3
四つの目がぼくを見るので、少し言葉に詰まった。だけど、ぼくは一つ一つ言葉にする。お母さんにも、じいちゃんにもばあちゃんにも言えない事がなぜだか喉から、口からあふれてしまう。
「大貴っていう友達がいたんだ。去年まで一緒に遊んでたんだ。なのに、急にぼくらのことをイジメるようになったんだ。大貴はそんなことするヤツじゃない」
そこまでぼくは言って、息を吸う。
「って、本当は思いたいんだ。友達だと思ってたんだよ。なんでああいうコトするのか分からないんだ。だから、ぼくはどうしたらいいんだろう。って、思ってて。イジめられるのもイヤだ、理由もわからない。でも、どうすればいいのか分からなくて――……それで学校に行きたくないんだ」
今まであった事を二人に説明しながら、ぼくはそう考える。
途中から言いたいことがこんがらがってしまった。けれど、二人は黙って聞いてくれた。ぼくの話をさえぎって怒る先生たちとは大違いだ。
「……いつもみたいに縄張り争いをする必要はなさそうね。シャロ」
「ああ。真実を知るには……今回は特に表現を柔らかくして提示しなければいけないからね。マリ。言いたくはないけれど、君の力が必要だ」
ぼくが言い終えて少したったあと、それまでずっと黙っていてくれたマリとシャロは優しい口調でそう言った。
どうやら、もうケンカをするつもりはないらしい。それどころかなにか協力してくれるようにさえ感じる。
「それってどういうコト?」
「ワタクシたちは、アナタの味方ということ。永遠に眠らせないし、アナタを悩ませる問題を解決するの」
「解決? どうやって?」
「ワタクシたちは夢にいる妖精のような存在だから――……」
マリの言葉を遮るようにシャロが何度か咳払いをした。それを、マリが睨んで黙らせると再び話を始める。
「そして、ワタクシたちはニンゲンの”悩み”というものがとっても好きなの」
「人の悩みが好きなんて――……」
ヘンなの。
と、言おうとしてやめた。
これじゃあ、あの女子グループと一緒になっちゃう。
「えらい、えらい」
見透かしたかのようにマリが言った。隣にいるシャロも黙っているようだけれど、そう言いたげな顔をしていた。
「別に。アイツらと同じになりたくないだけ。学校は好きなんだ。だけど、アイツらが嫌なことをするんだ」
「アイツらとは?」
と、シャロが聞くのでぼくは答える。
「クラスの女子。大貴のヤツがきっとウソを言ってるんだ。どうして、そんなことするんだろう」
嗚呼。と、シャロは言った。
「それなら簡単さ――……」
ピピピピピ!!!
シャロが言う前に目覚まし時計の音を聞いてぼくは目が覚めてしまった。