御宝クジ
前回当選番号と書きましたが、図柄スタンプのクジに変更しました。
申し訳ありません。
セレスティアナ視点です。
作中は新年です。
「わあー、日が昇っていきます!」
「新年の朝陽を浴びるのは清々しい気分になりますね」
「ええ。
私の前世の故郷でも初日の出を見ると縁起が良いと言うか、年神様にその年の豊作や幸せを祈る風習があったんです」
「リナ嬢、と、お呼びすれば良いのでしょうか?」
「ええと、呼び捨てで構いません、私はティア様の下僕で、メイドみたいな物ですし。
前世は元から庶民、平民ですし」
「……では、リナさん、そろそろお腹空きませんか?」
「えっと、少し……」
「干し肉とチョコレートがあります、どちらが良いですか?」
「え、チョコ……」
「ははは、そうですよね。はい、どうぞ」
「わあ、本当にチョコあるんですね! ……凄い、美味しい!」
画面の中のリナは美味しそうに包み紙を開いてチョコを食べていて、ラインハート卿は干し肉を齧っていた。 ワイルド。
「チョコはライリーでしか見ませんよ、他で見たらここから買い付けた物だと思います」
「私、ライリーに来れて良かったです」
* *
「……やっぱりデートでは」
朝餐のお供にクリスタルの録画映像を最後まで見た、私の素直な感想だった。
「違いますよ! 親切な騎士様が竜に乗せてくれて、一緒に初日の出を見て、チョコ食べただけですよ!」
リナは照れながらそう主張するも……
「一緒の竜に乗ったじゃないですか」
「私が一人で乗れる訳ないですから、それは仕方ないですよね!」
「そうかな……」
「そうですよ!」
そうか、でも良い雰囲気だったな。
「ともかく、良い物を見させて貰ったわ、ありがとう」
「初日の出は縁起物ですので。
ラインハート卿もティアお嬢様のために映像を撮りに連れて行ってくれたんだと思います」
「ティア、あまり深く突っ込んでやるなよ」
「そうですよ、ティア」
「はい、はい、分かりました」
お父様とお母様にもたしなめられたし、とりあえず引き下がる。
静かに映像を見ているギルバートはローストビーフをつまみつつ、シードルを飲んでいて、機嫌は良さそうだった。
「さて、カーター、裏庭の立て看板の用意は出来ているかしら?」
「はい、お嬢様」
私は手彫りでスタンプを使ってクジを作った。
スタンプを押した紙を封筒に入れて中身が見えない状態で売ってもらったのだ。
クジは完売した。
「御宝クジの当選図柄をこの紙に載せたから、立て看板に貼り出して来てくれる?」
「はい」
インベントリから出した紙を手渡し、私が執事のカーターに指示すると、「ボクも行く!」と、ウィルがせがんだので、執事に弟も連れて行って貰った。
「一等は何の絵柄でいくらなんだ?」
「竜と槍と花の絵柄が順に並んでる人のクジが一等です。
金貨10枚と銀貨10枚と、銅貨30枚と大粒のエメラルド1個とハイポーション。
他、砂糖、胡椒、塩、洋服仕立て券2枚と豚一頭分の肉とコスメ一式です。
クジ一枚が銅貨3枚ですし、結構良いと思います。
まずエメラルドはギルバート様が良い物を出して下さってますから」
「まあ、ありがとうございます、ギルバート様」
「娘の思い付きに付き合っていただいて、ありがとうございます」
「いやいや、城内の者も喜ぶだろうしな」
「本当にありがとうございます、皆喜ぶと思います」
お母様とお父様もギルバートに御礼を言ってくれた。
「二位が同じ絵柄で並びが違う物で……銀貨5枚と、ワイン、お米、小麦粉、砂糖、チョコ、塊肉とコスメ、衛生用品。
三位が竜の絵柄がとにかく入っていたら、ワインと砂糖とお米とシャンプーリンス。
槍の絵柄が入っていたら高級牛肉とワイン。剣の絵柄が入っていたら羊肉とワイン」
「へえ、わりと種類があるな」
「それと、とにかく花が入っていればシャンプーとリンスのセットと石鹸と布地のセットどちらかが貰えます」
「ハズレは有るのか?」
ギルバートはそこが気になるのか。
「一応ハズレに当たるのが、パンの絵柄でパン3個と薬草です」
「ライリーのパンは美味しいからハズレでも別に悪くはないな」
「大損はさせたくないので」
「商品の受け取りはどこでするんだ?」
「城内の売店で受け付けています」
「そうか、後で看板の近くか売店を見てみるか」
私はコクリと頷いた。
*
しばらくして朝餐の場から移動して、クジの当選図柄発表の立て看板の側の様子を裏庭までギルバートと見に行った。
看板の側は人だかりができていて、わいわいと賑わっていた。
「槍だー! 牛肉とワイン!」
「私は羊肉とワインが当たったわ!」
「流石俺の嫁! でかした!」
「お花だから、シャンプーとリンスか石鹸と布地セットのどちらか……えーと、どうしよう、悩む」
「布地の種類や大きさを見て決めたら? 新しい服が作れるならそっちの方が良くない?」
「そうね! 娘に新しい服を作ってあげたいし」
「布地は一巻き分有るのでお洋服は作れるわよ」
「お嬢様!」
「布地の柄や色も色々あるけど、先着順で選べるから好きなのを早めに売店に行って選ぶと良いわ」
「ありがとうございます!」
母親らしき者は礼を言って走って行った。
「あれ!? これ、図柄の順番違い、俺のこれ、二位じゃないか!?」
「わあ、凄い!! おめでとう! チョコかお米かお肉、ちょっと分けてくれない?」
「ええ!?」
「良いじゃない、幸運は分け合うものよ、デートしてあげるから」
「ま、まあしょうがないなぁ〜」
二位の執事の男性がメイドの色仕掛けに落ちた!
これが縁で仲が深まったりするのかしら、お幸せに……。
「……まだ一位は出ていないのか?」
「明け方まで飲んで寝てるなら、午後に見に来る人もいるのでは?」
「なるほどな」
城内の皆が楽しそうにしている姿を見て、良い新年の始まりに、私は満足した。
「さて、ギルバート様、先程朝餐の場では言い忘れていましたが、実は宝の地図を神様から頂いたので、ぜひダンジョンに連れて行って欲しいのですが」
「は!?」
ギルバートはびっくりした状態でフリーズした。




