雪と桜と搭の主
「い、いや違いますよ!!僕は夜雪とい、いいます...たぶん同業者だとは思うンですが...」
夜雪が恐る恐る眉間に突きつけられた銃をどかそうとする。
「触らないで!あなたもDark Nightの一人なのね?暗殺隊希望でここに来たけどあなたも暗殺隊希望?」
夜桜と名乗る女が銃をしまう。
「そうです。暗殺隊希望でここへきました。」
夜雪が落ち着きを取り戻していった。
「なら、あなたが私のペアね。」
「え?」
夜雪は耳を疑った。暗殺部隊でペアを組んで行動するなど聞かされてないからだ。
「さ、この搭の主を倒しましょ。」
夜桜は何も気に留めず言った。
「この搭の最上階、50階に搭の主、バベルがいます。そ、そいつを暗殺できれば任務成功なんですがもう暗殺どころではなくて...一気に50階まで行っちゃいましょう。」
夜雪がそういうと地面を蹴り搭の壁に張り付いた。搭は一階層ごとに少しずつ小さくなっていてちょっとした段差があり、夜雪はそこに指を置いた。
「わ、私も行く...の?」
夜雪がうなずくと夜桜は搭の壁を登り走り始めた。夜雪は驚きで手を離してしまう。が、同じく壁を走り登る。
夜桜と夜雪は少しの搭の隙間を狙い、隙間で踏み切りスピードを上げていく。
そして、49階へ到着すると50階への隙間を手でつかみぶら下がる。夜雪が異能を発動し、いつでも戦闘態勢に入れるようにする。
すると夜桜が着物の懐からアンカー銃を取り出し、50階の窓を狙って撃つ。見事命中し、夜桜が先に窓を割ってはいる。
「大胆だねぇ~やっぱ。飽きないよ君達にはぁ~!!」
バベルがそういうと夜桜の方向を向いて「君は誰だ?」と呟いた。
「私は夜桜。暗殺部隊の新入りよ。どうせあなたは死ぬのだからこんなこと知っても得しないよね」
夜桜が可憐に言い放つとどこからかマシンガンを構えバベルめがけ乱射した。
「僕もいることを忘れるなぁ!!」
夜雪が異能力【雪舞】を使いながら言った。
夜桜がバベルめがけマシンガンを撃ち、夜雪がバベルめがけ雪鋭槍を放つ。
圧倒的に夜雪夜桜ペアが有利に思えたがバベルにとっては人が一人増えた程度ではまったく効果を示さなかった。むしろバベルにとって有利でもあった。
「私はね、若くて美人なお姉さんが大好きなんだ。そう、君みたいな子がタイプなんだよね。そして性格もツンデレっぽくて大好きだ!」
バベルが一人で言って興奮すると骸骨のマスクを捨てた。
「異能力覚醒! 混沌のジグラート!」
バベルはどんどん拡大し、夜雪らの何倍かもの大きさになった。
そして、巨大化された両手が―腕はない―あり、心臓部位らへんに紫に光る玉があった。それを囲むようにして肋骨のようなものがあり、脊髄が腰あたりから突き出て―腰から下の足などはない―それが尻尾となり、これまた紫色の心臓部位のものよりもっと大きい真珠のようなものを守るようにしていた。そしてバベルの念力によって剣が浮き、搭の一部が浮き、バベルは蝶のような紫と黒の羽を、魔法陣のようななにかを背中に纏い、そこに存在した。
人間体の姿からは想像もできないような姿になった。極めつけの顔が黄金の異質な形をした冠を被り、真っ白な顔に不気味なほどに裂けた口がにやりと笑っていた。目は見開いていた。
とても不気味な顔であった。
「これが...異能力の...覚醒....」
半ば呆然と立ち尽くすようにして夜雪が呟いた。
「構わないっ!死ね!!」
夜桜はそう叫ぶと紫玉めがけて短機関銃を撃ち放った。しかし、どちらも周りを謎の波動のようなものが纏っており、さらに、時空断絶によって銃弾は届く前に絶たれてしまった。
「嘘...でしょ.....」
夜桜がその脅威におびえながらも意を決して、短機関銃を構えた。
「異能力、【雪舞 雪化粧】!!」
夜雪は夜桜に触れた。すると、夜桜の体を雪が纏い、戦隊モノアニメのように雪が夜桜を彩っていた。そして、夜桜の着物は雪化粧の影響をうけて、白い、雪の結晶があしらわれた着物となっていた。同時に、夜桜自身の能力も格段と上がっていた。
夜雪は自分にも雪化粧をした後、バベルの心臓部の紫玉めがけ殴りにかかった。
