年末年始と見逃したイベント。
セレスティアナ視点。
作中冬です。
ユリナの呼び方を愛称でリナと呼ぶ事にしました。
「え? ギルバート様の護衛騎士達、五人が?」
「ああ、冬の間に竜騎士の資格試験を受けに行くことになった」
「皆様、やはり空路が楽なのにお気付きになったのね」
「楽と言うか、俺が急ぐ時は空中を行くので自分達も竜がいないとやはり辛いと思ったらしい。
騎士としての基準は既に十分満たしているので、竜騎士用の試練と試験を乗り越えたらすぐ受かるだろう」
「そうなんですか。
竜の谷からエテルニテに新しくツガイ用の雄も誘導して来るチャンスでもありそうですね」
「ツガイ……」
「メイジーちゃんもいつか卵……子供を産むのでは?」
「竜騎士の竜は引退しない限りは繁殖行為は通常しない」
「え? まだ若いうちに子供作った方が安全では?」
「メイジーが妊娠したら……乗れなくなってしまうし」
「その時はいざとなったら私の翼猫のアスランに一緒に乗ればいいでしょう。
騎竜にも産休あげましょうよ。
私の霊獣は増え方が違うのでツガイ探しも要らないようですし」
「霊獣はどうやって増えるのだ?」
『霊獣の誕生は神の血と意志だよ〜〜。神の血で霊獣の卵を作る』
「リナルド! また突然出て来たわね」
『さっきからそこのカゴの中で寝てたんだけど今起きたよ』
窓際のカゴの中で寝てたらしい。
「……俺の高貴なメイジーにそんじょそこらの雄のワイバーンがツガイになれるとも思えないが……」
ギルバートがボソリと呟いた。
「……なんです? 独占欲ですか? うちの可愛い娘は渡したくないみたいな感覚なんです?」
「べ、別に、俺のメイジーは何故か白くて綺麗で何か通常と違う気がしたんだ」
「確かに白くて神秘的ではありますが人間にもアルビノとかいますし」
「まあ仮に雄のワイバーンをエテルニテに呼んだとして!
俺のメイジーがそんな簡単になびくとも思えないから好きにするといい」
やはりこの人……焼きもちを。
飼い猫だって飼い主よりたまに来るだけのお客さんに懐くと、なんでだよ! ってなるらしいし。
複雑なのね。
* *
時は流れ、年末となった。前世で言えば大晦日。
「毎回後ろに乗せて貰うのが申し訳無かったので、我々竜騎士になってまいりました!」
「よく戻った! 皆、おめでとう」
「「ありがとうございます!!」」
ギルバートの五人の護衛騎士達が試練と試験を合格して戻って来た。
と言っても、まだ騎竜は持ってない。
春に谷に行って自分の竜を探すイベントが残っている。
運転免許は取ったけどまだ車は持ってない。てな状態と同じだ。
「明日の新年のお祝い時に重なって、竜騎士試験合格おめでたいわね」
「セレスティアナ様、留守中、ご不便はありませんでしたか?」
「大丈夫よ。
冬だし、春に結婚式も控えてるから、よっぽどの事が無いと遠出もしないし、せいぜい温泉でゆっくりして、刺繍などをしてたくらいよ」
エステに通う代わりに、温泉で磨きをかけているところよ。
「そうですか。問題がなくて良かったです」
「お土産の温泉卵食べるかしら?」
「「はい!!」」
「ちょうど小腹が空いていました」
「おやつ、おやつ!!」
気がついたら弟まで騎士達を迎えに来てた。
「あら、ウィルまで、温泉卵が食べたいの?」
「はい!」
「いいわよ、皆、手を洗って来てね」
「「はい!」」
皆と美味しく温泉卵を食べた。
* *
ライリーでも新年を祝う日の前夜祭のように、夜には軽い宴席が設けられている。
年が変わる前に城内のみでクジを作り、安価で売ってみた。
手彫りのスタンプで作ったクジだ。
何の絵柄で当選するかは、新年になるまで分からない宝のクジ。
商品はお米だったり、肉だったり、コスメだったり、色々だ。
クジを買った人はワクワクしながら眠りにつくか、夜通し起きてるか、どっちだろうか。
その夜は夜ふけまで城内に賑やかな声が響いていた。
* * * *
翌朝、新年となった。
「ティア様、新年、明けましておめでとうございます」
「……ん。おは……おめでとう、ユリ……いえ、リナ朝、早いのね」
私は眠い目を擦り、もそもそと天蓋付きベッドから、上体を起こした。
ユリナの秘密は護衛騎士には話したけれど、愛称でリナと呼ぶ事にした。
「朝日、御来光が見たいって昨夜宴席で呟いたら竜騎士様が近くの山頂に連れて行って下さったのです!!」
「え、私が寝てるうちにそんな面白そうなイベントを!?」
寝てる場合じゃなかった!! 見逃した!
