35話 期末考査テスト範囲発表
1学期の期末考査テストの時期がやってきた。
HRの教壇に立った茉奈先生の気合が違う。
「今回の期末テストは高校2年生になってから、君達がどれほど成長したかを見極めるテストだ。よって過去からの問題は一切出さない。よく予習・復習をしてテストに取り組んでほしい」
茉奈先生の発言内容を要約すると、過去のプリント問題などからは出題しない。あたらしい問題を作る。
皆で予習・復習を頑張ってして、乗り越えてくれというものだ。
中間考査の時は過去のプリント問題からテストが出たりしていたので、難易度は低かった。
しかし、今回は新しい問題での出題となると難易度が跳ね上がる。
前回の成績で中の上をキープできた俺は、これなら大丈夫と思っていたのだが、ここで最大の難関に
ぶつかってしまった。
となりで優が安心させるように俺に微笑む。
「大丈夫よ。中間考査テストから後、ずーっと私がたっくんの勉強を教えてるんだもん。今度も乗り切れるわ」
優は夕食後の空いた時間を計らって、俺に勉強を教えてくれている。
予習・復習ができているのも優のおかげだ。
「ありがとう優。今回も世話になるけど、あまり無理はしないでくれよ」
優は勉強を教えるのに熱心になりすぎて、夜の0時まで勉強に付き合ってくれることがある。
毎日、夜の0時まで教えてもらうのは本意ではない。
自分の力でもなんとかしないといけないと、最近では思っている。
美緒は才女だけあって、茉奈先生が何を言おうとも、無表情で聞き流している。
夏希は兄妹が多いので、勉強するのも一苦労だろう。
淳は予備校にも通っているし、成績も良いほうだ。
博士は専門学校へ入学するつもりなので赤点ギリギリで良いと考えている。
一応、大学進学を目指している俺としては、中間や期末で成績を落としたくない。
優が成績優秀なので助かっている状態だ。
「私もたっくんと同じ大学へ合格したいもん。2学期になったら、予備校を探そう。同じ予備校へ行きたい」
「そうだな……俺の成績なら予備校にいかないとマズイよな。2学期になったら一緒に予備校を探そう」
◇
学校からの帰りにスーパーに寄って、夕飯の用意を買って帰り、優は着替えのため一旦、自分の家へと戻った。
その間に俺はシャワーを浴びて、部屋着のスウェットの上下に着替える。
優が再び、俺の家にやってくると、夕飯の準備を進めてくれて、今日は豚の生姜焼き・ポテサラ・コンソメスープだ
2人で食べる生姜焼きの味は格別に美味く、ポテサラは甘くて、コーンスープが口の中をサッパリしてくれる。
あまりに美味しくて、ご飯を3杯お替りすると、優が嬉しそうに炊飯器からご飯をよそってくれる。
「優の料理は何を食べても美味しいな。どこへお嫁さんに行っても優なら大丈夫だな」
「何を言ってるの。私はたっくんのお嫁さんにしかなりませーん」
褒めたつもりだったが、優が頬を膨らませて俺をジーっと見る。
そんな優も可愛くて愛しいと思う。
しかし、言葉に出すのは恥ずかしい。
「あー美味しかった。お腹いっぱい食べたから、少し眠くなってきたな」
「ダメよ。これからテスト勉強をしないといけないんだから」
確かにテスト勉強をしなければならない。
睡魔に負けそうになっていた自分を頬を叩く。
優と一緒に夕飯の片づけをすませると、優は「シャワーを浴びてくる」と言って、一旦、自分の家へと戻っていった。
俺は鞄の中から教科書や勉強道具を取り出して、机に座って勉強を始める。
しかし過去のプリントが使えないなんて……どこから勉強すればいいのかわからない。
教科書の全てを、もう一度勉強し直すしかないだろう。
優が上下スウェットの部屋着になって戻ってきた。
そして俺の勉強方法を見て、ため息をつく。
「たっくん……茉奈先生の言ってたヒントを見逃してるよ」
「……ヒント?」
「過去のプリントの問題からは出題しないって先生は言っていたんだよ。だけど過去のプリントやテストに似た問題は出さないなんて言ってなかったよ」
「なるほど……過去からのテスト問題は一切出さないが、似たような問題は出るというわけか」
「教科書をはじめから復習するのも大事だけど、山を張るのも大事だと思うよ。だから過去のテストに似た問題を解いていく方法もしたほうがいいと思う」
なるほどなー。言われてみると優の言う通りだ。
優は色々と傾向と対策を教えてくれる。
さすが、成績優秀なだけはある。
今日は優も上下スウェットなので、色っぽい下着が見えないので、俺も安心して勉強に打ち込むことができる。
優は手慣れた手つきで、俺に勉強を教えていく。
マーカーで線を引いたり、赤ペンで◎をしたり、親切丁寧に教えてくれる。
今日は調子がいい。
俺は集中して勉強に打ち込む。
途中から優の声が消えていることも忘れて、勉強に集中した。
あれ?優の声が聞こえないというか……優の姿が見えない。
机の椅子を回転させて部屋中を見ると、優が勝手に俺のベッドへ寝息をたっててスーっスーと寝ている。
時間を見れば夜中の1時半を回っていた。
優も眠たいはずだ。
俺は席から立って、ベッドの端に座って、優の頭をなでる。
「ううーん、もう少し眠たい」
という声が聞こえて、俺は優を起こすのを諦めて、もう一度勉強するために机に向かった。
そして、そのまま机で寝落ちするまで、勉強を頑張った。




