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31話 淳と博士

 全生徒が男女に分かれ、順番に大浴場へと入っていく。

拓哉、淳、博士も大浴場に入り、身体をサッパリさせて、自分達の決められた部屋へ向かう。

部屋の隙間が開いている。

そして中から声が聞こえる。


 部屋の扉を開けると、優、美緖、夏希の3人が風呂上りのジャージ姿で、俺達の部屋へ遊びにきていた。

そういえば、まだ消灯時間ではない。



「何しに来たんだ? ここは男子部屋だぞ」


「優が遊びに行きたいっていうから、私と美緖は一応は止めたのよ」


「私も男子部屋などに来たくなかったのです。優が1人で遊びに行こうとするから、ついてきただけです」



 優が男子部屋へ遊びに行くと言ったので、美緒と夏希は付き添いのようだ。


 優は俺のベッドに横たわって、足をバタつかせる



「だって、今日はたっくんと2人だけの時間がなかったんだもん」



 この部屋に来ても、淳と博士がいるけどな。

淳と博士は女子達にベッドを明け渡し、奥の3畳の居間に座っている。

博士の目が輝いている。


 風呂上りの美少女達が遊びにきたのだ。

エロ博士としては、これを見逃すはずはない。

手にはスマホが持たれている。

カメラで3人の女子の写真を撮ろうとしているに違いない。



「淳、博士からスマホを取り上げておいてくれ。ここは男子部屋だ。女子の立ち入りは禁止。写真でも撮られたら 証拠が残る。それはマズイから博士には写真を撮らせるな」


「わかった……それはマズイな。博士、スマホを渡してもらおうか」


「なぜなのです。若き3人の美少女が部屋へ来ているのですぞ。写真に残したいという衝動が起きても良いでしょう。少しだけ、1枚だけにいたします。1枚だけ写真を―――」



 俺と淳は博士を羽交い絞めにして、手に持っているスマホを取り上げる。

もう少しで、証拠写真を撮られるところだった。


 そして3人の美少女達に俺は顔を向ける。



「優、夏希、美緒、ここは男子部屋だ。女子は立ち入り禁止なんだぞ」



 優はニッコリと笑って、余裕の笑みを浮かべている。



「そんなこと知ってるもん。女子全員が今は男子部屋へ行ってるよ。今は自由時間だし……女子全員が気に入った男子の部屋へ行ってるもん。女子のほうが行動的なんだから」



 それならば、クラスで1番のイケメン男子である淳の元へ女子が来ないのはおかしいんじゃないかの?



「女子全員が淳のことを狙っているけど、淳にはその気がないことを知ってるし……。後は女子に人気のない目つきの悪い拓哉と、女子から嫌われているエロ博士の部屋でしょう。だから女子から人気がないのよ」



 夏希は可哀そうなモノを見る目で俺を見つめる。

その悲しそうな目で俺を見るのは止めてくれ。

俺はエロ博士と同列だったのか……

いかん……目から何かがこぼれそうだ……


 淳が同情の目で俺を見る。

淳にまで同情されるなんて……



「拓哉には優がいるじゃないか。俺なんて、女子にモテているように見えても、俺にその気がないから……ファンが多いだけだよ。だから女子は別の男子で本命を見つけるだろう」


「それは淳が女子に本命がいないからだろう。なぜ本命の女子を作ろとしないんだ?」


「俺も特定の女子と恋をしたいと思っている……でも運命の女子でないとダメなんだ」


「以前から質問したかったんだけどさ……運命の女子ってなんだ?」



 そう質問すると淳の笑顔が消えて、少し暗い顔をする。



「実は俺にもわからないんだ……出会った時に電流が走るとか、出会った時に予感がするとかいうじゃないか」


「そんなもの迷信に決まってるだろう。お前の目の前には、美緒と夏希という美少女が2人もいるんだぞ。2人のことを何とも思っていないのか?」


「美緒は才女で、そつのない美少女だと思う。夏希は包容力のある美少女だと思ってる」


「美緒と夏希、どちらも嫌いか?」


「そんなことあるはずないだろう。2人共、美少女だし、友達だから大好きだよ。それ以上のことは考えたことはない」



 それを聞いて夏希と美緒は顔を真っ赤にして、淳から目を逸らしている。


 優が俺の布団に潜り込んで、俺の枕に頬をスリスリしている。

何をやってるんだ?



