スーパーハイパーウルトラ探偵社
茶色のレンガ造りの交差点の一角に立っている2階立ての施設。
そこの扉の上には<超超越極探偵社>と筆記体で書かれていた。
建物の中に入り少し進むと右手の扉に<相談室>と書かれたプレートがあった。更に奥に進むと<事務室>
事務室に入って左側を進むと<会議室>が、そしてその丁度上、二階の部分が社長室となっている。
そしてその相談室の前に一人の男が立っていた。身長は高く、遮光眼鏡をかけている男が。
「失礼する。」
男は相談室の扉をゆっくりと押し開く。耳障りな音も立てずスーっと開いた。扉は新しいようだ。
「どうも。どうぞお座りください。」
待っていたといわんばかりに相談担当のような優しそうな青年がいた。
身長は男―綾取よりも低い。猫背気味だ。
「で、お話とは?」
青年は明るい表情のまま尋ねる。
「鷹翔の事だ」
綾取がそう云った瞬間、青年の顔は真剣な表情そのものへと変貌した。
「私は綾取だ。鷹翔の事件を追っているものだ」
綾取が続けて云った。
「それで、鷹翔が....?」
と、青年。
「また、異能を贈与したそうだ。少年にだそうだ。」
綾取が強調して云う。
「少年....」
青年のスマホに着信が来た。
「はい、もしもし。はい。今ですか?今綾取さんがいまして....はい.....判りました。伝えておきます。」
「どうした?」
綾取が訊く。
「少年が、捕まりました。」
「本当か!?」
「はい。探偵社の先輩が捕まえ、身柄を特高課に引き渡したそうです。」
青年が淡々とした口調で云う。
「そうか...判った.....鷹翔はこの状況を狙って.....」
綾取が呟く。
「何か、わかったんですか?」
青年が尋ねる。
「少年の起こした犯罪は絶対に言うな!!今説明する。」
綾取の顔には焦りがにじみ出ていた。青年は少し困惑気味の表情を浮かべていた。
「鷹翔は敢えて少年に異能を与えた。そして少年は異能など初めて手にしたほかとは違う能力と云うことに浮かれ、犯罪を犯す。そして俺にこのことを知らせ、事件に関与させる。そして少年が起こした犯罪がニュースで報道される。そしてその罪に殺人が入っているから少年は――死ぬ。この状況を作ろうとしていた....」
綾取は机に拳を落とした。
「なぜ、少年は死ぬのでしょうか?」
青年が恐る恐る尋ねる。
「俺の異能力だ......異能力、追跡者。殺人を犯したものは死ぬ異能。殺人事件に俺が関与すれば犯人がわかったとき、因果を越えて殺人犯は車によって事故死する。いかなる状況でもだ。」
「そ、そんな異能が....で、でも探偵社には能力無効化の超能力者がいますが...」
「そんな能力が!?....それならまだ命は助かるかもしれない。少年に降りかかった車による事故死の呪い、それをそいつの能力でなら解くことができる....やってみないとわからないが...」
「判りました。電話をかけます!」
青年が能力無効化の能力者――江戸川月歩に用件を伝えて電話を切った。
「月歩さんが○○中学校へ来い、だそうです。」
「?!行ったら無効化されても瞬時に再発するかもしれないぞ!!」
綾取が机を叩き云う。
「そ、それは...判りませんが...月歩さんが...云ってましたので...なんとかなるかと...」
青年は怯えながら云った。
綾取は江戸川月歩と云う知らない人物の言葉を「はいそうですか」と信じていくことはできなかった。
―若い命が俺のせいで絶たれようとしている...
その自身の異能による重圧感に綾取は押しつぶされそうになり、嗚咽した。
「でも、今は月歩さんを信じるしか―」
「心配はいらないよ影山君。江戸川はこないことを知っているから。」
煙管を吹かして木綿の着物によれよれの兵児帯に髪はモジャモジャの男が答えた。
「明智さん!」
青年が明智と呼ばれた兵児帯の男を見て背筋を伸ばして云った。
「まあ、月歩のことだから、ここに特高課の人間と加害者を連れてくるんじゃないかな。」
ニコニコしながら明智が答えた。
「ここに...?」
綾取が聞き返したところで探偵社の扉を開く音がした。
「やあ皆~!僕が来たよ~!」
江戸川と木下がルイをはさむようにして来た。
「江戸川...お前と云うやつは...全く..」
木下は頭を抱える。
「お、おい、江戸川月歩!俺の異能力を知っていてそんなことしてるのか!」
綾取が立って後ろに退いて云った。
「うん。殺人犯は車によって死ぬ―でしょ?事前に調査すればこんなことぐらいわかるよ。」
月歩はニコニコしながら云った。
「なぜ俺を調べた?」
綾取が月歩に訊く。
明智がもじゃもじゃの頭を搔き回して「そういうことか」と呟くと煙管を持ってふらふらと探偵社を出て行った。
「あれ?明智さんどこいくんだろう?」
月歩が不思議そうに呟く。「ここからなのにな」
「もう解決しているんだろう。」
木下が付け足した。
「うん。明智さんだもんね。すぐに真相を見抜いたんだろうな。」
月歩が満足そうに云うと推理を始めた。
「まず、なぜ君を調べたかだね。それは簡単。君が犯人だからだ。」
月歩がドストレートに云った。
「何?何の犯人だというのだ?」
綾取は動揺どころか表情もひとつ変えずに云った。―疑われているのに。
「それは、殺人。」
月歩はとてもニコニコして云った。
適当な