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アルバイターズ  作者: 野方送理
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第79話 屋上の語らい

第79話 屋上の語らい


「奈美…」


「…どこ?」


「隣町だ」


「行こうか」


「…あぁ」


「神憑変化」


姿を変えながら走り出す。


変化が完了したことを確認しながら高いビルの屋上まで飛び上がる。


城波神社に行かなくなってから1週間が経った。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


あの事件以来、みんなとはほとんど喋っていない。


事件が起こった先で、霧子や陽太君に会うことが有った。


出来る限り逃げるように帰るのは、悪いことをしている自覚があるから?


…その通りだ


正義の味方になりたくて


正しいことをしたくて


正しい人でありたくて


それだけを信じて


私がしたことはなんだ?


正義を名乗る者に踊らされて


自分を見失って


友達を傷つけて


何が正義なんだ


でも


私は


少なくとも


愛羅や士郎君の言葉を受け入れられなかった


これも私のわがままだ


そんなことは分かってる


それでも認められなかったんだ


あぁもう、何が正義なんだ


私はいまどうすれば


私が望んだ正義の味方は


こんなんじゃないはずだ


間違ってるのなんて分かってるのに


どうすれば正しく戻れるのかがわからない


人生において難しいのは、ミスや失敗を犯すことではなく


失敗やミスから戻る方法が分からないことだった


解放や定理、文法や公式があればいいのに


テストは終わったのに


採点もされたのに


間違い直しが終わらない


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


文化祭前の小テストも終わり、アルバイターズの業務は傍目には順調であった。


「じゃあ行ってきます」


「ええ、気をつけて」


そういうと、雅信は手を振りながら飛び上がった。


神社近くの市街地に、妖力の反応が出たからだ


「これくらい1人で大丈夫ですよ、3人は休んでてください」


そう言ってテスト終わりの伊有、彩香、真春を本部に置いてきた。


ーただ、理由はそれだけではなかった。


「…雅信くん」


「やっぱりいました、なっちゃん」


今日も誰よりも早く現場に駆けつけていた奈美がそう言った。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「これ、真春さんが。そろそろ傷薬が切れたんじゃないかって」


「…ありがとう」


そう言いながら袋を手渡す。


「…じゃあわたしもう行くから」


「反応は無いはずですけど、何か用事でも?」


「え?」


もう1つあった反応は消えていた。


「…先回りしてからきたわけね」


「少しは仕事させてもらわないと」


そこで足を前に進める


「そんなに戦いたかったですか?」


「…!そんなわけっ!!」


「…少しだけ話しませんか?」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「戻って来る気は無いんですか?」


「どんな顔して戻ればいいやら…」


「適当に戻ればいいんですよ」


「…そうは言ったって、雅信くんは気にならないの?」


「何がですか?」


「あなたを殴って、真春ちゃんを攻撃しかけたじゃない」


「そうですけど…そんなこと言ったら…私だってあなたを攻撃しました」


「…お互い様ってことにしとこうか」


それを言うなり2人とも黙ってしまった。


「…もしも今度、私がまたああなったら」


「…暴走ってことですか?」


「うん…そうなったら、今度もちゃんと手加減なしで止めてくれる?」


「…また暴走する気ですか?」


「分からない…どうやったら戻れるのか。どうしたら正しくあれるのか」


「正しい、ってどんなことですか」


「分かんない、分かんないよ。ただ、今の私の生き方は



正しくない」


「…そうかもしれませんね」


そういうと、雅信は立ち上がり


「ただ、あなたはもう少し落ち着いた方がいいかもしれませんよ」


「…?」


「だって、正解の生き方なんてありませんよ」


「…ふふっ。そうよね」


奈美も久しぶりに笑いながら立ち上がった。


「それでも私は探し続けるわ」


「…あなたらしいですね」


「じゃ、また学校で」


「ええ、また」


反対方向に、2人は屋上から飛び降りた。


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