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22話 中間考査と受験勉強

 HRに茉奈先生から1週間後に中間考査のテストがあることが告げられる。

もうすぐ中間考査のテストがあることはわかっていたが、後1週間となると心が焦る。



「淳……中間考査のテストだってさ……おまえどうする?」


「俺か……今まで通りの勉強で大丈夫だろう。拓哉は猛勉強しないとな」



 そういえば淳はテストの成績が良かったんだっけ……

イケメンの上に勉強もできるなんてズルい。


 優を見ると、優は俺の視線を感じて、振り返ってニッコリと笑う。



「優は中間考査のテスト準備はできているのか? この学校のテストは難しいぞ」


「へへーん。私は編入生だよ。テストの成績は常に上位にいるから大丈夫。拓哉こそ心配なんでしょう」



 クソっ……聞いた相手が悪かった。

この学校に編入してくるということは、編入試験を優は合格したということだ。

この学校の偏差値はそれなりに高い。

優も勉強では俺よりも上の成績ということか。


 美緒は才女で学年NO1の学力を誇っている。

夏希もそれなりに頭が良い。


 中間考査のテスト勉強を一番しないといけないのは俺じゃないか。

今まで優のことが色々あって、勉強に集中していなかった。

今度のテストの点数はヤバいかもしれない。


 昼休憩のチャイムが鳴って1人で学食へ向かう。

すると淳と博士が追いかけてきた。



「1人で学食へ行くなよ。俺達も誘えよ」


「私も拓哉に誘ってほしいものですな。拓哉が一緒に食べてくれないと私は1人になってしまう」


「いや……中間考査のことを考えていてな……」



 今日から毎日、家に戻ってからテスト勉強の日々が始まるかと思うと頭が痛くなる。

俺は成績は中の中だが、決して頭が良いほうではない。



「それは私も一緒でありましょう。私も赤点ギリギリの成績ですからな」



 おお……そういえば博士はエロ以外に興味がない。

だから授業中も女子を観察して過ごしている。

だからテスト結果は常に赤点ギリギリだ。


 俺よりも点数の悪い者がいた。

少しだけ心が安堵する。



「博士と比べて、安心してどうするんだ。平均点を超えるぐらいの点数は取れよ」



 頭の良い淳にはわからないのだろう。

平均点よりも上の点数を獲得するには、今日から毎日深夜までの勉強が必要だ。



「テストくらいでそんなに暗い顔になるなよ」



 頭の良いイケメンに俺の心は伝わらない。

博士ならわかってくれるはずだ。


 そんなことを考えているうちに学食へ着いた。

発券機で食券を買って、いつもの列にならぶ。

今日の日替わり定食は八宝菜定食だ。


 トレイに日替わり定食を乗せてもらい、4人がけテーブルに3人で座る。

博士は日替わり定食の大盛を、ガツガツと美味しそうに食べていく。



「博士は中間考査の対策はどうするんだ?」


「私ですか……赤点さえ回避できたらそれでよろしいでしょう」


「博士は大学はどうするんだ?」


「何を言っているのですか? 私は大学には進学しません。アニメーションの専門学校へ入学するのですよ」



 しまった……エロ博士はアニメオタクでもあった。

専門学校へ入学するつもりなのか……

淳が定食を食べ終わって、俺に声をかけてくる。



「拓哉はどうするんだ? 大学進学なら、今の成績では難しいぞ。これからもっと良い成績を取っていく必要がある。それに大学進学するための受験勉強も必要だ」


「淳はどうしてるんだよ?」


「俺は高校の勉強の他に大学の受験勉強も進めているぞ。俺は大学へ進学するつもりだからな」



 今まで大学進学のことなんて考えてもいなかったよ。

受験勉強なんて高校3年生になってからすればいいと思っていた。

淳が今から受験勉強をしているとは思ってもいなかった。



「俺達の高校も一応は進学校だが、高校の授業だけでは大学進学は無理だからな」



 淳……それは本当なのか……

淳がダメなら、俺はもっとダメじゃないか。



「俺は2学期に入ったら、予備校へ通おうと思ってるんだ。拓哉も考えておけよ」



 淳が俺よりも大人に見える。

今までそんなことも考えたことがなかった。


 日替わり定食を食べ終わって、3人で教室へ戻る。

博士と淳が何かを話しているが、俺は淳の言葉にショックを受けて、何も耳に入ってこない。

いつの間にか教室に着いていた。


 俺の手を握る者がいる。振り向くと優が優しく微笑んでいた。



「何を暗い顔してるの。まだ夏希と美緒とお弁当食べてるの。たっくんも夏希の席まで来て」



 俺は優と手を握ったまま、夏希の席へ向かう。

夏希と美緒が楽しそうにお弁当を食べていた。

俺は何も言わずに優の隣に座る。


 夏希が俺の顔を見て不思議そうな表情をする。



「拓哉が真剣に落ち込んでいるなんて珍しいわね。何があったの?」



 夏希と美緒は頭が良い。

優もそれなりに頭が良いだろう。

俺だけ大学受験不合格になるのは嫌だ。



「夏希と美緒は大学への受験勉強は始めてるのか?」



 美緒は髪の毛を手で触りながら、気軽に答える。



「当たり前じゃない。高校の成績は高校の成績。大学受験の勉強は別にしているわ。夏希だってそうでしょう?」


「そうね。高校のテスト勉強もしているけど、大学への受験勉強は別にしているわね。いつも寝るのは深夜よ」



 やはり2人共、大学への受験勉強は別でしているらしい。

俺だけが知らなかったんだ……



「優はどうなんだ?」


「私も夏希と美緒と一緒かな。夜の0時には寝ちゃうけどね」



 優まで大学への準備を進めていたとは……

俺はこれからどうすればいいんだ。

あまりの俺の暗さに優が心配顔で覗いてくる。



「今まで大学への受験勉強は高校3年生からでいいと思ってた。高校の成績も中の中ぐらいで、あまり良くない。淳に指摘されて、このままではマズイということに気が付いた」



 美緒と夏希が、そんな俺を見て微笑んでいる。



「これからでも十分に取り返しのきく期間よ。早く取り掛かればそれだけ自分が楽できるだけだから」


「美緒の言う通り。これからでも十分間に合うわ。これからが勝負なんだから」



 そうなのか…・・

これからでも大丈夫なのか。

淳の奴、そこまで教えておけよ。

ビビったじゃねーか。


 それにしても大学受験の勉強なんてどうすればいいんだ?

本屋に行って参考書でも買ってくればいいのか?

俺が勉強……絶対にやるわけねーし……


 優が俺の腕に、自分の腕を絡ませて、にっこりと笑う。



「私を頼ってくれたらいいじゃん。受験勉強なら私もやってるし」



 おおーそうか……優が救いの女神に見える。



「優……頼む。俺に勉強を教えてくれ」


「うん……いいよ。帰ったら一緒に勉強しよう」



 優なら俺の頭に合わせた勉強方法で教えてくれるはずだ。

神は俺を見捨てていなかった。


 優は嬉しそうに俺に体を預けて寄り添ってくる。



「これでたっくんの家に深夜遅くまでいてもいいね。たっくんから許可も貰えたし……私嬉しい……ヤッター!」



 何?

深夜遅くまで優が俺の家にいる……

そこまで考えていなかった。

段々と本当に優から抜け出せなくなってきているような気がする。


 美緒と夏希が、そんな俺達を見てクスクスと笑っていた。

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