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フォーカス 一番暑かったあの夏  作者: 貴名 百合埜
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海  2

ビーチに向かう途中にあった、道の駅オリーブ園で少し早めの昼食を摂った。

結局朝を食べていなかったので、俺が空腹を訴えたからだ。

開店直後のレストランで二人揃ってパスタを食べた。

小豆島の名産に有名なオリーブがある。取り立てオリーブオイルをたっぷり使ったバスタ!

その謳い文句に惹かれた俺達だった。



微妙なパスタを完食した俺達はすぐにまた出発して、そこから10分ほど走った場所にある海水浴場、オリーブビーチに向かった。


小豆島の名産であるオリーブ絡みの名前があちこちの施設についていた。

駐車場に着き、車を降りた俺は着替えを持って更衣室にすぐに移動する。

到着して5分後には俺は砂浜に立っていた。

波は穏やかで、海水は比較的澄んでいた

沖の方には田ノ浦半島が見える。


オリーブビーチの砂浜にはレンタルのビーチパラソルの花があちこちに咲いていた。

夏の海らしく、家族連れ、カップル、友人同士と賑わっていた。海の家からはソースの焦げた匂いが漂っていた。


ビーチサンダルの上にバスタオルを小さく畳んで置く。

そしてドバドバと日焼け止めを手のひらに出し、体に塗りたくると俺は海へと走った。

夏の日差しで砂浜は熱く焼けていて、足の裏が火傷しそうなくらいに熱を持っていた。

「アツアツアツ」

熱さに叫びながら俺は海へ向かった。

そういや、水虫の人は夏の砂浜を裸足で歩くと治るとか聞いたことあるな。

確かにこの熱さだと治りそうだわ。俺は水虫じゃないけどね。


海に入ると腰までの深さになるまで進み、俺は肩まで一気に浸かり体を水温に馴染ませた。

じわーっと冷たさが体に染み込む。そして体が慣れたと同時に俺は泳ぎだした。

結構本気で泳ぐ。目指すは沖筏おきいかだだ。


砂浜から30メートル程。1分程度でたどり着いた。

プラスチックのボックスを組み合わせた5メートル四方くらいの広さでそれぞれ対角にロープで海底に固定されている。海の上の休憩所的な場所だ。

筏に乗り込むと、元気そうな小学生くらいの男の子と父親の先客がいた。

軽く挨拶をして俺は筏の中央に進み座り込んだ。


少し後ろに手をついて体をのけぞらせて、太陽を体いっぱいに浴びる。

目を閉じても、夏の日は自分の居場所を俺に伝えてくる。

時折吹く潮風と心地よい揺れが、しばし暑さを忘れさせてくれていた。

しばらくすると子供の叫び声と共に、海に飛び込む音かしてきた。

さっきの子供がお父さんと一緒に海に戻ったようだ。

貸し切り状態になった筏の上で俺は仰向けに寝転んだ。

じわっと体が汗ばんできた。少し眠くなってきた。俺は少し眠りに入っていった。



揺れてる。さっきよりも筏が揺れてきている気がする。

いや、気のせいじゃない。めっちゃ揺れてる!だんだん意識がはっきりしてきた。


目を開けて体を起こす。もしや!

やっぱりだ。

ゆき兄が嬉しそうな笑顔を浮かべて筏を揺らしていた。

「何してんだよ!」

文句を言うと笑顔のまま、ゆき兄が筏に上がってきた。

「わざわざ起こしてあげたのに」

俺も起き上がる。そして筏の中心で向かい合う。

そのまま海恒例の相撲勝負が始まった。と思ったら俺の体はウェイトリフティングの選手が持ち上げるバーベルの様にゆき兄の頭上にあった。

「あれ?」

そしてそのまま海に頭から放り投げられた。

膝の怪我の影響でまだ全力で踏ん張れないとしてもなんだよこれは…


その後も勝負に挑んだけど、結局全て海へ投げ込まれてしまった。

次こそ本当の勝負だ!と思った時に他の人も筏に上がった為、そのまま俺の完敗で数年ぶりの勝負は終了した。

「くっそ、ちょっとは勝負になると思ったのに!」

背は俺の方がいつの間にか高くなった。部活でけっこう体も鍛えれた。それでもまだゆき兄には勝てなかったのはちょっとショックだった。なんでこの人は文系の仕事をしてるのに強いんだ?

「いや、やっぱ強くなってたぞ。すこし焦ったわ」

「ほんまに?」

「ああ、ほんまに。次やったらもうやばいかな」

その言葉を聞いて少し嬉しくなった。

「次は俺が勝つし!」

「楽しみにしてる、でも兄の威厳のためにも簡単には負けへんからな」

そう言うと、ゆき兄は綺麗なフォームで頭から海へ飛び込んだ。

俺もダッシュして足から飛び込む。

そのまま俺達は競うように浜辺へ泳ぎだした。


夏の長い昼間もようやく日が傾き始めていた。

















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