鎌鼬vs樹懶
黒銀混ざった髪の男の名を、クグリ。
ガムを噛んでいる黒髪の男の名を、サガ。
砂を操る葉巻をふかした男の名を、サイショウ。
対するは、
糸を操る、夜縷。
鼻水を操る、夜泡。
ダルそうな、夜怠。
三対三のとても緊迫した空気。今にも空気が割れそうなくらいの空気だった。
どれも顔は平気でいるが今か今かとタイミングをうかがっていた。
「やるぞ。」
クグリの言葉を合図に6人はそれぞれ向かっていった。
「俺の相手はてめえか。鼻水野郎。」
「べへ。おでがあいでしてやるで~~」
サイショウvs夜泡。
「はあ、まったく。僕の相手は大変弱そうだよ。」
「あ~、ダル。」
サガvs夜怠。
「フフフ、楽しませてもらおうか。」
「それは俺からも願う。」
クグリvs夜縷。
それぞれ干渉しないように離れた場所へ行った。
* * * * * *
「さーて?ダルそうだけど、僕と戦うのがそんなにいや?」
夜怠に向かって言うと、つむじ風が吹いた。するとサガがそこからいなくなった。
「あー、ダル。」
つむじ風が夜怠を通り過ぎる。その瞬間、夜怠の体がズタズタに引き裂かれた。
「さーて?どう痛い?やる気になった?」
サガが笑みを浮かべて問う....が、当の夜怠は面倒くさそうなのは変わらずずっと寝ていた。
「な......そんな...効いてないわけがない!!」
サガが夜怠にさらに追い打ちをかけるように切り裂く。が、夜怠の様子は変わることはなかった。
―何故だ、あいつの近くによると速度が遅くなる感じがする...
「お、おい怠け野郎。お前戦う気あるのか?そんな怠けていていつも気楽だろうな!」
サガが怒りのままガムを吐き捨てた。その瞬間、夜怠からでる雰囲気が一変した。まるで殺気の権化のように、空気を割いた。そして、次の瞬間には夜怠はサガの後ろにいた。
―見えなかった....一体何がっ...!!!!!
サガが気付いた時には遅かった。体という体がケモノの爪によって引き裂かれていた。
「今...なんと言った....今....なんと言った....!!!!」
夜怠はサガのほうを向くと物凄い形相でサガに叫んだ。手の甲からは鋭利な、そして大きな爪が三本伸びていた。全身獣毛に覆われ鋭い眼つきをしていた。
「ぐっ......やっと...やる気になったんだね...」
サガは一度、二度血を吐くと夜怠に向き直り構えた。
「許せない....!!!」
二人はともに衝突した。夜怠の鋭利な爪、そしてサガの”鎌鼬”として変化した鎌が互いに打ち合った。容赦競り合い、互いに押し合い、対峙した。爪と鎌が擦れ、火花が散る。
「ぐっ.....おおおおおおおああああああああ!!!!!」
「うっ.....!」
爪と鎌が互いに反れ、互いの腹を切った。
夜怠の厚い獣毛により刃は通らない、一方のサガも空いた鎌で攻撃を受け流した。
そしてサガは空中を蹴って反転し、夜怠の元へ風を起こしていった。
―視える....!!!
夜怠の異能力、『樹懶』は暴走状態に入ると意識を集中しているものの3分後までの未来が見える。しかし視ている時間3秒間は無防備になる。その能力を使い夜怠はサガの動きを予測し、攻撃を次々と流して腹を裂いた。
「なぁっ!!」
サガは攻撃を受け流しきれずまともに受け、血を吐く。そして夜怠はサガの目の前に瞬時に移動し、右下から左上にかけてサガの顔面を引き裂いた。
ブシャッ、という音を立てて顔面から鮮血が飛び散る。サガは地面へ倒れていった。
そして夜怠はさらに空を蹴ってサガ目掛け爪を構える――が、次の瞬間、夜怠の厚い獣毛を破り夜怠の体にバツ印を鎌で刻印していた。夜怠は後ろを振り向くがそこにサガはもういない。サガは夜怠の後ろに回っており、車輪のようにして夜怠の背中を切り裂いた。夜怠は血だらけになり気を失って落下し倒れた。
「形勢逆転僕の勝ち。」
サガは地面について言うと、胸ポケットから板ガムを取り出し、慣れた手つきで包み紙をとって食べた。
次回はサイショウvs夜泡です!