海と竜の贈り物
セレスティアナ視点です。
サロンにてお酒やつまみやジュースなどを楽しんでいる。
まだ皆、新年のお祭り気分。
そんな中、ギルバートが水を向ける。
「エテルニテの転移陣が完成したので、未だ移住希望の者は受け入れて一部の建物の復旧作業をして貰う事にした」
「竜の牧場……放牧地の方はどうなりますか?」
私は広々とした土地を残しておいて欲しいので一応質問しておく。
「それも面積は大きく取るし、竜騎士訓練施設も新規であそこに置く事になった」
「なるほど。島への移住だから今回は特別に平民も転移陣を使って移動をさせるんですね?」
「そういう事だ」
「人が入る前にいくつかカマド……炊事場、簡単な建物を土魔法で作りに行きますよ。
いずれガラス工房も欲しいので場所の下見も兼ねて」
『ティアはそれと〜カツオが気になるんでしょ』
私の膝の上にいた可愛いエゾモモンガのぬいぐるみに入ったリナルドは、ふいに発言した。
「うっ!! リナルド、それはそうなのだけど」
「魚か? まだ漁師の船などは用意していないぞ」
ギルバートもエテルニテの地図を見ながら現実を突きつけて来る。
「わ、分かっています。
でもひとまず移住者用の共同カマドなどはあった方が良いでしょう?
建物作る人達も食事の度にいちいち石を囲んで簡易カマドを使うより楽なはずですし」
「そうだな、有れば助かるだろう。しかし無理しない程度で良いぞ」
張り切りすぎてまた倒れるなよ? と言う眼差しを向けて来るギルバート。
「三階建てくらいの箱っぽいアパートと長屋っぽいのはどっちが良いでしょうか? 簡単なのは長屋ですが」
「万が一の事だが、津波などが来たら高い位置に逃げられるように三階建てがいくつか有ると良いのでは?
竜は飛べるけど一般の人間は飛べないし」
さっきまで炭酸オレンジジュースを飲んだりカナッペをつまみつつ、静かに聞いていたアシェルさんが意見を出した。
「ああ、なるほど、津波……。あそこ、起きた事が有るんですか?」
「だいぶん昔にあったよ」
流石エルフ、長生きしている分、古い情報も持っている。
「そうですか……。避難所兼、公民館のような物も作らないとですね」
「公民館とは?」
おっと、ギルバートには聞き馴染みの無い言葉だったかな。
「地域の人が集まって講習会や集会が出来る所って感じでしょうか。
災害など、緊急時には避難所になります」
「そうか、分かった」
*
後日、私達はまたもエテルニテに向かった。
海岸近くで竜達を放す。
放牧?
本来、今は冬とはいえ、この島は暖かい。
今も体感で20℃くらいある。
「よし、お前達、せっかく広いし、自由にのびのびして良いぞ!
好きに飛び回れ!!」
ギルバートの言葉で鞍を外されたメイジーとアシェルさんの白い竜が先陣をきって海へ向かった。
他の竜達も追った。
「え!? そっち!? 草原の方じゃないのか?」
海に向かって飛んで行ったワイバーンは何とザブンと海に潜った。
「え!? ワイバーンって水陸両用なんですか!?」
「知らん、水浴びとも違う、あんなの初めて見たぞ」
「私もです」
ギルバートも竜騎士の先輩三人も驚いている。
しばらくして、浮上してきたワイバーン達が、お魚を咥えてたり、足の爪でガッチリ捕まえて戻って来た。
「あれ? お食事タイム?」
「いや、おかしいな、緑のワイバーンは草食のはず。メイジーは何故か白いけど」
ボトッ!!
私の目の前に竜達の口や足から50センチ位のお魚が次々と落とされた。
「あれ!? このお魚、カツオ!?」
「キュイイ!!」
メイジーが鳴いた。
『ティアにくれるんだってさ』
「まあ──! なんて良い子達なんでしょう! ありがとう!
潮を被ったので後で泉の水で体の塩を流しましょうね」
鵜飼になった気分だわ。
まさかワイバーンがお魚を捕って来てくれるとは!
「一旦お魚を締めて内臓などを出してインベントリに入れてから、泉に寄って、それからカマド作りなどに行きましょう」
私がそう提案すると、騎士達が制止をかけて来た。
「その魚を捌く作業は我々がやります」
「え、良いの? 出来るの?」
「はい。
お召し物が汚れてしまいますから、我らにお任せ下さい」
ジェントルマン!!
優しい!
騎士の皆様、いつの間にか肉だけじゃなくてお魚も捌けるようになっていたんだ、えらいな。
その後は泉でワイバーンを綺麗にしたり、共用炊事場、カマドを作ったり、複雑な形は大変なので四角い形をしている三階建ての建物を一つだけ作ったりした。
流石に三階建てを一度に沢山は作れないので、まずは一棟。
少しずつ建物を増やして行こう。
無理はいけないものね。
* * *
ほどなくしてギルバートは移民希望の者達を招いた。
まだ人数分の建物は足りない。
なので移住者達に自分の家を作って貰うのだけど、それまではテントを貸し出して凌いで貰う。
ここは冬でも気温が20℃くらいあるので寒さに震える事も無いと思う。
私もたまに食事の差し入れなどをしながら、私も少しずつ建物を増やすのを手伝っている。
そうそう、カツオだけど、鰹節工場をいずれ作りたいと思う。
工場を作るまでは、とりあえずタタキにして食卓にお出ししようと思う。