それってデートじゃないの!?
「あ、騎士様がギルバート様のペンダント型の記録のクリスタルをお借りして、ご来光を録画してくださいましたよ。
ライリーは便利で素敵な物が多くて良いですね」
「や、やるじゃない。後で記録をコピーさせてね。
それで、リナを連れて行ってくれた親切な竜騎士はどなた?」
「確かラインハート卿だとおっしゃってました」
「ああ、エイデン卿を鰻獲りに連れて行ってさしあげた親切な騎士と同じね」
本当に親切な人ね〜。
「え!? ティア様、今、鰻と言いました!? 鰻いるんですか!?」
「いるわよ、古代ローマ人だって鰻を食べていたから、そう不思議でもないと思うけど」
「日本で食べていたような美味しい鰻のタレはあるのですか?」
「私が作ったから、あるわ、醤油もあるし、お米も」
「神!! 醤油とお米まで!」
「昨夜は宴席にお米は出てなかったのかしら」
「昨夜は美味しいピザや肉料理とお野菜とナッツのサラダなどでした。
でも美味しいピザが食べられて嬉しかったです!」
リナが感激しつつ感心していると、リナルドが私のベッドにやって来た。
『あけおめ〜。ティア、祭壇に何か届いてるよ』
「え!? ラナンにリソース突っ込んだからもう無いと思っていたのに!?」
『神様は気まぐれなんだよ』
「ティア様、神様がどうされたんですか?」
「神様、何故かたまにうちに物を下さるの」
「は!?」
「主に何かした時のご褒美なのだけど……」
リナがびっくりしてる。
まさに、は!? て言いたい気持ちは分かる。
混乱してるリナをひとまず伴って、祭壇の前へ向かう。
「そうですか、こちらの紙の……巻物ですか?」
リナもなんだかんだで興味深々だ。
私は紐で縛られていた巻き物を開いてみた。
「エテルニテの地図って書いてあるわ」
『星印の所を見てごらん』
「ここにバナナの木って書いてある!! あ、こっちはバニラ!」
『そこでまた歌えばバナナの木やバニラの木が復活するらしい』
「いずれバナナが食べられて、バニラビーンズも取れるって事!?」
『そうなる』
やったー! 宝の地図だ!
「よく分からないけど、おめでとうございます!」
リナも意味不明ながらも祝福してくれた。
「更にこっちのは、えーと、ガラスダンジョンと重曹ダンジョンのありかって書いてあるわ!
硝石とかがあるのかしら?」
『行けば分かると思うよ』
「そうね!」
とにかくここで重曹をゲットすれば、いちいち松葉をむしらずともサイダーが飲めるのでは!
ガラス細工も綺麗だから技術が発達すればいいな!
これらは現物を直接くれる代わりに、物のありかを教えて下さったのね。
「あ、ティア様、地図ですが、海の方にも何か魚の絵と文字がありますよ」
「えー、どれどれ? カツオ……カツオ!!」
「釣れたら、頑張れば鰹節も作れるって事でしょうか?」
「そうね、美味しい出汁が作れそうね!」
やっぱりどうにかしてダンジョン行きを許して貰いたいな〜。
「あ! これから両親に新年の挨拶をしたら、一緒にリナのご来光デート映像を見たいのだけど、良いかしら!?」
「え!? デートとかじゃないですよ! ただの、ご来光見物ですよ!」
リナは真っ赤になって照れちゃった。
当初は流石に30話までには終わると思っていて、次にやはり流石に50話までには終わると思っていたら、ずるずる話数が伸びました。
流石にアンコールも、もうじき終わるはずですが。




