八話
「ミウ様、やっと時間が作れました!」
そう言ってバーンと音を立てて扉を開けてきたのは最初にこの世界の説明をしてくれたアスールさんだ。ブラン君が仕えている人でもある。
しかしノックもせずに扉を開けるのはマナー違反だと思う。そして私は今着替え中である。スカートは履いていたが上はまだで下着とシャツを着ただけでかなり肌が出ている。シャツも薄いものだったため下着が透けている。
「あ、すみません。着替え中でしたか」
「あ、はい」
アスールさんは全く気にしていないようだ。こちらもアスールさんの登場に驚いて恥ずかしがるタイミングを逃したためポカンとしながら返事をする。
「わわわ!」
するとアスールさんの後ろからとても慌てたような声が聞こえた。この素晴らしき声はブラン君だろう。声のした方へ視線を向けるとやはりブラン君で顔を真っ赤にして顔を手で覆ってしゃがみこんでいた。
平気だったのにそのような反応をされるとなんだか恥ずかしくなってくるため急いで服を着た。
「あの、ブラン君服着たよ」
私が声をかけると恐る恐るそっと顔を上げる。しっかり服を着ていることを確認するとホッとした顔をした後慌てて謝ってきた。
「ご、ごめん。ミウさん」
「ううん。こっちこそ変なの見せてごめんね…」
「そんな!」
二人で言い合っているとアスールさんが声をかけてきた。
「それはそうとミウ様!メイナクリス様のお声が聞こえるとか」
「あっ、はい!」
私が肯定するとアスールさんは目を輝かせた。ギョッとするほどである。
ブラン君もあーあ、という顔をしている。
どうしたどうした!
「なんと!ではミウ様がいればメイナクリス様とお話が出来るのですね!素晴らしい!!!」
一人で大興奮しているアスールさんを何事かと見ているとブラン君がそっと耳打ちしてくれた。
「アスール様、神様大好き人間だから…。神様のことになると暴走するんだよ」
「嫌な予感しかしないんだけど逃げてもいいかな?」
「無理だと思うよ」
ブラン君は首を横に振り気の毒そうに私を見た。その後すぐアスールさんが近づいてきてガシッと両肩を抑えられた。
怖い…。グリードさんとは違う怖さだ。
「まず聞きたいことが!何か言い伝えと違うこととかありますか?」
早速質問タイムに入ったようだ。
すごい目が輝いている。何度も言うがすごい輝きである。
とりあえずメイナに聞いてみるしかない。そうでもしなければ解放してもらえないだろう。
(だって、なんかある?)
『うーん、そうね~。あっ、ある!私が神子に力を借りて力を使うってので少しあるわ!』
(どんな?)
『えっと、破壊神レハガルトの方が力が強いというわけではないのよ。寧ろ力自体は私の方が強いわよ!じゃなきゃ発散する前にポイポイと力使えないわよ。ただね私人間を介してじゃなきゃ力を使えないのよ』
あははと笑う。
世界をつくるときに要らないものをつくりすぎて神としての格が下がり何個か制限がついてしまったようだ。
その一つが自分と波長の合う人間を通じてしか力が使えないと言うものだそうだ。いやーあれはやり過ぎたわねと笑っている。
それでいいのかメイナ…ただの間抜けな神ではないか。
この神に夢を抱いていそうなアスールさんにその間抜け話を話していいものか…。
『いいんじゃない~』
(本当に?メイナの事も幻滅されるかもよ)
『それはそれ。それよりも反応が見てみたいわ』
メイナがそう言うので聞いた話をそのままアスールさんに伝えると俯いて黙ってしまった。ショックだったか…!ブラン君が後ろで神様…と笑いをこらえていた。
それにしてもアスールさんは大丈夫だろうか…。
「あ、あの…」
心配して声をかけるとガバッと顔を上げた。いちいち動きが大きくてびっくりする。普段はそんな事はないらしいが神のこととなると興奮してそうなるらしい。
「素晴らしい!!少しドジなところに親近感が湧きます!」
私の知らない神を知れた…ふふふと笑っている。だから怖いって。
それよりも…
「アスールさんは私がメイナと会話できるって信じてくれるんですか?」
「嘘なのですか?」
「違います!」
「それなら私は信じますよ。それにその話信じた方が楽しいじゃないですか!」
「俺も信じてるよ」
ブラン君もそういってくれて私は嬉しくなった。初めて信じてもらえて涙が出そうになる。
「二人ともありがとうございます」
ぐすっと涙をこらえながらありがとうと繰り返していると
「それよりも!!」
アスールさんはこの話はおしまいと言わんばかりに次の話に入ろうとしていた。
しんみりした空気をぶち壊してきた。そして話の続きを催促してきた。
聞かれたことをメイナに聞きそれをアスールさんに伝える。これが4時間近く続いた。途中昼食も取ったがその席でもアスールさんは止まらずどんどん質問を繰り返してきた。
私は解放された時にはヘトヘトだった。