六話
それから一週間が経った。
毎日何かしら創造しているが大変である。とは言っても成長はしていると思う。初日はチョコレート一枚しか出せなかったが今では十枚は出せる。他にもイチゴ味やら抹茶味やらも出せるようになった。確実に成長している。疲れるが力を使うのは意外と楽しい。メイナと話すのも楽しい。しかしお披露目会で何をするのかを考えると何をしたら良いのかわからなくて気分が沈む。チョコレートじゃダメかな?ショボすぎるか…。美味しいんだけどね。納得してくれなさそう。
はあ、胃が痛い。
(メイナ、無理)
『ファイト~!というかそんな会開かなくても力の発散には全く関係ないけどね』
前にメイナがこう言っていますよと報告したが世界が消えるかもしれない不安に思っている人を安心させるためにこの会を開くため中止には出来ませんと言われた。不安を抱えて生活するのはきついが私も成功するか今から不安で胃が痛いのだが…。私はいいのかと思わないこともないが不安のレベルと人数が違うと言い聞かせて諦めた。
『ところでもうすぐお茶が来るんじゃない?楽しみ~』
(たしかにリサさんのお茶はおいしいね。茶菓子も美味しいし)
メイナは私が食べたものの味を感じることが出来るらしくお茶やご飯の時間を楽しみにしている。
そうメイナと話をしていたら部屋の扉をノックされる。リサさんがお茶を持ってきてくれたと思い確認もせずにドアを開けた。
しかしそこにいたのはリサさんではなく最初の日にアスールさんと話をした時にお茶を出してくれた少年だった。
綺麗な茶色の髪をしている。顔もアスールさんたちほどではないが整っている。年齢は私くらいだろう。
「あ、すみません。リサさんが手を離せなくてお茶は僕が運びました。あと誰か確認もせず扉を開けるのはやめたほうがいいですよ。」
注意されたがそれよりも衝撃が走った。前もあれっとは思ったがこの少年!
声が!声が!私の好みなのだ!実は私声フェチでして。声優さんのささやきCDなんかも嗜んでいた。
私の好みは低くもなく、しかし高すぎない声なのだ。でも、囁けば甘く響く…そんな声が好きだ。
この少年の囁いた声は聞いたことないので知らないが地声も好み!
どうしよう。ドキドキする。もっと声を聞きたい!でもどうしたら…?
『喋り相手になってもらったら?友達とか』
(どうやって!?)
軽くメイナは言うがそれが一番難しいのだ。できたら苦労はしない。
あっ…少年が行ってしまう!ちなみにお茶の準備が出来ましたよとにこやかに言ってくれたのだがその声も優しく響き私の心を刺激する。
どどど、どうしよう!このまま行かせては絶対に後悔する!よし勇気を出せ未羽!
いけ!私!!
「あ、あの!」
私が声をかけるとその少年は振り向いてくれた。どうしました?と不思議そうにするのもいい!とか思っている場合ではない!!
「あの!あの!声に惚れました!大好きです!お友達になって下さい!!」
ガバッと頭を下げる。え?と驚いていた。よくよく考えると自分の台詞はやばくないか、声に惚れたとか変態みたいではないか?と焦る。ドン引きものではないか…。恥ずかしさで耳まで真っ赤になっていることだろう。
泣きそう、顔をあげられない!
『あはは!それはどうかと思うわよ、ミウ。ふふふ』
(だ、だって~)
メイナが大爆笑している。腹立つ!ぐぬぬ。
「あはは!」
するとメイナ以外の笑い声が聞こえてきた。上からだ。恐る恐る顔を上げるとその少年が腹を抱えて笑っていた。こちらも大爆笑である。
「ミウ様面白いですね。ふふっ」
その笑い声も素敵ですと思っているとその少年は手を差し出してきた。握手だろうか。
「僕ブランって言います。僕でよければ友達になっていただけますか?」
「は、はい!」
出された手をドキドキしながら握り返す。
ブラン君は十六歳で私の一つ下だった。友達だからどうか敬語と様はやめてください!と頼んだがそれは難しいと言われたのでどうかお願いします!と土下座しようとしたらギョッとして慌てて止めてきた。
「わかった、わかったから。やめて!俺普通に話すから!」
一人称は俺だったらしい。それもまた良し!
「呼び方はミウさんでいいかな?年上だから呼び捨ては出来ないよ。敬語だって本当は外せないのに」
「呼び方はそれでいいよ。ただ敬語は無しの方向で。ここに来て年上の人たちにも敬語で話されて疲れたの…」
「うん。わかったよ」
「ありがとう!」
私はここに来てようやく普通に話してくれる友を見つけ嬉しくなった。