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フォーカス 一番暑かったあの夏  作者: 貴名 百合埜
13/31

憩い

「佐藤先輩、格好良かったよね。なんか愛想の無い感じが逆にいけてる!」

「うん、わかるわかる。背も高いしなんかクールだし」

「あれはクールじゃなくて中身が冷たい人間やから、いかんよ(だめよ)」

後輩達が幸太を褒めると、即座に今野が否定する。

ご飯をまずいと言われたことをまだ根に持っているようだった。


宿舎に戻ってからの写真部の女子部員達は、バーベキュー場での話題で盛り上がっていた。

各グループに分かれ、それぞれが大きな声で談笑していた。


写真部の活動内容には学校広報の写真撮影も含まれている為に、各部活の大会などには可能な限り訪れていた。その為に写真部員は他の部活活動者とも大体は面識があった。幸太が大北を写真部と知っていたのもそれでだ。


二ヶ月前、サッカー部の地区予選大会にも写真部は応援も兼ねて撮影に行っていた。

その試合は負けはしたものの、幸太の活躍もあり優勝候補に一歩も引けを取らない白熱した試合だった。

後半途中で幸太は負傷し途中退場になったが、もしそのアクシデントが無ければ贔屓目に見てもおそらくは勝ってたであろう。それくらいに惜しい試合だった。幸太達に勝った学校はそのまま地区大会を優勝し、その後の全国大会でベスト4になった。


その試合の熱が写真部の女子にはまだ色濃く残っていたようだった。

夏向が幸太の事を意識し始めたのもその時からだったが、彼女の場合は試合の活躍だけではなく試合後の彼のある姿を見てからだった。



「柏本先輩って佐藤先輩と同じクラスですよね?今度私と2ショット撮ってもらえるように頼んでくれません?」

2年の女子部員が夏向を拝みながら話しかける。

「う、うん。機会があったら、言ってみるね」

ぎこちない笑顔を浮かべて夏向は返事をする。

そんな機会なんてないと思う…私の事覚えてもないくらいやもん。

心の中で夏向は呟く。


「あ、そうそう夏向さ佐藤のお兄さんと何を話してたん?」

今野が夏向の横に来て、目を輝かせながら話し出す。

「なんか親密そうに話してたように見えたけどさ!」

女子部員が全員夏向の方を見る。どうやらみんな気になっていたようだった。

みんなの視線を感じて、夏向は恥ずかしくて赤面してしまった。

「大したことは話してないけん。知り合いの人にうちが似てるみたいで、色々聞かれただけ」

「色々って?」

今野が突っ込んで質問する。

「だから、親戚にいない?とか。ほんとそういう話しかしとらんと思う…あ、お肉の味付けとか聞いたかも。ものすごく美味しかったけんね。そしたら岩塩がどうとか」

「ようするに、ただの世間話をしてたってわけやね。なんかいい感じに見えたけど、気のせいかぁ。LINE交換くらいはしたん?」

「全然。ID聞かれもせんかったし。後は…今日ビーチですれ違わなかったとか。あっ…」

「今日って、夏向はビーチに行ってないのにね。夏向って似た人多いんかな。でもねその昔の知り合いってどうも元カノらしいよ」

夏向が大きく目を見開いた。明らかに動揺してるのが誰にでもわかるくらいだった。

その表情を見て今野が突っ込んできた。


「その顔はビーチへは行ったようですな」

「違うんよ。最初はビーチで子供を撮ってたら沖に佐藤君とお兄さんがいて…」

どんどんと夏向の声が小さくなる。それに合わせて今野も小声で話す。


「佐藤もいたん?それ聞いてないって!」

「いたけど、向こうは気づいてないと思ってたけん。まさかお兄さんがうちに気づいたとは思わんかったから。それに初対面だったし」

「なるほどね。その時にさっきの写真を撮ったわけね」

「え!見たん?!」

夏向はびっくりして今野の顔をみた。声が大きくなり、後輩達が夏向達を見る。


夏向はうつむき加減で今野をみた。

そして彼女の表情を見てカマをかけられたことに気づいた。


「ふ~~ん、夏向がまさかねぇ。ひょっとしてとは思っていたけどさ」

「そんなんじゃないけん、見かけたのもたまたまやから。ほんまに偶然やからね…」

「はいはい、またその件に関してはじっくりと聞かせてもらうわ。じゃあ先にやることをやるとしますか」


今野はまだ雑談に耽っている後輩達に作業に取り掛かるように指示する。

夏向も大きく深呼吸して動揺した心を落ち着かせようとした。

「休憩終了ね!それじゃ、みんな作業の続きにかかって!」

「了解でーす!」


食事前に全員がパソコンに今日撮った画像を取り込んでいた。

次は自分の自信作を選び出し、提出する作品を決める作業にかかる。

自分で決めれない人は、今野や夏向がアドバイスして作業を進行させていた。

それぞれが真剣に集中していた。写真部の古豪校としてのプライドが部員たちには宿っていた。

活動はやらされるものではなく、自分からするもの。

この精神が写真部としての伝統になっていた。


2時間程で、部員が顧問に提出する作品の選択を終えた人た増えてきた。

そのタイミングで今野がある事に気づいた。

「さっきから、顧問が全然姿を見せないんやけどどこにおるん?」

女子部員はお互いに顔を見合わせる。

全員が行方を知らなかった。顧問がいなければ、作業がここで止まってしまう。夕食後に宿舎に戻った時の点呼はしていたがその後から行方がわからなくなっていた。今野のLINEにも既読がつかない。


「男子の部屋にもいないって言ってます」

後輩たちが男子部員とLINEで確認する。今野も大北にLINEして聞いてみた

しばらくすると「どっかへ上機嫌で出かけたらしい」

と返事が来た。男子は作業をすでに終えて、ウノ大会が絶賛開催中らしい。

「どうする、夏向」

「うち、顧問を外で探してこようかな。ついでに夜景とかも撮ってきたい」

「一人で危なくない?一緒に行こうか?」

「大丈夫やけん!なんかあったらすぐにLINE送るから安心して。それに敷地内から出ないけんね」

夏向は愛機の一眼レフを首からぶら下げて立ち上がる。ついでに髪を手首に付けていたシュシュで手早くポニーテールにまとめた。


「じゃあ、まずは顧問を探してくる」

「うち達は作業終わったら、ウノ大会に乱入してくるわ。何があったらすぐにLINEしてよ?」

「はいはい、了解。じゃあ男子によろしくね」

今野に見送られながら、彼女は夜道を歩き出した。














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