「深く考えることないじゃん。友達から発展する恋もあるんだよ。淳は一目惚れに憧れすぎてるんだよ。だから目の前にいる皆から目を逸らしてるだけじゃん」



 優の言っていることが当たっている気がするな。

淳はあまりにも一目惚れに憧れすぎているように俺も思う。

優は俺の枕を抱きしめながら、話を続ける。



「一目惚れなんてさー。それで相手の良い所も、悪い所もわかんないじゃん。付き合ってみて初めて相手の長所も短所もわかると思うんだー。たっくんは長所ばっかりだけど。たっくんは私の旦那様になるんだもん」



 優よ……まだ付き合って半月も経っていないんだぞ。

勝手に俺を旦那様にするな。

もうお前の中では結婚式は始まっているのか。


 淳は優の言葉を聞いて考え込む。

そして、目が覚めたように俺達を見る。



「俺が間違っていたよ。今まで女子の皆に悪いことをしていた。反省する。これからはもっと女子の気持ちを考えて行動するようにするよ。そして、まずは付き合ってみようと思う」



 夏希が優しい目で微笑んで、小さく手を叩く。

美緒も夏希と一緒に手を叩く。



「淳が女子と付き合う気になったと知ったら、女子全員が喜ぶわ。皆、相手にされていないって残念がっていたもの。良かった。これで女子の皆に良い報告ができるわ」


「ちょっと待ってくれ。多くの女子達に押しかけられても困る。俺は女子と付き合ったことがないんだ。だから美緒、夏希、俺に女子との付き合い方を教えてくれ」



 おいおい……淳、俺でさえ優1人だけだというのに、いっぺんに美緒と夏希と付き合おうと言うのか。男子から刺されても文句は言えないぞ。


 夏希と美緒はそれを聞いて、顔を真っ赤に染めて俯いて体をモジモジとしている。



「私達も淳のこと、あまり知らないし……教えられることは少ないと思う。でも女性心は教えられるかもしれない

わね……あくまで友達としての助言だからね」


「夏希の言うとおりね。私も友達としてなら、協力してあげる」



 それを聞いた淳は嬉しそうに笑みを浮かべる。

これで美少女2人をゲットか……イケメンはこれだから……


 普通は俺や優に付き合い方を聞くのが妥当だろう。

なぜ、俺達に聞かないんだ。



「淳……なぜ既に付き合っている俺や優には聞かないんだ?」


「2人を見ていると特殊すぎて、参考にならないと思ったから……夏希や美緒のほうが普通の女子の感覚を教えてくれそうだろう」



 それを聞いた優が俺の枕を淳に放り投げる。



「私のどこが特殊だっつーの。私はたっくんだけを想って、たっくんだけに尽くして、私にはたっくんだけなだけじゃない」



 優……お前が言えば言うほど、俺達の関係が特殊に聞こえるからやめてくれ。


 博士がのっそりと座りなおし、美緒と夏希に深々と頭をさげる。



「私にも、女心をご教授願いたい。お願いいたします」



 そういえば、ここにエロ博士がいるのを忘れていた。

夏希と美緒も博士から距離を取るように縮こまっている。

夏希は可哀そうに思ったのか、博士に助言する。



「博士……まずは女好きを直して。後はスケベ心をなくしてちょうだい。そうすれば普通の男子みたいになれるわ」


「私の心から女好きとエロを失えば、何も残らないではないですか。女好きこそ我が魂。エロは私の原動力ですぞ」



 それを聞いた夏希、美緒、優の3人の女子が引いている。

さすがの俺も少し引いた。

さすがは博士。

エロ道一途だな。

残念ながら、女子と付き合える可能性は0だ。


 淳は博士の肩をポンと叩き、暖かい目で見つめる。



「博士、それだとダメなようだぞ。俺達は間違っていたんだ。女子に嫌われないようにしないとな。それに女心を理解しないといけないみたいだぞ。博士も一緒に女心を学ぼう」


「そうですな。私は早く彼女がほしいものです。彼女ができてからエロに走りましょう。頑張りましょう淳」



 淳と博士が固い握手を交わしている。

しかし淳の言っている意味と博士が受け取った意味はまるで違うのだが……

2人が仲良くなるならそれでいいか……


 優は淳から俺の枕を返してもらって、抱き枕にして2人を見ている。

夏希と美緒はクスクスと笑っている。

夏希は楽し気に博士に微笑んでいる。



「博士……頑張ってね」


「ハウ……こんな天使の笑顔をいただけるとは思わなかったですぞ。私も頑張ります」



 優も博士を見てニッコリと笑む。



「博士ー、頑張れー」



「ハウ……2人の美少女から元気をいただくとは、エロを止めると良いことが起こるのですな。これからはエロ博士は止めて普通の男子に戻りますぞ」



 博士の宣言を聞いて、5人が拍手をする。

これで1人の変人がまともな道を歩み出すことになった。

はたして淳と博士に彼女ができるかどうか……

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