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30話 夕飯のバーべキュー

 夕方になり薪を斧で割る作業を分担ですることになった。

ほとんどの男子生徒達は斧を持ったこともない。

大振りをされて、怪我でもされたら学校側の責任になる。

そのため先生達は斧を使ったことのある経験者を探した。


 俺は父親とキャンプに行った時に薪割りのために斧を使ったことがある。

そのため、先生達が探している時に挙手をしてしまった。


 そのことが原因で薪割り係を押し付けられることになった。

バーべキュウーの用意が始まると同時に薪割りが始まった。


 俺の近くにはある程度長さが揃えられている薪が積まれている。

その中から1本の薪を選んで、薪の端に斧を少しだけ打ち込む。

そして、薪に斧が十分にくい込んでいることを確かめて、

大振りに斧を振って、下の台に薪をぶつけると、薪は綺麗に2つに切れた。

そして、その2つに割れた薪をさらに2等分にする。


 淳が薪を台に上に立たせておくのを手伝ってくれる。



「拓哉……上手いもんだな。斧はそうやって使うのか?」


「知らねー。親父に教わっただけだからな」



 そう言って、俺は薪を割り続ける。

ある程度の量の薪が割れると、淳が各班のバーベキューをする釜土へ薪を置いていく。

2学年全体の釜土に薪を配り終わるまで、薪割りは終わらない。



「なんで俺だけ……こんな貧乏くじをひかないといけないんだ」


「そう言うなって……拓哉のおかげで皆喜んでるんだからさ」



 男性教師達も薪割りをしているが、拓哉よりも下手だ。

拓哉の薪のほうが素早くてきれいに斬ってある。


 別に俺だけが薪割りをしているわけではない。

男性教師達も、斧の慣れた男子達も、ぞれぞれに分担して薪を割っていく。



「けっこう斧で薪を割れる男子って少ないのな」


「斧なんて最近の男子は使ったりしないよ。ゲームの中なら別だけどさ」



 なるほど……ロールプレイングゲームの中なら斧は使うかもしれないな。

しかし、あれは斧を振っているだけで、斧で敵を倒しているように見えないんだが……


 女子達が体操服姿で現れた。これからバーべキューに使う料理の具材を包丁で切っていくらしい。

優は手慣れたもので、肉や野菜を綺麗に切っていく。

夏希と美緒もとても上手い。


 それに比べて麗華のギャル班は包丁を持ったことのない女子がほとんどで、茉奈先生から包丁の切り方を

学んでいる最中だ。


 今回の班編成では男子は俺、淳、エロ博士、女子は優、美緒、夏希が1グループをなっている。

優、夏希、美緒も料理が上手いから、バーベキューの味付けは3人に任せておいたほうがいいだろう。


 エロ博士は薪割りも手伝わないで、3人の美少女達から少し離れたところで、スマホのシャッターを押している。

あいつは何しに林間学校へ来たんだろう……


 それでも拓哉の数少ない友人の1人ではある。

エロ博士のことは見なかったことにしよう。


 乾いた小枝を集めて、着火式のライターで火を点けようとしているようだ。

風が少しあり、うまく火を点けることができない。

俺は地面にある枯葉を集めて、枯葉で小さな山を作って、ライダーで点火する。

1枚の葉に火が点いた。

その火が少し大きくなってから枯れ葉の山へ火を移す。

そして、その上から、小枝を置いていくと、うまく火が点いた。

その上に薪を置いて、火を大きくしていく。


 麗華の班はいくらやっても火が点かない。

しかたないので、俺が火を点けてやる。

するとギャル達から歓声があがった。



「拓哉にこういう特技があるなんて思ってもみなかったわ」


「昔、親父から教わったことがあるだけだ……これぐらいのことは簡単だ」


「ありがとう……お礼をいうわ。私達のグループの男子達……チャラ男の割には役に立たないのよね」



 それは俺も気付いた。

しかし、それをいうと男子は傷つく。

だから、あえてそのことには触れていなかった。

麗華は冷たい視線をチャラ男達に送りながら、冷たく言い放つ。

チャラ男達が少し可哀そうだった。


 優が元気に俺を誘いにくる。



「バーべキューの用意終わったよ。たっくんも早く食べようよ」


「ああ……今行く」



 俺は優と一緒に自分のグループへ戻っていくと、紙の取り皿、紙の器、紙コップまですべてキレイに並べられて

いる。使い捨てようの箸やフォークも置かれていた。


 優は自分皿を持っていなくて、全部、俺の皿からバーベキューの料理を取っていく。



「こら優……自分でも取り皿や器を用意しろよ。俺のところから肉や野菜を取っていくな」


「いいじゃない。2人で食べたほうが美味しいじゃん」



 確かにそれもいいのだが、淳達の視線が気になる。

夏希と美緒は顔を赤しくして、俺と優を見ている。

淳は俺と優を見てニヤニヤと笑っている。

エロ博士はなぜか息をハァハァと上気させていた。



「とにかく自分の分は自分で取りなさい。人の皿から取っていくのは禁止」


「ブー。たっくんのイケズ」



 それを聞いた淳、夏希、美緒達が笑っている。


 空には星空が瞬き始めた。

自分達の家で見るよりも空が近くにあり、大きく見える。



「空がとってもきれいだね」


「ああ……そうだな。小さな星まできれいに見える」



 美緒と夏希も空を眺めて、微笑んでいる。

俺の隣に優が立って、寄り添うにように空を眺めた。



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