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「これ、夢?」
目を開けてすぐにぼくは言う。
「あら、偉いわ。よく夢だと分かったわね」
ぼくのすぐ隣に立っているピンクの髪の女の人が言う。だけど、ぼくは驚かない。
「だって、分かるよ」
そう答えて、ぼくは空を見上げる。
「天気はピンクだし、そこら中にアメがあるし」
普通、空は青とかオレンジなのに、頭の上に広がっているのはピンク色ばかりだ。しかも、地面には棒つきのアメやカラフルなグミが刺さっている。
「アナタの夢を借りて、ワタクシがこの場所を創ったの。飴は嫌いかしら?」
「別にキライじゃないけど。それより、あなたはダレ?」
ぼくがそう言うと、ピンク髪の女の人は微笑んだ。
髪型も着てる服もあまり見ないものなのに、すごくカワイイ人だと思うのはやっぱり笑顔がカワイイからだ。なのに、大人っぽくてクラスの女子とは全然違う。
「ワタクシはマリ。アナタに呼ばれて来たの」
マリがそう言うので、ぼくは今度こそおどろいた。
「ええ。ワタクシたち人の願望に弱いの。つい叶えたくなっちゃう。この世界はどう? 気に入ってくれたかしら」
マリはそう言って、ニッコリ笑う。やっぱりすごくカワイイ。
「「明日が来ないといいな」って思ったでしょう? だからココに招待したの。ココでならアナタはツライ思いをしないもの」
「この……ぼくの、夢の世界に?」
ぼくの疑問にマリはニッコリしてうなずいた。
「そうよ。ココでのアナタはヒーローだし、誰もアナタを怒らないわ。ゲームをしても、お菓子を食べても、夜更かしをしても誰も怒らないの」
「それって……、すごくイイね」
砂場はポテトチップス、ブランコはグミとクッキーで出来ている。あそこのベンチなんかチョコレートだ。
「アナタの口の中に入るまで、チョコレートも、飴も溶けない。夢の中だからお洋服が汚れることも、虫歯になることも無いわ」
「なにそれ、サイコーじゃん」
ぼくは、嬉しくなって言う。最近、人の悪い顔しか見ていないから、マリが嬉しそうにしているのが余計に嬉しい。
「この夢は気に入った?」
「うん。すごーくね。でも、お菓子ばっかりだけど、他に……ゲームはあるの?」
「勿論よ。あそこにも、ほら、あそこにもある」
マリが指さす方向にはテレビが何台も置かれてあって、ぼくがやりたかったゲームが映っている。
「ワタクシはアナタの良いオトモダチだもの。ツライことから永遠に逃がして、離してあげる」
「けれど、君のご家族は悲しむだろうね」
知らない男の人の声が突然聞こえた。
ぼくがおどろいて振り返ると、そこには背の高い男の人がいる。
マリと同じ、ぼくが産まれてきて一度も見たことのない人。
晴れているのに赤いカサを持って、どこか上機嫌に歩いている。その様子を見て、ぼくは怖いと思い反射的に後ずさった。