非合法武器密造組織 ζ
「最近武器が売れなくなっているが、どうした?」
Dark Nightボス、天夜が何かを込めたような口調で言った。
「すみませんボス。すぐに伝えておきます。」
Dark Night幹部、夜重はそういうと無線で厳しく指示を出した。
「あははは!君ってば武器とかそれ系の隊じゃないのに真面目すぎるんだよ!」
ボス側近、大気使いの蓮がボスの机に座って嘲笑した。
「では、これで。」
夜重はボスの部屋を去ると急いで武器製造部へと向かった。
「ここか?」
BLAZEの港の一角で武器取引にハンチング帽をかぶった中学生のような子供、夜飴ととても筋肉質でガタイのいい男、夜鎧が取引相手を待っていた。
夜飴と夜鎧は四方八方見て取引相手がまだかと待っていた。しかし、一向に現れる気配はなかった。
代わりに、銃の気配を感じた。
「夜鎧、わかってるな」
夜飴が棒付き丸飴を夜鎧に突き出して言った。
「当然。」
夜鎧がそういった瞬間、夜飴と夜鎧をたくさんの銃が囲った。
「取引相手の威嚇。交渉決裂だ。」
夜鎧が言うと交渉相手は銃を一斉に撃ち始めた。
「硬化!」
夜鎧の体が灰色に変色していった。そして銃を放つ敵軍に向かって突撃していった。
夜鎧の体は硬化され、銃弾を受け付けない鋼の肉体となっていた。
「くそっ!あきらめず撃て!!」
敵軍の統率者らしき人物が指示をだす。が、夜鎧の前には銃弾など無意味で敵軍は一斉に突撃によって散らされた。
「めんど」
夜飴が飴の壁を作り自分を守る。銃弾は飴の硬い壁に当たり、貫通することはなかった。
「ん?」
飴の壁の空いた天井部に敵が一人銃を構えて現れた。
「くらえっ!!」
男はひたすら銃を夜飴に向けて乱射したが、飴の壁内に入ったが最後、壁から伸びてきた飴が夜飴を守り、男を包み込んだ。
「ごぽぉ!ごぶぼぽぼおおお!!」
男は口から侵入してきた飴によって徐々に意識を失っていった。
「ば、化け物だこいつらああああああああ!」
夜鎧が夜飴の元へ戻ってくる。
「夜飴、こいつらどうする?」
「けちょんけちょんに。」
「了解」
夜鎧と夜飴のそうした会話の直後、敵は一斉に退散を始める。が、夜鎧の突撃が敵をまとめて吹き飛ばし、夜飴の飴が一人も逃すことなく飴で包み込んだ。
「"飴侵入"」
「くたばれっ!」
体格のいい男が夜鎧に拳を振るう。その拳は夜鎧を確かにとらえた。だがしかし、痛みをくらったのは殴った男だった。
「俺のこの鎧を打ち破れるとでも?少なくとも、君には無理だ。」
夜鎧が告げ、男の腹に一発、重い拳を打ち込んだ。
男は一瞬で意識を失い、後方に吹き飛び、倒れた。
「終わったな。」
「終わった。」
夜鎧と夜飴がそう会話をして、本部へ戻っていった。
* * * * * *
「働け働けっ!休みなんてすんな!さぼんなっ!」
黒く焼けた筋骨隆々とした上半身裸の男がつばを飛ばしながら怒鳴り散らした。
作業員はびくっと体を震わせるとひたすら作業を続けた。ここでは、どんなに成績をあげようがどうだろうが扱いは変わらない。逆に、成績が悪い人のほうがどんどん冷遇されていき、優遇されることはない。
「なんだこの手さばきは?...遅くはないかい?俺のほうが数十倍速い!!」
男はそういうと作業員を思いっきり殴りつけた。作業員は台に手をついて倒れることを辛うじて耐えたものの、血を吐いてしまった。それが男により火をつけることになった。
「おいっ!!大切な部品を汚ねえ手前の血で汚してんじゃねえよ!!!」
男は怒鳴り散らして作業員を蹴った。作業員は床に倒れ、悶絶している。
「いいか若造、この世界命がけなんだよ。この世界に入ったからには死ぬか生きるか、それでしかこの世界では生きていけないんだよ。生きる道を選択したならここでの作業に耐え、立派に育ちこの裏社会で生き延びれるように力をつけないとダメなんだよ。わかるか?」
男は作業員の頭をつかんで直接耳に語り掛けた。
「は....はい.....すみません....!!」
作業員は口から、鼻から血を流しながら答えた。
「分かればよろしい。作業に戻れ。」
男はそういうと作業員を離した。
ここは、非合法武器密造組織ζの支社。支社では主に武器の部品を製造している。と、言ってもζは裏の会社で、表向きでは機械を作る〈トライアングル〉という会社になっている。この支社はζとしての会社に入社希望した人のみ働いている。上裸の男の名はディアブル。こんな環境でも作業員が辞めずに働いている理由は飯がうまいから。ただ、それだけ。表向きのトライアングル入社希望の人間は表社会の会社として機械部品を作らせる。表と裏、両方に仕事を持たせている。
ζ支社は敵の襲撃に備え、[緊急本部連絡ボタン]があり、それを押すと本部から精鋭の戦闘部隊がBLAZEゲートを通ってくる。この支社も、同じだ。
* * * * * *
「それが、最近ある武器製造会社が急成長しているんですよ。高品質で安全、低コストの武器を製造している我が社を超すとは何を作っているのでしょうか...」
夜重はDark Night傘下の武器製造会社へきて調査結果を聞いた。
「その会社はどこかわかってんのか?」
「ええ、"ζ"という会社です。」
それを聞いた瞬間、夜重の顔が強張った。同時に、言った社員の顔も強張っていた。
「ζか....くそっ、敵対したくなかったが仕方ない。周辺にζはあるか?」
夜重の表情からは迷いが見えた。
「ここ周辺には支社があります。」
社員は地図を見ながら言った。
「わかった。感謝する。」
* * * * * *
「と、言うことで偵察部隊の君たちに行ってほしいんだが。」
天夜は夜重から聞いた情報をそのまま伝えた。
「お安い御用です。」
黒いコートを羽織った金と銀の混じった髪の――偵察部隊隊長夜縷はニヤリと口角を上げて言った。
「高確率で戦闘になるがいいか?」
天夜は片目を上げて言う。声のトーンが低くなった。
「当然です。」
「では、頼むぞ、夜縷班。」