれど、今は関係がないかな。彼がイジワルくなりだしたのはいつ頃?」


 シャロは大真面目に言うので、ぼくは真剣に思い出す。


「今年。四年生になってから」

「三年生の時は?」

「普通だった」


 と、ぼくは答える。本当に三年生までは、フツウだったんだ。


「どうして彼がイジワルになったのか、君に心当たりは? ケンカをしたかい?」

「無い」


シャロは大きく頷いた。


「いかなるキョゲンも私の前では暴かれる。だから、ケンカが原因では無いというのも、君が原因でもないというのも君視点からすれば”事実”だ。では、彼の周りで何かあったかい? 例えば、ご両親がケンカしたとか」

「特に……。あ、でもトモキ君が。大貴のお兄ちゃんが中学生になった。オジュケンしたんだって」

「ほう? トモキ君。その子はどんな子かな」


 まるでゲームの悪役のようにシャロの赤い目が光った。


「優しくて頭がすごく良いんだ。女子にも人気」


 ふんふん。と、シャロは面白そうに話を聞いてくれる。

 じいちゃんやばあちゃん、お母さんもシャロみたいに話を聞いてくれたらいいのになあと、ぼくは思いながらシャロを見ていた。


「君はどうやらなんとなくだけれど、原因が分かっているんじゃないのかな? さて、相手を更に知るには情報を集めなければね。基本は、聞き込みと――……」


 ぴぴぴ!

 目覚まし時計の音でぼくはまた目が覚めてしまった。

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