「面白い、面白いぞ!お前ら!!!」
バベルが興奮しながら巨大化された右手で夜雪を薙ぎ払おうとした―が、それは失敗に終わった。
それは夜雪自身がバベルの攻撃を片手ひとつで受け止めていたからだ。
「雪化粧は、その個人の能力を格段に引き上げることができる技だ。夜桜さん!それは30分しか使えないから頼みます!」
夜雪は空中を蹴り、バベルに接近する。
「なぁ~~ぬぃいい~~??!?!??!?!?!」
夜雪が紫玉めがけ殴る。時空断絶によって防御が張られるが夜雪は力を緩めず、力を込めた。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
夜雪は時空断絶を破り心臓部位へ到達する。夜雪はあわてずに、大量の雪鋭槍で玉を貫いた。
「ぎぃいやあああああああ!!!!!!」
バベルが悲鳴を上げる。夜雪はその瞬間、油断してしまった。夜雪の雪鋭槍はすべて玉を囲む謎の布のようなもので防がれていた。さらに時空断絶が再生してしまい閉じ込められる形になった。
バベルは心臓部位に両手を重ね夜雪を閉じ込めた。玉から協力な波動が来、夜雪は吹き飛ばされた。が、時空断絶によって波動から逃れる術が無くなった。夜雪を紫の布がが襲う。よける術もなくくらってしまう。波動と布のW攻撃で時空断絶を割ってしまう。衝撃で吹っ飛ぶことも許されずバベルの右手に掴まる。
「ぐわぁああ!!」
夜雪は悲鳴をあげる。
バベルが思いっきり夜雪を地面に向けて投げる。搭の地面が破壊され、粉塵が舞う。
夜雪は49階へ落とされた。
「やあ夜桜ちゃん。私の仲間にならないかい?」
バベルは夜桜をつかみにかかる。
「死んで!!」
夜桜は刀を鞘から抜き、つかみにきた左手を一刀両断した。夜雪の雪化粧のおかげもあって威力が増し、バベルの手をますかけ線のように切った。
「痛っ!!やっぱりツンツンしてるところもかわいいなぁ~」
バベルはまったく気にせずに切られた左手で掴もうとする。が、刀をその手にまた突き刺した。
夜雪の異能力によって刀が拡大する。夜桜は左手をそのまま切り裂く。
「いたぁあああ!!!!!!」
バベルは塔全体に響くような声で叫んだ。「もう許さない!お前は俺がじっくり痛めつけて殺すと決めた!!」
バベルは右手で夜桜を掴む。そして搭の壁へ押し付け、背中の魔法陣のようなものから短剣を引き抜く。魔法陣みたいだと思われていたのは短剣をつなげて作った輪だった。そしてその短剣を夜桜の肩に突き刺した。夜桜は悲鳴を上げる。
「いいねえ~!!メインディッシュは後ほどで、オードブルーをいただこうか!!」
バベルは49階にいる夜雪を掴まえた。
バベルは同じく夜雪を塔の壁に押し付けると短剣を夜雪の心臓めがけて突き刺した―が、短剣は夜雪を突き刺すことは無かった。夜雪は雪化したことで攻撃を受け流した。そして、バベルの手からも雪化でぬけた。
「やっとだ....はぁ....これが....僕の.....目的です....外を見てください....ハァ...」
夜雪は息切れしながらも口にした。バベルは窓の外を見る。するとそこにあったのは雪の壁だった。
「まさかっ!!???!?」
「そうです....お気づきのとおり...この搭を鎌倉で囲ったのです...!!!」
夜雪は笑みを浮かべ、搭の外へと行った。
「異能力覚醒! 【雪舞 雪護霊兵】!!」
すると夜雪を大量の雪が囲み巨大化する。そう、搭ほどの大きさに。
「お、おおおお!!面白い!!」
バベルが雪護霊兵に気をとられているといつの間にか夜桜が開放されていた。
「ありがとう、夜雪君。」
雪化粧が夜桜の傷を応急処置として止血している。
「ユキゲショウハ....モウ、モタナイ......イマカラ、トウヲ、ハカイ...スル!!!」
ゴーレム状態でうまく言葉をつなげない中、夜雪は伝えた。
そして夜雪が50階を殴りにかかる。
「いざ、勝負!!!」
バベルが搭から出て一撃をとめる。
バベルはそのまま巨大化し、ゴーレムとほとんどおなじ大きさになった。
「オマエヲ...コロス、ニンムスイコウノタメニ!!!」
「面白い、やろうじゃないか!!」