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拾った空き瓶  作者: O馬鹿者
3/5

田中ロミオ「CROSS†CHANNEL」

 読んでいて相性のいい作家は人それぞれあると思うのですが、自分は田中ロミオさんの作品は分かる気がします。

 「CROSS†CHANNEL」は小説ではなく、ノベルゲームになります。イラストや音楽や画面上の演出などがあり、文字だけで勝負している小説とはまた違うのですが、個人的に影響を受けた作品なので感想を書いておこうと思いました。

 人の心が数値化されるようになった世界で、ある上限を超えた子どもは普通の学校へは行かず、特別な施設へ送られることになるという設定があります。この物語の舞台である「群青学院」もその施設のひとつで、主人公はその学院で最も重篤な少年とされています。

 人の心が分からない少年は、他人と接触を試みることで人を理解できるようになろうと努めます。学院の部活動である放送部を通じてそこの部員たちと接触を試みますが、正常な友人関係を築くことができず、反対に関係を悪化させてしまいます。破れかぶれで部員たちを集めて決行した夏休みの合宿も失敗に終わり、失意の帰途についているところで、主人公たちは誰もいない世界に突然送られることになります。そこでは一週間ごとに世界がリセットされ、主人公は部員たち各々と一週間ごとに様々な関係をつくりながらループする世界でもがき続けることになります。

 この作品はループもののSFで、設定はもちろんキャラクターについてもフィクション性が強いです。自分はどちらかというと現実世界の枠の中で勝負している作品の方が馴染みやすく、架空のものが入ってくる作品には抵抗を持ちやすいのですが、この作品はそれ以上に強く伝わってくるメッセージ性を感じました。

 全ての人間関係を解決して大団円のハッピーエンドで終わる物語はたくさんありますが、田中ロミオさんの作品は登場人物たちの関係が長続きしません。どの作品もどこかで繋がりが切れる場合が多いです。ただ例え悲劇だとしても繋がりがあったこと自体を大事にしていて、そこに作品全体に共通する切なさがあります。

 関係性を築けなくても、誰かに声をかけてもらうだけでも嬉しいことがあります。一声かけてもらうだけでも自分の心が長持ちするように感じます。

『幾多の嘘と騙しの上に成立した、仲良しこよしの残骸だ。そんなものが、この世界に生きる俺たちの寿命を、心の崩壊までのリミットを、少しだけ延ばしてくれる。』

 物語の最後に、主人公は屋上のアンテナを使って放送を始めます。一方通行になった世界からメッセージを送り続けます。

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