遠くへ旅立った君へ
※遥彼方様主催の「ほころび、解ける春」企画に参加しています。
道夫くんへ
あなたの写真を、町で唯一の美容院の雑誌で見ました。
はじめは、別人かと思いましたよ。
お店のおばさんに言われて、初めて気付きました。
中学生の頃のあなたは、詰襟をホックまで閉めるような真面目な人でした。
そんなあなたが、髪を金色に染め、シャツの襟元をはだけさせ、破れたジーンズを履くなんて。
もう、すっかりシティーボーイになってしまったわね。
見た目だけじゃなくて、性格まで変わってしまったわ。
小さい頃から甘い物は苦手だと言っていたのに、今ではチョコレートが好きなのね。
剣道一筋で軟派なことが嫌いだったあなたは、どこへ行ってしまったの?
でも、おかげで過去と訣別する勇気が出ました。
あなたのことは青春の一ページとしておいて、わたしは次のページに進むことにします。
きっと、三つ編みが好きだってことも忘れてるでしょう?
だから、毛先を揃える程度にしようと考えてたのをやめて、思い切ってショートカットにするわ。
実は、連絡が付かなくなったあとに、お見合いの話が来てたの。
お相手は隣町にあるクリーニング屋さんの一人息子さんで、裏表のない折り目正しい人なのよ。
今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを
人づてならで 言ふよしもがな
さようなら。
わたしの初恋の君。
この手紙は、卒業アルバムの最後に挟んでおきます。
もうすぐ三条姓になる
雅子より
※解説
六段目の和歌は、左京大夫道雅の和歌です。
道雅は、三条院の皇女である当子内親王のもとへ通っていました。
二人の名前は、彼から一文字ずつとりました。




