Out Cast ~Cracking the shell~
❝僕は受け入れられない、基本個性から外れた存在、誰も気にかけてはくれない、誰も僕を望んではいない❞
白黒ツートンカラーの髪に灰色の瞳の少年は常に独りだった。別に好んでいるわけではない、誰も友達の輪の中に入れてくれないのだ。彼は所謂発達障害、生まれつきのハンディキャップ持ちだ。「お前は俺達とは違うから遊んじゃいけないって、母さん言っていた」「普通じゃない紛い物と仲良くなる気はないから」と相手から拒絶される。それが一番嫌だが、仲良くしたいということが一番の願望であり欲求。
個性の統一を思想に掲げるこの国は何事も従うことを基本に逆らうことは許されない、規定内には居ない人間はすべて排除される。その環境下で生きてきた者達はまるで厳しく躾けられた飼い犬だ。上の考えのままに生き続ける、生きづらさを感じている者もいるが、圧力に恐れて抱えこむこともしばしば。実際にこの絶対王政を敷いている政府に叛逆した人々は全員情報を基に逃げた場所を特定され、友人、家族諸共処刑されているのだ。自分のせいで大切なものを失うよりも力に頭を垂れるしかないのだろう。
家で両親に説明しても、「お前は生まれつき違うから」口封じされてしまう。信頼している人たちにもそうやって否定されてきた。親子だからこそ受け入れてほしい部分もあるのに無責任なことをぶっかけて大義名分のもとに葬らないでほしい。段々と信じられる存在ではなくなってくるのも必然だっただろう。
公園のブランコで一人、揺らされ続ける彼は俯き、足元をじっと見つめている。時間が過ぎて陽の傾きによる影の変化を観察していた灰色の髪に黒い瞳の少年を見て通行人としてアスファルトを歩いていた人がこっちをみて立ち止まった。
そこに現れた一人の青年。「どうした、お前元気なさそうな顔してよ」声の方向に振り向けば自分達とは異なる容姿に驚いを隠せない。スカイブルーの髪にエメラルドグリーンの瞳を宿していた。棒付きキャンディを差し出したが、食べる気が起きず、いらないと言ってしまう。「ん~、子供って難しいなぁ、お菓子かなんかあげれば元気になると思ったんだけどな」「知らない人にものを貰っちゃダメだってお母さんが」「困ったな普通にいい子だ」「?」
隣のブランコに腰を掛けた彼の真意が分からない。もしかして僕を気にかけてくれたのだろうか。
「生きづらいなこの国は、規則だの云云、個人の尊重すら許されない群のことが第一に考える身勝手さ、お前は生きづらいとは思わないのか?」
「思っているよ、けど」
思わず口に出そうとした言葉を押しとめる。
「けど?なんだ?言ってみろ」
「そうするしかないんだよ」
再び地面に対して視線を向けて俯いた少年。
「あのな、俺はそういう生き方が大っ嫌いだ、どう生きようが、自分の勝手だ。意思に反してまでもそう生きる意味はあるのか?自分自身を否定してまで従い続ける必要があるのか?」
「本当は思ってないよ、こんな発達障害を抱えた僕でも受け入れてほしい」
「発達障害?それがどうした、それも個性の一部だ。自分とは違うからって迫害する奴がいてもな、それは只の偏見で柵を引いているだけ、考えは違っても分かってもらえばいいんだ、難しい話だけどな」
「俺は個性ばかりを統制する国に嫌気がする、ならそれをぶっ壊した方がいいだろう。お前は己の為に他人を壊せるか?」
…!
「こ...壊せる、いや壊したい!」
「いい心意義だ、改めて自己紹介と行こうか、俺はジェド、ジェド=フェイア。おチビさんお前は?」
「モノ=リート、モノでいいよ」
これは統制を強いて個性を踏み消そうとする思想を嫌う自由気ままな青年とハンディキャップを抱える少年の小さな叛逆の物語。これが歴史を変える一大事の始まりであることは誰も知らない。




