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アルバイターズ  作者: 野方送理
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第73話 歪んだ正義

第73話 歪んだ正義


「…どうしてなっちゃんが、士郎を殺そうとしてんですか…!?」



と、雅信が呟くと


「!? こっちに気づい…」



士郎を手放し奈美がこちらに向かって地面を蹴り











ギィン!!!!



「…真春さん…逃げてくだい」


変化した雅信が奈美の爪を受け止めていた。



「坂上くん!!」


そう叫んだ刹那、奈美の右足が雅信を空へと放り出す。


「カハッ」


すぐさま雅信を追いかけて奈美も跳ぶ。



ドガバキドゴボキゴキドガバギャブシャッ


けたたましい音を立てて2人の四肢がぶつかる。


鋭い爪で少しずつ皮膚も避ける。



しかし…


「…全部防ぐかいなすかだけ…あんなんじゃ勝ち目が!」


技もへったくれもなく拳。否、獣の爪を振り回す奈美に対し、雅信は攻撃をしなかった。


右の爪を腕ごと抑え、ひだりの爪をかわし、そのまま掴んで地面に叩きつける。


転がりながら受け身を取る奈美が取った構えは果たして



「四足歩行…いやはや人間以外と戦うなんていつぶりだか…」


「グルルルル…」


もはや人の言葉は発しない。


その4本の足で地面を駆け出す。


そして



ガァン!!!!



自動車同士がぶつかったかのような音ともに



「噛みついてくるとは思わなかったんですけど…!!」


両肩を無理矢理に抑えて、奈美をどうにか押しとどめる。



「鍵瓜くん!しっかりして!鍵瓜くん!」


逃げろ、と言われたが真に受けるはずもなく、士郎に治療を施し、頬をペチペチと叩く。


「…門矢…さん」


ボロボロではあるもののなんとか起き上がる士郎。


「む、無茶しちゃダメだよ」


「…ありがとう…!?霜村は…!」


そう行って辺りを見回す。



ドゴォン!!!、



豪快な音を立ててブロック塀を破壊し、雅信が背中から飛んでくる。



「雅信くん!!!!」


「いてて、あれ…真春さん逃げてって」


4本の足で歩きながら、真春と士郎を見るや否や


「ウォオオオオオオオアァァァァァ!!」



高く吠え、またも一直線に走り出す!!!







ドゴッ!!!!



その脇腹を雅信の脚が刺す!!



「あんまり攻撃したくなかったんですけど…」


ね、と続けながら刺さった脚を大きく回し奈美を向こうへ追いやる。



「おいたがすぎますよ、なっちゃん」


明らかに先ほどまでと違う雰囲気で雅信と奈美が対峙する。




すると


「っ、まだ誰かいるのか」


「グルルルル…オォォ」


「な、なんか寒気が」


「まさか…」




何かに警戒しながら奈美が後ろを向く。




ゴォッ





雰囲気だけで人を殺せそうな気迫にその場の全員が気圧される。



「…どこにでも現れますね。あんたは」



苦々しい顔で雅信が声をかける。



「あたしぬきで何楽しそうなことしてんだよおまえらぁ!?なあ!?」



「愛羅さん…」


真春が少し安堵したような顔を見せる。



「神憑変化ぇ!!」




そう唱えて足元のアルラウスを蹴り飛ばし、臨戦態勢に入る。



「ちょっとあんた殺す気ですか!?」



明らかに本気の愛羅に向かって雅信が口を出す。



「殺さない程度にお仕置きしてやるよ。お前らは霧子の方に行け」


「神城さん?」


「あっちはあっちでピンチみたいだ、任せたぜ」



そう行って両腕を大きく広げる。



「…行きましょう、士郎歩けるか」


「…当たり前だ、案内する」


コンクリート同士をぶつけているかのような打撃音を後ろに、雅信たちは霧子の元へと急いだ。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ハーっ、はぁっ、ふぅ」


肩で息をしながら電柱の影に身をひそめる。



「出てこい悪魔め…この私が粛清してやる!!!!」



吉凪と名乗った男が、あの鞭を振るいながら私を探している。



あの男は壊れていた。



あの男と一緒にいる奈美を追いかけて、「幸福の雨」の本部へと私たちはたどり着いた。



思ったよりもあっさりと彼は私たちを中へ引き入れた。



建物の「中」へ


私が兄と見間違えた人物はいなかった。



そこにいたのは、転がっていたのは話を聞く限り奈美が打倒した「悪人」どもであった。



「悪人はこうして裁くべきなのです、そう思うでしょう?霜村様…」


魔力のこもった鞭を振るい、悪人の叫び声響く部屋で



そう奴が問いかけたところで




奈 美 が 壊 れ た





あの暴走状態に入り、止めようとした士郎くんともみくちゃになって外へ出て行った。



私も私で魔道具を取り上げようとして吉凪と交戦状態に。



思った以上に厄介な鞭に苦戦しているわけだが…。





「ここらへん…のはずだが」


「なんだ貴様…お前は…正義を蔑む悪魔の1人…仲間を連れてきたか…!!粛清してくれる!!」


士郎くんの声の後に、吉凪の声がする。



(士郎くん!生きてた!!仲間…!?)



慌てて電柱の陰から飛び出し、声のする方へ駆ける。




ピシィッッ!!!!




例の鞭の音が響いたかと思うと



「な、は、離せ!悪魔め!その手を離しぐぼぁ」



そのような声とともに目の前に伸びた吉凪が飛んてくる。


「あぶねーじゃないですか。誰に使って鞭ふるってんですかあ?」


怒気をはらんだ声。



そこにいたのは鞭の先端を人差し指と親指でつまむ



「坂…上くん!?真春ちゃんまで、どうしてここが!!」



「すみません、遅くなりました。今暴れるなっちゃんと天海が殴り合ってます」


「そ、そんな急いでそっちにいかなきゃ!」


「そこのおっさんどうします?」


「あぁ…ええと」


「鞭で縛って欠片で運ぶよ…」


そう言いながら士郎が「太陽の欠片」を動かす。



「行ったり来たりですねえ」


「案内お願い!」


そう言いながら霧子たちは先ほどの場所まで走り出した。









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