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アルバイターズ  作者: 野方送理
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第82話 犯人への道

第82話 犯人への道


「泳がせる…?」


士郎の言葉がわからない、と言った風に霧子が聞き返す。


「すごく嫌な言い方になるが、今回の道具は今のところ大きな実害があるとは思えん」


「そ、そうは言っても」


「…泳がせるって言い方は悪かった。せめてその人たちがもう一回『例の男』に接触するまでは手を出さない、というのはどうだろう」


「…ま、まあ確かに」


今回の件は三度目の例であった。


何かを傷つけたり、破壊したりするためではなく「自分の欲望を叶える」ために魔道具を使う。


それは金銭であったり、何かしらの物品であったり、今回で言えばよりよい「成績」のために。


弓道部と水泳部で見つかった使用者は両者ともに最近急激に成績が良くなっていた。


「もちろん一時的にとは言え見て見ぬ振りをするのは嫌かもしれないが、手がかりを掴めてないのも事実だろ?」


それもまたその通りであった


吉凪との一件で姿を見せて以来、なんの情報も得られていない。

一番身近な場所で尻尾を出したこの好機をどうにかものにしたい、そう思っているのは霧子も同じであった。


「…わかった。部活中は湯島くんと金谷くんに見てもらうとして、そのあとは私があとをつける」


「だめだ」


「なんで!?」


「もしも、元に会えて、それでほんとうに、ほんとうにあんたの兄貴だった時、あんたは」


そこで言葉を切る。

一般人に魔道具を流している男が霧子の兄に似ているというのは士郎だけが知っている。


「倒すなりなんなりのアクションを起こせるのか」


「っ…!」


何かを言おうとして止まる。


そのまま黙り込んでしまう。


「…とりあえず放課後の尾行は部活をやってない俺か雅信で回す。…こういう時に」


「ん?」


「いや、なんでもない」


聞き返してから霧子も気づく。


『奈美が居てくれれば』


狗神といえども、その能力は多岐にわたる。鋭敏な嗅覚に、猫ほどではないせよ気配遮断、運動能力も12人の中ではかなり高い。


「無い物ねだりをしてたって始まらん。とりあえず雅信に頼んでくるよ」


「…はい。今日はトレーニングルームにいるはずよ」


「もしもあいつも俺もだめな時は結局あんたに頼むことになるだろうな」


「…分かったわ!」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「まあこんなもんだろ」


そう言いながら腰を下ろす愛羅の周りに4人の男女が寝転がる。


「ほら、交代だぞ坂上」


「…スパン短くないですか…?」


今日は久々にバイトはオフ。急な仕事もとりあえず入っておらず珍しくチーム分けをごちゃ混ぜにしての特訓であった。


その内容とは本日の参加者である健、柊、彩香、伊有の4人が代わる代わるでも、一斉にでもどちらでもよいから愛羅、雅信に「真春の治療が必要と思われる傷」を負わせれば勝ち、というものであった。


ちなみに勝った場合、愛羅と雅信の財布から4人と真春にラーメンが奢られる。逆の場合は4人が真春と2人にラーメンを奢る。


真春は何にせよつきっきりでいてもらわなきゃいない為、何にせよラーメンでも奢らせてくれという話になった。


「みんな疲れてるみたいですし、もう少し休ませてあげたらどうです?まだ5時ですし」


「なんだ、お前もへばったか?」


「まさか」


「じゃあ3分だけ相手しろよ」


その言葉をうけ流そうとするも、一瞬地べたに座り込み肩で息をする4人が目に入る。


「…3分ですよ」


「そうこなくっちゃ!!」


雅信が言い終わるより前に、愛羅が動き右の拳を叩き込む。


その拳を右肘で受け、足払いで距離をとらせる。


しかし最低限の距離を置いて、愛羅がまた殴りかかる。


それをまたいなし、大ぶりの攻撃で距離をとらせる。


その繰り返し


4人がそれをじっと見つめる。


「どうしたよ!?いなすだけか!?」


若干イラつきながら愛羅が言う。


「…っ!?」


左をフェイクに、右の拳が飛んでくる。


みぞおちに叩き込まれる、と思ったところで身を翻し受け流す。


そこに雅信の右裏拳が襲う!


それを拳を前に出した勢いのまま左のの回し蹴りで撃ち落とす。


ガギィン!!


踵と拳がぶつかり、轟音が響く。


お互い態勢を直して再びー


「3分よ」


ベンチに座っていた真春から声がかかる。


「あぇ?なんだもうか…短いなーやっぱ3分は」


「僕このあと4人相手しなきゃいけないんですけど…」


「あ?だからちょこまか避けやがったのか。つまんねーことしやがって」


「あなたと本気でやるなら怪我なんて気にしてられないですけど、今日の特訓は『怪我を負わせる』って決めたのあなたじゃないですか」


「はー、いいリーダーだこと!悪かったね私は攻めて攻めて攻めることで攻撃させない猪みたいな女ですよ!」


「別にそれだって正しいと思いますよ。あとはバックステップで無理やり時間を使わせようと」


「ちっ、まんまとハマったわけか私ゃ」


2人の会話に4人とも入り込めず俯く。


「2人とも怪我はない?」


そこにいとも簡単に真春は入る。


「おかげさまで」


「ええ、そうは言っても天海さんも手加減してくれたみたいなんで」


そう言って手をひらひら振る。


「4人ともいけますか?」


絶望的な差を見せつけられた雅信の問いに

それでも4人は立ち上がった。


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