鷺沢萠「町へ出よ、キスをしよう」
鷺沢萠さんのエッセイ「町へ出よ、キスをしよう」を読みました。
十代から二十代に入るまでのエッセイ集らしく、時代は違えど今の自分と年齢のほとんど変わらない女の人がどういう文章を書いたのかが気になり、また人には言いにくいようなタイトルも含めて興味を持ちました。
鷺沢萠さんの作品は泉鏡花文学賞を取ったという「駆ける少年」は読んだことがありましたが、読んでいて自分と同年齢の人間が書いたという親近感があまり持てなかったのを憶えています。今回このエッセイを読んでいても「東京で仕事を終え、首都高速道路で横浜に戻った」などの書き出しから始まる話があり、若くても早熟した人はそういう生活をしているのかと驚きました。自分の場合は高速道路は怖くて走れないし、数年経ってもいまだに初心者マークを外さずにいます。他にも雑誌の仕事でポルシェ、アルファロメオに試し乗りした話や、知り合いの人が持っているクルーザーに乗せてもらったことなどがエッセイに書かれていて、自分とは違う生活をしている人なのだと読んでいて感じました。
十八歳で文学界新人賞を取られたということで、普通の人よりもずっと濃い時間を過ごした方なのかもしれません。そういう人に出会える機会というのは自分にとって本の世界だけなので、活字はとても便利なものだと思います。
あと読んでいて、漢字、カタカナ、ひらがなの使い分けで微妙にニュアンスが変わるものなんだと勉強になりました。「頭が悪い」を「アタマが悪い」にしたり、「本当に」を「ほんとうに」とわざわざひらがなに直していたり、この辺は女性的な感覚なのでしょうか。繊細な部分に目の届く方なんだと読んでいて感じました。




