33話 キャンプファイアー
夕方になり、男子生徒達は集合し、キャンプファイアーの木を運んで組み立てていく。
その間に女子は林間学校の調理室でカレーライスを作る。
俺と淳は丸太を肩に担いでキャンプファイアーに使う木を運ぶ。
丸太が肩に食い込んで少し痛い。
丸太は重く、1人では担ぐこともできない。
「淳……大丈夫か?」
「俺は大丈夫だ。拓哉はどうだ?」
「俺も大丈夫だ」
2人で何往復もして丸太を運ぶ。
運ばれた丸太は数人がかりで組み立てられていく。
組み立てている生徒の中に博士がいる。
博士は小太りな体を揺すって、丸太を組み立てている。
相当に辛そうだ。
俺達は何回も丸太を運んで、キャンプファイアーの木が組み立てられて終了だ。
作業が終わった頃には、汗と埃まみれになっていた。
そして、すごく腹が減った。
俺達の班は優、美緒、夏希の3人がカレーを作っている。
3人共に料理上手なので期待ができた。
皆で洗面所で顔を洗って、タオルで埃を落として、林間学校の校舎の中へ入る。
そして女子達が調理している、食堂へ足を運ぶ。
食堂に着くと優が手を振って迎えてくれた。
「お疲れ様。今日のキャンプファイアーが楽しみだね」
「ああ、苦労したんだからな」
「さあ、皆でカレーを食べましょう。美緒と夏希と3人で作ったんだから。絶対に美味しいよ」
「それは楽しみだな」
俺達は食堂の椅子に座って、女子達が持ってくるカレーを待つ。
優、美緒、夏希の3人が俺達のカレーを持ってきてくれた。
とても美味しそうだ。
夏希が嬉しそうに俺達を見て微笑む。
「3人共、お疲れ様。お替りは沢山あるから、全部食べてね」
「「「「「「いただきまーす」」」」」」
優達3人も俺達3人の対面の席に座って6人でカレーを食べる。
カレーの辛さが絶妙で美味い。
俺達男子3人はすぐにカレーを完食する。
すると女子達3人が椅子を立って、カレーのお替りを持ってきてくれる。
俺と淳はカレーライスを3杯もお替りしてしまった。
博士はカレーライスを5杯もお替りした。
博士が小太りな理由がわかる。
女子は美緒以外はカレーを2杯お替りした。
やはり皆で食べるカレーライスは美味しい。
全員で食べ終わって、調理場に入って後片付けをする。
女子達が洗剤を使って調理用具や食器を洗う。
そして男子が布で調理用具や食器を拭いて片付ける。
優が嬉しそうに美緒と夏希と一緒に食器を洗っている。
とても楽しそうだ。
淳と俺は食器を拭いて博士に渡す。
博士は食器を食器棚へと片付けていく。
女子3名が洗い物を終えて、俺達男子が片付けるのを待っている。
最後は俺と淳も食器の片づけを手伝って終了だ。
「これで片付け終了だね。早くキャンプファイアーの場所へ行きましょう」
片づけが終わった班からキャンプファイアーの組み木の場所へ集合することになっている。
俺達6人が外へ出ると、すでにキャンプファイアーの組み木が燃えていた。
とても明るくて温かい。
煙が空へと舞い上がっていく。
淳は女子の集団に声をかけられ、俺達から離れていった。
美緒と夏希は俺と優から少し距離が離れた場所で座っている。
博士の姿は見えない。
優が俺の腕に、自分の腕を絡めて寄り添ってくる。
そのまま2人で寄り添って高くあがる炎を見つめた。
炎は形を変えながら、空に向かって舞い上がる。
優が小さい声でぽつりと呟いた。
「皆、私とたっくんを2人っきりにしてくれたんだね」
「ああ……そうみたいだな」
2人で少し離れた場所にある芝生に腰を下ろしてキャンプファイアーに見惚れる。
「林間学校……楽しかった。美緒と夏希とも、すっごく仲良くできたし、淳と博士とも仲良くできたし」
「そうだな……淳も博士も楽しいし、美緒と夏希とも仲良くなれた。良い思い出になったよ」
優が俺の肩にもたれかかる。
俺は優の肩を抱いて、2人寄り添ってキャンプファイアーの炎を見続ける。
静かな時が流れて、キャンプファイアーの組み木が崩れる。
そして段々と炎が小さくなっていく。
皆がキャンプファイアーの炎に集中している。
誰も俺と優のことなど見ていないだろう。
優が目をウルウルと潤ませて、俺の方へ顔を近づけてくる。
俺も瞬間だけ近づけて、軽く優とキスをする。
「これでたっくんとの思い出がまた1つ増えた。嬉しい」
「そうだな。思い出が1つ増えたな」
俺達は2人で寄り添ったまま、炎が消えるまで、その場で座って過ごした。
キャンプファイアーの炎が消えると、夜空には満天の星々が輝いていた。




