一話
私は川野未羽。何かこれという特徴もない高校二年生。ほんの少しだけ人見知りだけど慣れた人にはおしゃべりな普通の人間。
見た目も普通。スタイルも普通で本当につまらない人間だ。ちなみにここでの普通というのは平均的なと思っていただけたらいい。
とは言ってもこの普通すぎる生活に不満は持っていない。ご飯も三食食べられるし学校にだって行ける。友達だって少ないけどいる。むしろ幸せだと思う。
そんなこれからも一般的な人生を歩んでいくのだろうと思っていた。しかし、今ちょっと普通じゃないことが起こっている。理解不能である。
私は先程まで学校から家までの道のりを歩いていたはずだ。つまり下校中だった。
普通の舗装された道を歩いていたはずだ。
それなのに何故私はRPGに出てくる神殿っぽい見た目の場所で白いローブを着た人達に囲まれているのだ!しかも皆んな頭を下げている。むしろ拝んでいる。
白いローブを着た人達の後ろには男女の像がある。
ああ、ステンドガラスが綺麗だなと現実逃避をしてみる。
一度目を閉じて頬を抓る。痛い…。これは夢じゃない…?いや、まだ諦めないぞ。よく痛くなければ夢じゃないと言うがあれは間違いだ。夢の中だろうがなんだろうが痛いときは痛いのだ。自分が寝ている時に痛みを想像すれば痛覚だってしっかり出る!
だからこれは痛みを感じるタイプの夢なのだ。私の脳は頬をつねった時の痛みをちゃんと想像したに違いない。というよりそうであってくれ。
だが、私はいつ寝たのだ…。流石に歩きながら寝ることはできない。
しかもばっちり下校中に持っていた学生鞄もある。学生鞄までしっかり夢に出てくるだろうか…。
そもそもなんでこうなった。
そう、たしか歩いていたら上から光の玉みたいなものが降ってきてポカンとしていたら私の体の中に入ってきたのだ。そうしたらすごい光に包まれて目を開けたらここに…。
原因のようなものがある。光が入ってきたというのが怪しい。
ではこれは夢ではないのかもしれない…。がっくし…。
と呑気に解説していたが正直泣きそう。
「神子さまが降臨されだぞ!」
「アスール様こちらへ」
白いローブの人達が道をあけ一人の男性がこちらに歩いてくる。
その男性は綺麗な青色の髪をした美形だった。それもとんでもなく。イケメンだイケメン。
「初めまして。アスール・コールドと申します。貴女は神子としてこちらの世界に召喚されました」
「へっ?」
私は間抜けな声を上げた。