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32話 お土産と陶芸教室

 次の日の午前中は自由行動となっている。

林間学校の前は大きなグラウンドになっている。


 グラウンドでサッカーをして楽しんでいる男子生徒達もいる。

林間学校の周辺を散歩している女子生徒達もいる。


 空は青く、白い雲がいくつもゆっくりと流れている。

林間学校からは、晴れ渡って下界の景色がよく見え、遠くの街まで見えた。


 淳は女子生徒数名に誘われて、散歩に出かけている。

博士は部屋でゲームをして遊んでいた。

俺、優、夏希、美緒の4人は土産物売り場に来て、色々な商品を見て回る。


 別段、俺は誰にも土産を買う相手はいないんだどな。

親父も家に帰って来ないし……

優の家も同じじゃないのか。


 優はニコニコと笑って、夏希、美緒と3人でお土産にできそうなお菓子をみている。

夏希と美緒は家族への土産に、お菓子を買って帰るつもりらしい。



「優……お前がお菓子を買って帰っても、誰も食べる人がいないだろう」


「何を言ってるの? たっくんに食べてもらうお菓子じゃない。たっくんお菓子好きでしょ」



 なるほど……俺が食べるお菓子か……

別に俺は菓子好きではないぞ。



「お土産って考えないで、2人で食べたらいいじゃない」


「それもそうだな」



 しかし、どれも見たことのあるようなお菓子ばかりだな。

パッケージの裏を見ると、製造元が他府県になっている。

製造元は1つで、パッケージだけを変えて、全国へ出荷しているのか。



「製造元なんて見たら夢がなくなっちゃうよ。製造元を見るの禁止」



 優にそう言われて妙に納得した。

土産物は夢がないとな。


 美緒は家族へのお菓子を買い、今はキーホルダーを見ている。

夏希は家族が多いので、お菓子だけにするそうだ。



「私の家は兄妹が多いから、お菓子が1番喜ばれるのよ」



 そう言って夏希は微笑む。

兄妹が沢山いる家の長女も大変だ。



「優……私達も林間学校に来た記念にキーホルダーを買いましょうよ」



 そう言って優が俺の手を引っ張る。

確かにお菓子は食べてしまえば記念に残らない。

何か記念に残る物を買ってもいいだろう。


 美緒も優と一緒にキーホルダーを見ている。

俺はあまりセンスがないから、優に任せておこう。


 美緒が選んだキーホルダーはパンダのキーホルダーだった。

なぜ日本なのにパンダ……



「私達も決めたわ……これよ」



 優が見せてきたキーホルダーは河童だった。

動物でもない……

河童はこの辺りの名物なのだろうか。


美緒と優は支払いを済ませて嬉しそうだ。



「はい……私がオレンジ色の河童でたっくんが青色の河童ね」



 オレンジ色の河童……

河童ってそんなに色に種類があったんだ。


 俺達はそれぞれに土産物を持って、自室へと戻った。







 昼からはろくろを使った陶芸教室となっている。


 林間学校の教室で、皆で陶芸の器や湯呑を作ることになっている。

生徒が作った陶芸は、林間学校のある釜土で焼かれて、後日に配送されてくるそうだ。


 慣れない手つきで土をコネて粘土にして、ろくろをまわして皿や湯呑にしていく。

ろくろは全自動式で足でペダルを踏むと、ろくろが回るようになっている。


 粘土をろくろの上に乗せて、ろくろを回して、手を添えて皿や湯呑にしていく。

なかなかうまく円形にならない。

途中でグシャリと粘土の形が歪んでしまう。


 俺ははじめは湯呑に挑戦したが、何回も失敗して、結局は皿に変更した。

生徒達のほとんどは皿を選択している。


 美緒、夏希、優の3人は手先が器用なので、湯呑を作っていた。

陶芸教室の先生にも褒められて、3人は恥ずかしそうにしている。


 しかし1番驚いたのは博士だ。

博士はろくろの回転を上手く利用し、細い花瓶を作っている。

手つきなど、まるで玄人のようだ。



「女性のフィギュアを自作するのに比べれば、これぐらいは簡単なのですよ」



 フィギュアを自作……

そういえば、博士はアニメオタクでもあったんだよな。

自作でフィギアまで作っているとは思わなかった。



「私のフィギュアは通販で1体20000円で売られているのですよ」



 1体20000円もするのか。

どれほど精密なフィギュアを作ってるんだよ。

ちょっとした小遣い稼ぎになってるじゃねーか。


 淳は小さい小皿を沢山作って、女子達に小皿を渡していく。



「何をしてるんだ?」


「林間学校へ来た記念に女子達が欲しいっていうからさ。1つづつ手作りしてるんだ」



 さすが女子にモテるイケメンはやることが違うな。



「拓哉も優のために何かを作ってやれよ」


「そう言っても不器用な俺には皿しかつくれないぞ」


「2人で一緒の柄の皿を作ればいいじゃないか」



 そうか……

優には日頃から色々とお世話になっている。

特に料理では優に頼りっぱなしだ。


 俺はろくろを回して、小さな小皿を2枚作る。

そして、始めに作った皿と一緒に重ねて置いておいておく。


 後から教師達が生徒ごとに、分けて釜土へ運んでくれることになっている。


 優には学校に皿が届いてから、驚かせることにしよう。

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