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終わらぬ物語シリーズ

終わらぬ異世界転生

作者: Bi₂O₃

 まず聞きたい。異世界転生ってのは本当にあると思うか?

 ──そうか。俺はあると思ってる。実際、俺は異世界転生をしたことがある。というより、今もしてる。意味がわからないだろうが、まあまず聞いてくれ。


 俺は最初、こことは別の世界にいた。といっても、こことそっくりな世界だ。その世界には、日本なんて国は存在してなかった。この世界で言うところのアメリカの一部だった。そこで俺は中小企業のサラリーマンをやってた。中年の冴えないおっさんだった。

 ま、言っちゃえば俺の不注意だったんだがな。俺はトラックに撥ねられて死んだ。面白味もない、よくある話だろ?ただ、そっからはよくある小説とは別物だ。


 俺は死んだ後、目を覚ましたら目の前に青空が広がってた。起き上がって周りを見たら見たこともねえ草原が広がってた。見たこともない植物が辺り一面に生えてた。そんで、数十メートル先には恐竜みたいなでっけえ生き物が、羊と犬を足して2で割ったみたいな生き物を食ってた。

 まあ意味がわからねえよな。俺は困惑して、その場から動けなかった。ただただその恐竜みたいな奴の食事風景を眺めてた。こりゃあ夢か何かじゃねえかと疑ったよ。それにしちゃあ匂いから空気から何から何まで鮮明過ぎたんだがな。

 そうしてるうち、奥から人影が見えた。なんとなく助かったと思って、俺は立ち上がってその人影に手を振った。だが、すぐに俺は手を振るのを止めた。そいつらは人の姿こそしていたが、ひと目見て「人間じゃねえ」ってことに気付いた。

 見た目は人間なんだが、俺の勘がそう言ってた。

 俺は逃げようと後退りして、後ろを振り返った。そしたら人間の姿をした奴が、斧を持って俺の後ろにいやがった。俺はビビって声を上げようとしたが、次の瞬間脳天を斧で砕かれた。

 信じられないくらいの激痛が頭に走った。どんどん意識が遠のいて、目の前が暗くなった。


 次に目を覚ますと、夜の街中にいた。夢だったのかと思った矢先、俺は異変に気付いた。人がいない。ビルが立ち並び、デカい交差点があり、光る看板もある。明らかに発展した街なのに、人の気配がしない。そんで空を見上げたら、真っ赤な太陽が空の3分の2を埋めつくしてた。

 わかるか?俺はまた別の世界に転生しちまったのさ。

 とにかく腹が減ってた。コンビニを見つけて食いもんを探したが、食えそうなもんは何一つ残ってなかった。人だけじゃない。ありとあらゆる生き物がこの世界にはいない。その上食えそうなものは何も残っていない。草の一本も生えてないんだ。腹が減って死にそうだった。

 数日経って、遂に俺は餓死しちまった。死ぬほど苦しかった。いや、死んだんだけどな。


 その後もまた別の世界に転生した。あん時は酷かった。なんてったって陸が一切ない世界に転生しちまったんだからよ。信じられるか?どこを見ても海しかねえんだ。船みたいなもんもどこにもないし、何かが浮いてたりもしない。底が見えるほど透き通った綺麗な海だった。

 海には肉食のちっこい魚が沢山いた。もしそいつらを全部捕まえられたら、天日干しにして白米にでもかけて食えたのにな。残念ながら昼飯になったのは俺だった。ちっこい魚が体のあらゆるところに噛み付いて食い尽くしていく。今まで感じたことの無い痛みに耐えきれず、俺は沈んでいった。その後はお察しの通り死んだ。


 その後も、地面が溶岩みたいに真っ赤に溶けた世界や、空気が全くない世界、鮫みたいな歯を持ったデカいバケモンがうじゃうじゃいる世界に、比喩でもなんでもなく体が凍りつくほど寒い世界と、とにかく色んな世界に転生しては色んな方法で死んだ。


 この世界には、確か多元宇宙論っていう理論があるだろ?パラレルワールドが無限にあるってやつ。どうやら俺は、死ぬ度にそのパラレルワールドをランダムに飛んでるらしい。とにかく俺は、あの日から色んな世界を廻って、そして死んでる。何度も、何度もな。それで、今はこの世界にいる。

 この世界は平和だ。空飛ぶデカいトカゲもいないし、全身トゲだらけの化け物もいない。だが、どうやら俺はまた死ぬことになりそうだ。俺は今、癌にかかってる。かなり末期らしい。転生してすぐに、今までとは違う痛みと苦しみを感じて嫌な予感がしてたが、まさか癌とはな。それで、死んだらまた別の世界に転生するんだろうな。


 いいか?1つ教えてやろう。異世界転生ってのは、小説みたいに上手くいくもんでもない。俺が転生したどの世界もクソッタレだった。


 俺はもう最初の転生からもうどれくらい経ったのかも覚えちゃいない。俺は最初の世界で何か神様の気に触ることでもしたんだろうか。そもそも、これが神様の仕業なんだろうか。最初はそんなことを考えてたが、今となっちゃそんなことはもうどうだっていい。

 早く終わらせて欲しい。


 俺が本当に死ねるのは、いつなんだ。

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