プロローグ
新しく連載作品作って申し訳ありません……。
___恋愛感情。
それはとても厄介な気持ちだ。世界で一番とまで言っても良いだろう。
相手を常に想い続けて、相手を想うと気持ちが踊り、時に鋭利なナイフで切り裂かれる様に痛む。
相手の幸福を願い、自分など捨ててしまう者もいる。相手を愛しすぎる故、相手の意志を無視し、自分の思い通りにしようとする者もいる。
これら全ては恋慕によって引き寄せされる。
色んな感情が恋や愛に詰め込まれている。
ある種、恋愛感情とは神から与えられた祝福であり、神からの罰として課せられた呪いなのである。
何故、こんなに恋愛に関して熱く語るかって?
簡単かつ明白な話だろう。
かく言う私もその我が主の祝福であり呪いの感情に縛られてしまっているからである。
あぁ、私はどんな恋の仕方をしているかって? 君はいつも質問ばかりだね。良いよ、答えてあげる。
私の愛し方はさっき例え話として出した者達と該当する部分があるのだよ。
私は好きな人には酷く嫌われていてね。
いや違う。嫌われていること自体は構わないんだ。反対に私は意図的に嫌われている。
私の好きな人はね、自分が好きな人に向ける恋慕がすぐに冷めてしまうんだ。
一週間か、一ヶ月一年か、一日で冷めてしまうこともあったね。
まぁ、簡潔に言うとすぐにどうでも良くなっちゃう人なんだ。
でもね、不思議な事にあの人は嫌悪という感情はしつこくねっとりと残るんだ。未だに小学校の頃のクラスメイトを憎んでいるんだ、可愛いよね。
そこまで聞けば分かるんじゃない? そう、すぐに冷められ、忘れ去られると分かっているのに恋人にはなりたくない。出来れば深く長く彼の頭に残りたい。
だから、嫌われる。物凄い殺気まで抱かせるために。
あぁ、引かれてしまったかな。でも、君から聞いてきたんだよ。つまり自己責任だ。
でも、一応謝っておこう。すまないね、せっかくの美味しいお酒が不味くなってしまったかな。
そう言って男は財布から札を二枚取り出す。
それをマスターに渡し、席を立つ。
「マスター、これで私と彼の分のお会計を」
「……かなり金額が余りますが」
「余ったお金で追加のお酒でも作って。それでも余ったら、お釣りは彼に」
その言葉に隣に座り、男の話を聞いていた人が立ち上がる。
「流石にお釣りまで貰えませんよ! お会計も自分で払います」
そう言い、なんとか取り出したお金を収めてもらおうとするが、男は困ったように眉を下げて笑った。
「変な話を聞かせてしまったお詫びだ。人助けだと思って、受け取って貰えるかな?」
「そんな…」
男の困った顔に吃り困っている内に男はマスターの手にお金を握らした。
「はい、マスター。よろしくね」
「かしこまりました」
「えっ、ちょっと!?」
マスターにお金で渡すと男は足早に去り、すぐに姿を消してしまった。
その場には男へと伸ばした手の行き場に迷う人と無表情で注文されたお酒を作るマスター、周りには酔いながら二人を見ていた他の客達だけが残った。
「……はぁぁ」
ドアベルの鳴らしながら、外に出た男は手に持っていたコートを着る。
そして、空を見上げ、降り注ぐ雪に深く息を吐く。
暖かった室内から寒い外に冷たさを感じる手を振り合わせる。
ポケットに寒さから逃がす為、手を隠して雪道を歩き出す。
男の脳内には先程まで一緒に話していた人間は消え失せ、話に出ていた男が好いている人しかなかった。
「あぁ、彼は今、何をしているのかな。バイトから帰り、今は冷えた体を温かいお湯で暖めている最中かな」
そう独り言を一人、夜道で呟きながら男はポケットからイヤホンを取り出し耳に付ける。
『……ザ……ザー………』
男が付けたイヤホンからは微かに水が勢い良く流れている音がする。きっとシャワーの音だろう。その音に男は笑みを零す。
「ふふっ、やっぱりお風呂だ。そうだよね。君は寒いのが苦手だから帰ってきたら、すぐにお風呂だよね」
男は一人でにやけながら歩く。傍から見れば美形な男が恋する乙女の顔をしていると思うだろう。
間違ってなどいない。男は確かに愛する相手を思っている。だが、その相手が男だとは予想出来ないだろう。況してや、耳に付けているイヤホンで相手の生活音を聞いているとも。
男はサラサラとよくケアされた髪を風に揺らしながら、夜闇へと消えて行った。
きっと、男の行先は___
ここまでお読み頂き、ありがとうございました。少しでも楽しんで頂けたら幸いでございます
そして、ごめんなさい!!申し訳ありません!!只今、連載作品を二つも抱えているにも関わらず、新しく連載作品を開始してしまいました!
こちらの方は二作品の息抜きとして書かせていただくので、不定期になる予定でございます。ぱったり投稿しなくなったり、一気に増えたりするかと思います。御理解の程、よろしくお願いします!詳しい方は活動報告にてお話させていただきますが、この後書きでも、十分に要点は伝わりますかと思いますので、お暇な時にでも大丈夫です。本当に申し訳ありません。