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ぼくと妖精とときどき悪夢  作者: 和鏥
運命の三者面談!
15/18

 今日が、大貴と陸君の三者面談の日だ。

 ぼくは陸君を止めるため、静かにだけど出来るだけ早く教室へ走って行った。


「お母さんは五分前に来るって」


 まだ順番じゃないのに、廊下にはすでに陸君がいる。

 陸君はポケットに手をつっこんだまま言うので、おそらく作戦を実行するつもりなんだろう。


「陸君。やっぱりやめよう」


 ぼくがそう言うと、陸君はギロリとぼくを睨んだ。


「どうして?」

「大貴は、何か悩んでるんだよ」

「何を悩んでるの?」

「……分からないけど。でも、そんな気がするんだ」

「だとしても、友達だったボクたちをイジメていいってコトにはならない」


 教室の中にいる三人に聞かれないよう、ぼくらは小声で話をする。


「そうかもしれないけど……」

「じゃあ、和人君はこのままでいいの? ぼくはイヤだよ。いつだってこんなにコソコソ――……」

「なんだこの点数は!」


 教室から聞こえた男の人の声に、ぼくらは飛び上がった。

 なんだこれ、クラの舞台で聞こえた鬼の声にそっくりじゃないか。


「トモキはこんな点数をとったことなかったぞ! 何のために塾へ行かせたと思ってるんだ!」


 多分、これは大貴のお父さんの声だ。

 ぼくらは、お互い顔を見合わせるだけで動くことも出来ない。


 シン……。


 と、静まり返った教室から、大貴の「ごめんなさい」と言う小さな声が聞こえた。

 ぼくらは扉にくっつくようにして中の話を盗み聞く。


「大貴君のお父さん。大貴くん、成績は良くなりましたよ。前まで平均以下でしたけど、今はもう――……」

「その分、授業態度が悪くなったんですよね? 石田さん家から聞きましたよ」


 ぼくは、大貴が「ブス!」と言った女の子、石田奈々ちゃんを思い出す。


「それに、田沼さんと相原さんのお子さんにも――……」

(ぼくらのことだ!)


 ぼくと陸君は驚いて顔を見合わせる。


「これで、もしイジメだと騒がれてみろ。トモキの将来に傷がつくだろ。勉強もできないくせに、本当にろくな事をしないんだから! お父さんは恥ずかしいよ。お母さんにどう報告しようか……」


 ここはクラがいる夢の世界じゃないのに、あまりにもオオゲサに大貴のお父さんは嘆く。がっかりした溜め息もぼくらには聞こえた。

 それを聞いていたらぼくは、だんだんと腹が立ってきた。

 大貴はイジワルかもしれないけれど、それでも友達だったのには変わらない。

 大貴は大貴なりに頑張っていたはずだ。

 そうじゃなかったらあんな怖い夢を見ない。

 

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