五話
軽い感じの神様に驚きながらもふと思った。
あれ?気持ちがわかる程度って言っていなかったか?ふつうに言葉が聞こえたのだが。
もう一度試してみよう。
(あの…メイナ?声が聞こえて…)
『あら?聞こえてるの?やーん嬉しい~。いつも話しかけているんだけどはっきり声が届いたのは初めてね!』
(何で私だけ聞こえるの?)
『波長が最高にあっているのよ!たぶん』
たぶんってこの神様大丈夫か?雑すぎやしないか?と思ったが何も言うまい。とりあえずこのことについてグリードさんに説明することにする。
「あの…メイナ、メイナクリスの声がはっきり聞こえるんですけど」
「え?会話できるのですか?」
信じられないと言う目で見られるが実際に聞こえるのだ。何か上手く説明できないだろうか。私は色々考えたが言葉が出てこない。
「えっと、とにかく聞こえるんです!本当です…」
全く説明できていない。だんだん焦って泣けてくる。どうしよう…。普段はこの程度では泣かないのに…。視界がどんどん歪んでいく。
『そりゃ、帰れるとは言っても知らないところで知らない人ばかりに囲まれて気が滅入ってるのよ。元を辿れば私のせいだけど…ごめんね』
なるほど。自分でも気がつかなかったがかなり精神的にきていたようだ。
それがわかったからと言ってこの状況をどうにか出来るわけではないが。
『まあ、別に信じられないならそれでいいじゃない~。貴女は私の声が聞こえるそれは事実なのだがら。信じられない人は放っておけばいいのよ』
そうメイナは笑う。それもそうか信じてもらえないのは悲しいが信じてもらわなきゃいけないこともないのだ。どうしても信じてもらえないといけないことでもない。
そう思うと気が楽になってきた。メイナにありがとうと言う。
そしてグリードさんに向き合った。
「信じられないかもしれませんが事実なんです!でも信じられないならそれでも…!いいです…あの、はい」
最初は勢いよく言えたがグリードさんがちょっと怖くてだんだん声が小さくなってしまった。情けない。
「わかりました。聞こえるなら聞こえているのでしょう」
信じていなさげだがもう気にしないことにした。グリードさんは一応記録しますと私の言ったことをメモしていた。
「では続いて力を使ってみましょう。なんでもいいのでそこに出してください」
自分のイメージ出来る範囲で神に語りかけてみろと言う。この人厳しい。
だが怖いので素直に従う。
何がいいだろう、食べ物とか?疲れたし甘いものが食べたい…。甘いものを脳が欲している。あれでいいか。
(メイナ!これで!)
『オッケー!それなら今の貴女でも耐えられるわよー』
机の上が光りそこには私がこの世界に来る前に食べていた板状のチョコレートが出てきた。するとどっと疲労が溜まった気がした。疲労を回復させようとしたのにそれ以上に疲労してしまった気がする。意味ない。
でもこれは成功ではなかろうか。
「成功ですね」
「食べてもいいですか?」
せっかく出したのだから食べたい。少しでも甘いものを食べて癒されたい!手を伸ばすとグリードさんに止められる。なぜだ!
「これはチョコレートですね?」
「はい」
「私にもいただけますか?」
?がついているが断るなという雰囲気が漂っている。怖いのでどうぞと半分に割って渡した。グリードさんは口に含むと何かを考えるように頷いた。
「たしかにこれはチョコレートですね。味もしっかりしている。力はちゃんと使えるようですね」
力は使えるとわかったのでこれからどんどん力を使って精度を上げるようにと言われた。
その後お披露目会についての説明を受けた。
パーティーホールで目立つように登場し、そこで王などの立場ある人間に力を見せろとのことだ。
他にも歩く姿勢言葉遣いなどの訓練もするそうだ。
ため息が出そうなのを必死にこらえながら話を聞く。
「ミウ様わかりましたか?」
「あ、はい」
面倒そうなのはわかった。出来ればやりたくない。私にそのような大きなことは無理である。勘弁してほしい。
「一気に説明しましたが半年近くあるのでゆっくり確実に覚えていきましょう。お披露目会を無事に成功させていただければ後はミウ様の好きなように過ごされても良いですよ。と言っても力の特訓はしてもらいますが」
とりあえず半年は胃が痛いようだ。
気が本当に重い…。
ところで様はやめてほしいと言えば神は私にとって偉大な存在だからと断られた。神は偉大かもしれないが私は私なんだが…。
リサさんにも頼んだがミウ様がこちらにいる間は貴女が主人なのでと断られた。