第74話 奈美奪還作戦
第74話 奈美奪還作戦
ゴォン!ドォン!ガン!ギィン!
大きな機械同士がぶつかり合うような、硬質の破壊音が辺りに響く。
「あっはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!」
私は楽しくて楽しくて思わず笑みをこぼす。
「グラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」
それに呼応するように霜村が叫ぶ。
ぶっちゃけて仕舞えば坂上ほど強くはない。
ただあいつにはない必死さがこいつにはある。
強さのパラメータなんてもんは日によって変わるあやふやなもんだ
ただまさかこの状態になるとここまで上がるとは!!!
「いい!いいよ!もっと!もっとだ!!ほら!私を悪者だと思って!!ほら頑張れ!!」
機嫌の良いあまり言葉が飛び出る。
「悪」という言葉には反応したのか、攻撃はより一層ひどくなる。
ーただ
ドゴォ
「カフッ」
怒りに任せた攻撃でガラ空きになった
喉に拳をいれる。
「教えたことすーぐわすれちゃうんだから、ほらもう一回」
顔を上げて私を睨みつける霜村
ゾクゾクする
すると、
ゴォッ!!
荒い息を整えるかと思いきやそのまま突進をかましてくる
「いい馬力だぁ!!!」
ギャリギャリギャリギャリと足をアスファルトに突き刺しながらなんとか踏みとどまり
「のこったぁ!!!!」
と叫びながら上に放り投げる。
体勢を立て直しながら
拳を構えて落ちてくる
霜村を迎え
ドゴォ!!!!
「!?」
何かが横から飛んできて落下中の霜村を弾き飛ばす。
「誰だっ…なんだ早かったな」
邪魔された怒りを胸に振り向くとそこにいたのは
「天海さん…きてくれてありがとうございました」
神城たちだった。
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綺麗な栗色の髪が伸び、牙も生え、頭の犬耳はピンと立ち、身体中から真っ黒い霧のようなものを発しながら四つ足で5人と対峙する。
「…どうすんだこれ、わざわざ邪魔しにきてくれたわけだけどよお」
明らかに苛立ちながら愛羅が尋ねる。
「…調べた限りだが、死神憑は強い意志に呼応して起こる変化で、それの解除方法は」
奈美が地面を蹴り駆け出す
「目的の達成か、神憑かれた箇所…つまりは右肩への強い攻撃!!」
ドォン!!!
5人が散り散りになって避ける。
「坂上ぃ!!」
愛羅の言葉に雅信が上を向く。
「お前は真春連れて逃げろ!!」
一瞬驚いたような表情をしながら、
「真春さん、こっちです!」
真春の手を引いて走り出す。
「…どうして坂上くんを?私よりは戦力になると思うんですけど」
霧子が着地した愛羅に尋ねる。
「そこのお兄さんが坂上と真春を逃せって」
ニカッと笑いながら答える。
「流石にここでこれ以上暴れちゃまずい!神社と離れた位置の山側に誘い込む!!」
士郎が走りながら叫ぶ。
「なんか策はあるんだろうなあ天才!?」
愛羅も霧子もそちらへ向かう
「一応な…!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「で…こんな森まで走ったはいいがどうするんだ?あいつ匂いですぐ見つけてくるぞ」
いかにも戦いたくて仕方がないといった表情で愛羅が聞く。
「あぁ…見つかるのは承知の上だ」
そういうと士郎は
「月の欠片」
そう言いながら神器を空へ飛ばす。
すると
「「!?」」
「真っ暗になった…!?」
「月の欠片の能力だ、ただ神城さんあんたは見えるな?」
「ええ、一応猫は夜目が効くから…」
「私なんも見えねーぞ」
「それでいい、2人とも俺から離れてくれ。1番出血の多い俺を餌にする」
「そんな!?」
「2人とも目をつぶってて。一瞬だけ『太陽の欠片』を光らせて、驚かせつつ霜村の視界を奪う。悪いが使えて一回だ、しかもそう長く持たない。あいつが動けなくなった瞬間に神城さん、あんたが右肩を全力で叩いてくれ」
「そ、そんな私が?」
「おい私の役目は」
「…失敗した時のバックアップを頼む」
「…用意がよろしいようで、そうなったらあいつがボコボコにされるからな。私を恨むなよ、行くぞ神城」
「え、ええ!?ちょっと待って!」
そう言いながら愛羅は霧子の腕を掴み士郎から離れた。
真っ暗闇の中に、士郎が1人残される。
ー獣の足音が近づく




